![見出し画像](https://assets.st-note.com/production/uploads/images/65018865/rectangle_large_type_2_d9144ce6c8a771429f87d4e9e2029912.jpg?width=1200)
「やっぱりあなた達はワカっていない 黛冬優子という人物を――」
アイドルマスター・シャイニーカラーズのある記事での――っていうか俺の記事の中での記述です。「黛冬優子をわからされる」。
しかしこの記事を書いたシャニマス初心者である筆者は、何を「わからされて」いるのかを具体的に書きやがりませんでした。キリが無いからです。
そこで今回はプロデュース・サポートカードを除く、共通シナリオ・イベントシナリオを振り返り、黛冬優子という「アイドル」をわからされていきたいと思います。『ロード・オブ・黛冬優子』です。
1.「”アイドル”になれると思いますか?」
始めに、「黛冬優子」というキャラクターについて簡潔な説明を挟みます。
黛冬優子は『アイドルマスター・シャイニーカラーズ』(以下シャニマス)における、アイドル志望のキャラクターの一人です。
公式のキャラクター紹介のページです。清楚で可愛い系の見た目に添えてある「人に好かれるように振る舞う」というセリフが印象的ですね。
本性を隠す猫被りで、計算高い腹黒系のキャラ。浅い。その認識は、潮干狩りをテレビで眺める程に浅く遠い。それを今から思い知っていきましょう。
最初のストーリーで、プロデューサーはアイドルをスカウトする為にあちこちを散策している時、冬優子の姿を見つけて声をかけます。
この時冬優子は自分の趣味である、アイドル物のアニメのポスターを眺めている所でした。休日で趣味に没頭している時に知らん大人に声かけられるとかビビりますね。俺だったら「え、あ、はい……はい……?」で何もかもが終わります。
ともかくプロデューサーは、出会った冬優子にアイドルとしての素質を見出してスカウトをします。しかし。
冬優子は一瞬だけ物悲しい顔を浮かべた後、それまでの笑顔から一転して真剣な顔で逆に問いかけます。それは本当か、本気かと。
冬優子はプロデューサーに対し、自身が持つ強いアイドル観と自分の評価を告げます。初対面とは打って変わった、自虐的にも見える悲しい笑顔と声色で「自分とは正反対」と断言すらします。
その上で、プロデューサーにもう一度問いかけます。自分は本当に”アイドル”になれるか、と。
その真剣さに応じ、プロデューサーも強い語調で断言します。
こうして「???」はアイドルになる事を決心し、スカウトを受けてプロダクションに入る事となりました。
振り返ればこの開幕の時点で、冬優子が単なる猫被りキャラでは無い事は示唆されていますね。単純な認識をしたヤツは謝ろうな。俺は今フローリングに土下座したから。
2.なりたい自分
それから冬優子は、要領良くアイドルの仕事をこなしていきます。
冬優子が順調に仕事をこなしている中で、しかしプロデューサーは出会った時に見せた冬優子の顔と言葉がずっと引っかかっていました。
その違和感がはっきりとはわからないまま、プロデューサーは仕事を終えた冬優子に「どんなアイドルになりたいか、冬優子の気持ちを聞かせてほしい」と世間話の様にこれからの展望を聞いてみました。
しかし冬優子は少しの沈黙の末、「どの仕事も楽しくて迷う」と不明瞭な答えを返します。その後、逆に「自分はどんなアイドルになれると思いますか?」と問い返しました。
「どうなりたいか、冬優子の気持ちが一番大事だ」。そうプロデューサーが返すと、冬優子は再び笑顔を落としてしまいます。
また、この時から冬優子はプロデューサーへ「自分の事は『冬優子』ではなく『ふゆ』って呼んで下さい」と言うようになります。プロデューサーはガン無視して『冬優子』と呼び続けますが、これから何度も冬優子は軽く訂正を求めます。
「なりたい自分になればいい」というプロデューサーに対し、「それが求められたものでなければ」と不安を見せる冬優子は、しかしすぐに「なんでもない」といつも通りの笑顔を取り戻します。
