1Lくらいの容器でろ過・エアレーション無しでワイルドベタを(一時)飼育する方法
タイトルの通りですが、1L程度の容器でワイルドベタ(小型種〜大型種)を、すくなくとも一時的には極めて状態よく飼える方法です。ベタ飼いの間では割とよく用いられている方法で、オリジナルでも何でもないのですが、利便性のためここでは仮に『小型容器止水飼育』と呼ぶことにします。
概要
ようは、小さな容器でエアレーションもフィルターも使わない代わりに、安定した水質ですごく頻繁に換水しましょう、という方法です。
鑑賞にも向きませんし、あまり長期になると運動不足にもなりかねないので、一般的にはメインの飼育方法というよりは一次的なストック方法と考えたほうがいいかもしれません。
ワイルドベタの飼育にはコツがいるといわれることが多く、確かにそういう面はあると思いますが、この方法自体には実は全くといっていいほどコツがいりません。最初スタートする時点で個体が健康なら、あとはちゃんと換水用の水のストックを作り、絶対忘れないように換え続けるだけです。
小型容器止水飼育の特徴
どういう時に使う?
病気の個体の隔離治療→こちらの記事で解説してます
寄生虫の駆虫
ケガをした個体の療養
新たに導入した個体の立ち上げ
ペアの片方に栄養や体力をつけさせる・抱卵させる
何となく状態が落ちた個体の立て直し
水槽の立ち上げや整理の間の一時ストック
うちではだいたい上記のような目的でこの飼育方法を使います。「本水槽に入り切らない魚を飼う」はやってしまうこともありますが、あくまでささやかな趣味家として、余暇で魚を飼ってる身として、うちではなるべくこの方法に頼らないように心がけてはいます。
病気の個体の隔離治療、寄生虫の駆虫、ケガをした個体の療養についてはこの記事でやり方を書いています(と言っても、換水用の水のストックに薬剤を溶くだけの違いです)。
本水槽で飼育していて、長期的に何となく不調(病気とかじゃなくて軽い不調です)だな〜と感じるときにこの方法でしばらくストックすると、圧倒的に調子がよくなることもあります。
小型容器止水飼育のメリット