そうして互いが答えを保留している時に、”その時”がやってきました。
3.”本物”
日を置いて訪れた別の現場で、厳しいと評判のカメラマンが求める「笑顔の撮影」において冬優子は何度もダメ出しをされ、最終的には「満足には程遠いが、多少はマシだったからここで切り上げる」とバッサリ仕事を終わらせられます。なんだとこのやろうビジュアルアピール3.5倍で殴るぞ。
仕事を終えて落ち込む冬優子にプロデューサーは「まだ仕事に不慣れだから仕方ない」と慰めました。
それに対し、冬優子は激昂します。「本物の笑顔とは何だ」「ちゃんと仕事をこなしているのに、曖昧な事を言うな」、そして挙句の果てに「本当の自分を知ったらみんな嫌いになる」とまで叫びました。
プロデューサーに宥められて冷静に戻った冬優子は、「これがお望み通りの、本当のふゆだけど」と告げ、その言葉にプロデューサーは閉口します。
「笑っちゃうわ」。そう「本当の自分」を冬優子は自嘲し、プロデューサーはそれまで見てきた冬優子の垣間見せてきた違和感の正体を知りました。
冬優子にとっての「振る舞い」とは、ただ「誰かから良く見られたい」という打算では無く、「嫌いな自分を見せたくない」という”本物”への忌避感に根ざす物でした。
ちなみにその思想の根源の出来事は【starring F】内のストーリーで大体語られていますが、ここではカットします。かーっ喋りてーなー!喋りたいけどカードのネタバレだからなー!ガシャで持ってない人に配慮しなきゃなー!セレチケとかで選んでもらわないとなー!
プロデューサーがどの様な声をかけたとしても、この現場を最後に冬優子は逃げる様に去ってしまいます。
これまで見せてきた物は、自分のやってきた事は全て偽物だと。自分に魅力など無い、そう言い捨てて冬優子は行方を晦まし、その日から連絡さえ繋がらなくなりました。
自分がプロデューサーだったら上司へどう報告するかで死ぬ程胃を痛める所ですが、このプロデューサーは種族:聖人なのでノーダメージです。
4.(諦めたくないものはひとつだけ)
事務所にも来なくなった冬優子をプロデューサーは案じ、「冬優子の気持ちが一番大事だ」と前に言った通り、無理に仕事をやらせるくらいなら……と、このまま冬優子が来なかったとしたらそれを受け入れる様に覚悟しました――が。
冬優子は事務所にやって来て、別れる前に見せた”顔”のままプロデューサーと対面します。どうして来てくれたんだ、とプロデューサーが聞けば、冬優子は滔々と自分の本心を話し始めてくれました。
「今まで自分は他人からどう見えるか、どうやったら可愛いと思われるか、凄いと思われるか」、それをずっと意識して”顔”を作ってきたと告白した上で、冬優子はそれまでの仕事と自分の感情に向き合いました。
それまで”偽物”で取り繕ってやってきた筈の一つ一つが、とても楽しかった。「ちょっとずつ成長してきて、もしかしたら自分もキラキラ出来るかもしれないと思った」。
それでも、”本物”の自分は好きになれないままだった。そんな中で冬優子は”顔”が割れてしまい、「いつもみたいに」逃げようと思い、そこで「いつも」をやめました。
プロデューサーは別れる直前に、素顔を見せた冬優子を否定しませんでした。プロデューサーは初めて出会った時に見せた、冬優子の真剣味を帯びた”顔”と言葉を信じ続けていたからです。
そして冬優子は、プロデューサーから以前に言われた「どんなアイドルになりたいか」という質問に、再び向き合いました。
だから――
ようやく見つけたなりたい自分を、”本物”の答えを冬優子は発しました。
それまで見つけられなかった、諦めたくないたったひとつだけの答え。
それに対してプロデューサーは三つの答えを用意します。
間違えました、たったひとつだけしか答えありませんでした。
そして冬優子は、泣きながら謝罪し、素顔の自分を迎えてくれたプロデューサーへ感謝しました。泣きたいのはこっちだ。よく戻ってきてくれたよ。
もう完全に冬優子WINGをなぞるだけの記事になっていますので、そろそろ俺もnoteらしく自分の意見を挟んでいきます。
物事の大小や自他の違いはあれど、どこの誰だって辛い事や悲しい事・不満や嫌悪を抱えて生きています。しかしそれらをどうにか出来るのはどこの誰でも無く、それらを抱えている自分自身でしかありません。
冬優子は過去から来る自己嫌悪と否定感に、”顔”を作る事で対処しました。しかしそれは、問題の解決ではなく一時逃れでしか無いと冬優子は告白しました。
誰もが隠し事の一つや二つ、見せたくない”本当”があります。それが普通であり、人は誰もがそれを見せない外面、”顔”を作って生きています。
俺がオタクを一般人に公言せず生きている様に、冬優子の”顔”は誰かに責められる様な物では無く、社交的に当たり前の感性と行動と言えるでしょう。俺如きを冬優子を比べるなぶん殴るぞ俺。
しかしここから冬優子は、自分を隠す為に作った”顔”を、”なりたい自分”として認識します。「違う自分でありたい」という否定から、「自分がこうなりたい」という肯定へと向けました。
「逃げるのはやめた」。こんなカッコいいセリフあるか?誰でも憧れるだろ、こんな生き様をよ。
5.ひとつだけじゃない
その後、「本物の笑顔じゃない」と冬優子へ言い放ったカメラマンと再び仕事をした冬優子は、以前と同じ様な調子で、しかし内に抱く物は全く異なる状態で「本物の笑顔」の撮影に挑みます。
「これも本当の笑顔」。冬優子にとって”顔”はもはや逃げる為の手段では無く、自分の一部であると完全に受け入れた上での言葉です。
その気持ちや覚悟を察したのか、カメラマンはオーケーサインを出し、最後には「また仕事出来る事を楽しみにしている」とすら言いました。
そして終わった楽屋裏では「本当の笑顔」で冬優子は高笑いしてみせます。ここほんとすき。「あーっはっは!」とか高笑いするヒロイン久々に見た。
思えば「冬優子」が本当の意味で笑った顔を見せたのはここが初めてでした。それまでは全て自分の作った「ふゆ」が笑っていたのに対し、隠す必要も無くなったプロデューサー相手には最早遠慮など一切していません。
そうして自分の理想と現実、「ふゆ」というアイドルと「冬優子」でもある自分に、冬優子は混じり気無く笑いました。
「冬優子」が持つコンプレックスはそのままであり、「ふゆ」が意図的に作った顔である事は変わりません。しかし、そんな自分を「これがふゆ」だと冬優子は胸を張って言う事が出来たのです。
もうここまででも冬優子というキャラクターの魅力と強さが溢れていますが、安心しろ。これは所詮「黛冬優子」という物語の始まりでしか無い。
自分の抱える問題の一つと向き合い決着をつけた、それだけで人生が終わる訳もありません。「黛冬優子」は、ここまでがプロローグです。
プロローグでこの長さとかちょっと筆者は頭を抱えつつありますが、冬優子というキャラを語るに辺りここまでの流れは義務教育なのでどうしてもこれ以上省けませんでした。
ここで一度冬優子のメインストーリーから外れ、イベントシナリオ【Straylight.run】へと話を移そうと思います。黛冬優子の受難シリーズ・シーズン1です。
6.火と水と油
理想のアイドルとなるべく、それから冬優子は仕事をしていきます。
「アイドルは計算して作り上げるもの」「常に誰からも愛される”ふゆ”でいる」。プロデューサーから「徹底している」とまで評される程に、冬優子は瑕疵の無い「ふゆ」として振る舞い続けていました。
そんな時、プロデューサーは冬優子を含む三人のアイドルユニットを考え、ぴったりなメンバーを見つけたと言いました。「すごいぞ」と前置きして。
一人目、『芹沢あさひ』。無邪気で興味に忠実、気まぐれな子供です。
なんか想像したんと違う……。初対面からテンションが高いあさひに対しそう思いながらも、冬優子は仲良くしようと試みます。
冬優子にとって「ふゆ」という呼び名は重要です。「ふゆ」を理想として掲げ、常に「ふゆ」で人と接する覚悟でいる冬優子にとって、それはプロデューサーどころか自分自身にもそう呼ばせている名です。
しかしあさひ、意外でもなくこれをスルー。冬優子本人がそうしてほしいと言っているにも関わらず、「自分がそうしたいから」という理由でさらっと流します。
そして初対面にして地雷にスタンピングクラッシュします。
初対面で自分の興味のまま一方的に冬優子へ捲し立てたあさひは、そのままレッスンに向かいます。
久々にキレちまいました。マジギレです。
冬優子はアイドルを「なりたい自分」と定めているのに対し、あさひは「やりたい自分」という認識でアイドルを始めたキャラです。
冬優子の言う「可愛いアイドル」とは、誰かに評価される事を想定した存在です。しかしあさひにとっては、アイドルとはどう踊るか・どう歌うか、そういった自分がしたい手段です。
理想と手段。他人からどう見られるか、自分がどうしたいか。この二人の思想や姿勢はもはや火と油です。いかる心に火をつけろです。主に冬優子の。
※画像はイメージです。実在の冬優子・作品とは一切関係ありません。
その後冬優子はあさひと仕事を同じくしながら、良く言えば天真爛漫、悪く言えば自分本位に動くあさひに振り回されます。
仕事に対して自分のやりたい事を優先して動くあさひに対し、冬優子は他人からどう思われるかという印象の重要性について諭しますが、あさひは「嫌うならそれは相手の自由」と、真反対の意見を返しました。
1ターン目で音楽性の違いで解散する寸前というレベルの意見の不一致を見せた後、プロデューサーはユニットの三人目を連れてきます。
なんか想像したんと違う……。そう思いながらも、冬優子は仲良――
話を聞け。
7.迷光/迷走
冬優子の思いと裏腹に、こうしてプロデューサーはこの三人をアイドルユニット「ストレイライト」として結成します。
結成直後、ユニット最初の仕事としてミニライブの話が来ます――が、運営側の日時の告知ミスにより、開始直前で観客が一人も来ないという非常事態に。じゃあ運営君、後で屋上に来るように。
それを知るや否や、愛依は「二人のステージを見てもらいたい」という純粋な気持ちから、すぐさま観客を集めるべく外へ声掛けに行き、遅れて冬優子もそれに付いていきます。
ライブ会場近くで通行人一人一人に声かけをしていく愛依・冬優子コンビですが、あさひの姿が見えません。
そう怪訝に思っていると、遠くで大きな人だかりが出来ていました。
人だかりの中心には、一人で路上ダンスをしているあさひの姿。
そのパフォーマンスに人々は集まり、イベントは多くの人間に知られ、観客は想像以上に集まりました。めでたしめでたし――なワケないです。大問題です。
集客としては大成功でしたが、往来で無許可のパフォーマンスは本来罰せられる事です。冬優子はそのリスクを考えない行動に怒り、運営側からのお咎めは無かったものの、後からプロデューサーもあさひに厳重注意します。
ともかく客は集まりました。こんな調子で大丈夫か?不安だ、問題しかない。そう思いつつ、冬優子は二人とステージに臨みます。
なんか想像したんと違う……。
そうして最初のライブは好評で終わり、それまでの過程や結果から、プロデューサーはあさひをユニットの中心・センターに据えようと告げました。
しかしあさひこれをスルー。あさひにとってセンターという立場・立ち位置は興味が無く、むしろあさひは冬優子がセンターをやりたがっているのではないかと言いました。
「三人揃った後にセンターを決める」という話は愛依の加入直前に出ており、その時に冬優子はあさひへアイドルのセンターという物の重要性を説明していました。
その裏では心がバチバチしてSparkingしてましたが。
冬優子は「理想」を求める克己心の人間であり、ぶっちゃけ負けず嫌いです。それは今のあさひには知り得ない事ですが、それでも冬優子が自分と全く異なる価値観を持ち、アイドルやセンターという存在へ強い思いを抱いている事はちゃんと察していました。
しかし冬優子はこれを辞退し、「任される事が大事であり、選ばれた責任がある」とあさひがセンターを譲ろうとするのを制止しました。
実はこの話をする事前に、プロデューサーはあさひをセンターにする事を事前に冬優子に伝えており、冬優子はそれを了承していました。
「でも納得はしてないからいつかセンターは奪う」とプロデューサーには宣言し、冬優子はレッスンへ向かいました。
レッスンの後、あさひと愛依は二人で冬優子について話をします。
あさひは冬優子の事をよく見ており、冬優子のアイドルへの思いの強さや上昇志向については理解していました。
しかし「アイドルらしく」と自分の事以外にも気を配る姿は、自身がやりたい事・楽しい事を重視するあさひには分からないやり方であり、自分よりもアイドルに詳しく拘っている冬優子がやっているその事が「アイドル」ならば、それはあさひにとっては受け入れられない物だと言います。
その意見に愛依は肯定も否定もせず、ただ冬優子に言う事だけは止めるべきだと諭します。恐らくこのイベントのMVPシーンです。
愛依は冬優子とあさひの両方の気持ちを捉えて尊重しており、あさひの思想が冬優子にとっての核心に衝突する事を察しました。あさひは理解は出来ないまでも、愛依に言われてこの話はしまい込みます。
マジでこれ言ってたらユニット崩壊してたな。とんでもねえ綱渡りです。
8.二つの”強さ”
その後、ストレイライトは『海辺のアイドルバトル』という、他のアイドルユニットと点数を競うライブ企画に出る事になります。
三つのパフォーマンス部門に一人ずつ出演し、会場の人気投票による合計点数を競う企画です。
どの様にパフォーマンスすべきかと戦略を考え始め、愛依は自分はどうすべきかを他二人へアドバイスを頼みます――が、やっぱ音楽性が違いました。
冬優子はスポンサーのテレビ局を意識して振る舞うべきと言いますが、あさひはそれは「嘘」であり、愛依はそのままでいいと言います。
冬優子としてはファンを増やす為の努力をすべきという考えでした、が。
「そのままの自分を好きになってもらうんじゃダメなんすか?」
好きになってもらえる様に無理する必要は無い。そのあさひの言葉に、冬優子は「羨ましく、真っ直ぐで、強い」と返しました。冬優子にとって、これは紛れもなく本心でしょう。
「そのまま」で好かれるならば、冬優子はこれまで苦労してきませんでした。逆にあさひはそのままの自分の振る舞いで人々を惹き付けてアイドルをやり続けており、自分自身を貫くというその純粋さは冬優子の出来なかった事でもあります。
だからこそ、皆がそう強く振る舞える訳じゃないと言い――
あさひは「そんなわけがない」と強く主張しました。あさひが思う強さとは、「我慢出来る事」です。
あさひは自分の思うままに動こうとし、誰かに言われた事でも納得出来なければ従いません。それは自分にとって楽しくなく、苦痛だからです。
だから、自分を曲げる苦痛に耐えられる人間こそが強いと、それまでに無い確信的な口調で冬優子へ問い直しました。
「自分を貫く強さ」と「自分を曲げる強さ」、二人の主張は全く正反対の正論でぶつかり合います。言葉のキャッチボールが正面衝突し、一触即発といった所で、その話題の中心に居た愛依が割って入ります。
愛依は「自分がこうあるべき」という事がわからない、自分には考えもつかないと明るく言い放ちました。愛依は裏も表も無く、二人の「強い」主張はどちらも格好良い・凄いと素直な感想を述べます。
冬優子のサービス精神を考える事も、あさひの素顔で挑むべきという事も、そのどちらの意見も大事とし、その両方の中で自分が出来る全力を尽くすと結論を出します。
「真剣に考えてくれて、二人ともありがとね」。そう笑う愛依に毒気を抜かれ、冬優子はそれ以上の話は打ち切りました。
9.”アイドル”
そして迎えたライブ当日の開始直前、愛依はとんでもない話を耳にします。
「ファンやスポンサーに繋がって、票を弄ってもらえるアイドルがいる」、と。
ドがつく程の八百長です。漏洩する様な足を付けるとは徹底がなってませんね。金が足らんわ金が。
冬優子が顔をしかめるのに対し、あさひは「すごいパフォーマンスの方に投票したくなるはず」と、気にも留めませんでした。
が、実際の本番。愛依は大きなミスも無いにも関わらず得点を低くつけられ、同じぐらいに見えた別のアイドルは97点とかいうもうちょっとキミわかりにくい不正する気ないの?という高得点を付けられました。
正しく点数が付かないのは変だ、何故だろう。そうあさひは独り言ち……
うわぁなんだか嫌な予感しちゃうな。冬優子が不安に思う中、あさひはダンス部門のステージに立ちます。
そして、あさひは「コツ」の通りにパフォーマンスを始めました。あさひの前に高得点を出したアイドルのパーフェクトコピーの敢行です。忍者か?
同じ動きで、より凄いパフォーマンスをすればいい。あさひは自分が信じた事を可能にする実力があり、自分が思うそのままに振る舞いました。
が、会場はそんなあさひに良い目を向けません。どんなにあさひの方が上手かったとしても、観客は皆が「点数狙い」「それはナシ」「論外」といった反応を向けます。そんなモンあさひは気にもしません。一度やると決めた事を、正しいと思った事をやり続けます。
そんなあさひを、冬優子は祈る様に応援しました。
冬優子にとって、あさひは「そのまま」で好かれる「強い」存在です。最初の出会いの頃を思い出して欲しいのですが、冬優子にとってのアイドルとは「特別な存在」です。
他人の目を気にせず、素顔のまま振る舞い、人を惹き付ける魅力的な存在。
冬優子と正反対の女の子。あさひの姿は、冬優子にとって理想のアイドルに近かったのです。
腹は立つ、気に食わない、意見は合わない、納得も出来ない。そんなあさひに、冬優子は勝って欲しいと心から願いました。
しかしあさひの結果は惨敗と言える低得点。あさひはこれに憤慨します。「同じ内容で、さっきの子より上手く踊ればわかるハズなのに」――
キレました。あさひの言葉に聞いてられない、もう限界だとばかりに、ついに冬優子は「冬優子」で激昂します。
これまであさひや愛依に対しても常に「ふゆ」で接し続けていたにも関わらず、完全に冬優子は素の怒りをぶつけてしまいました。
こんな不条理な世界に対して。
あさひのパフォーマンスは確かに前のアイドルを上回った物であり、実際に観客の一部もそれを認めていました。にも関わらず、あさひというアイドルへ与えられた点数という評価は、不平等に低い物でした。
自分とは正反対の存在がアイドルである。そう考えていた冬優子にとって、まさにその正反対を貫いているあさひが不当に扱われる事は、あまりに現実的でやるせない出来事でした。
あまりにもカッコよすぎる啖呵を切って、冬優子はステージに立ちます。
紛れも無い「ふゆ」として、観る人全てに目を通して気を遣い、可愛らしく見える様に振る舞い、その上でパフォーマンスをする。冬優子が今信じている”アイドル”として、全力を尽くしました。
結果的にストレイライトというユニットは敗北します。しかし、少なくとも三人の中で最も点数が高かったのは冬優子でした。
10.『ストレイライト』の黛冬優子
もう隠す気ゼロやん。冬優子はあさひと愛依の前で、「ふゆ」を捨てて素直すぎる程に毒づいて見せます。
「不正を黙らせるだけの実力が今の自分達には無かった」「いつか絶対ぶちのめす」。「ふゆ」が絶対に言わないだろう言葉で悔しがる冬優子に、あさひは声をかけました。
「邪魔なんじゃないか」と思っていた、パフォーマンス以外の部分。自分がやりたい・正しい事だけやれば良い、その考えをあさひは反省します。
あさひは愚直な訳ではなく、自分の理解と納得が及ぶ事に対しては素直に省みる事が出来る人間です。そして冬優子にとって、あさひの言葉は自分の正当性を認めさせる物でした。
それに対し、冬優子はこう返します。
「その通りだ」「自分が正しい」。そんな事は言ってやりません。
あさひが間違っている、自分が間違っている。そんな譲り合いすら望みませんでした。冬優子の真反対であるあさひの意見は正しく、自分の意見もまた正しい。
主張を対立させたまま、冬優子はあさひをセンターと認めます。
ここで冬優子が自分の正当性を主張すればあさひを従わせ、センターを奪う事も可能だったかもしれません。しかし、それは冬優子にとって我慢出来ない事でした。
あさひの能力の高さも、真っ直ぐで純粋な考えも、納得出来ない部分も。気に食わない事だらけであるものの、冬優子にとってあさひは「アイドル」として相応しい存在でした。
だから冬優子はあさひにセンターでいる事を望みました。あさひの在り方は自分の理想に近く、それを曲げて欲しくなかった。
あさひには自分を貫く強さを持ち続けてほしかったんですよね。
まぁそれはそれとしてやっぱ嫌いですけど。
あさひの事は認めましたが、まぁ人種的に反りが合わないので、好きになるとかは無理です。散々振り回された後なのでさもありなん。
反して、他の二人は「ふゆ」ではなく「冬優子」が好きだと言い返します。
露悪的にも近い言動を見せた「冬優子」に好きと言う人間は、冬優子の人生の中でそう居ませんでした。冬優子の人生の半分ぐらいは「ふゆ」であり、うっかり「冬優子」を見せれば疎まれる、それが当たり前でした。
理解出来ず「変なやつ」と言いながらも、冬優子は微笑みます。
それはそれとして、いい機会なので最初に会った時に言いそびれていた事を冬優子は愛依に言います。人の話は聞こう。
聞こう!
聞けェーーーッ!!
こうして自分を晒し、受け入れられ、そしてあさひと愛依の存在を認めた事で、『ストレイライト』というユニットがようやく成立しました。
なりたい理想を見定め、「ふゆ」と「冬優子」を受け入れてくれる仲間を見つけ、ついに冬優子はアイドルとして真のスタート地点に立ちました。
スタートまで長過ぎんか?ラブファントムの前奏の100倍長いわ。
≠終.ストレイライトの戦いはこれからだ!
いかがでしたか。
アフィブログでも見ないレベルでクソ長いじゃねえか。もうちょっとコンパクトにまとめるつもりだったのに……。
この後にも「ファン感謝祭」「WorldEnd:BreakDown」「GRAD」「The Straylight」「LandingPoint」「Run 4 ???」と、全プレイヤーが見る事が出来る共通ストーリーだけでも、冬優子というキャラの魅力が語られ続けています。
もう別に俺いらなくない?このnote書く必要あった?もう実際にやれば一目瞭然じゃん……冬優子の良さとか今更語る必要あるか……?
とまぁ、マジで序盤の時点で冬優子というキャラクターがこれだけ恵まれたストーリーを持っているという事を再確認出来て良かったです。
冬優子に関して私は真に驚くべき魅力を見つけたが、このnoteはそれを書くには狭すぎると欄外余白に書くレベルで話す所だらけでした。途中から後に引けなくなったんです。
ここからの冬優子の話は波乱と逆境と胃痛に満ちた物になりますが、それを経る度に冬優子は何度と無く刃を叩かれて造られた刀の如き強さを得ていきます。
マジでカッコイイんですよ冬優子ってアイドル……むしろこれからがカッコイイ所なのに、筆者の体力が保たなかったんですよ……。
自らと向き合い、戦い、前に進み続ける。これが冬優子だ!シャニマスで最もバトル漫画が似合う女こと、黛冬優子の生き様を見ろ!心に刻み付けろ!
そして【アンシーン・ダブルキャスト】の復刻をくれ!!!以上!!!!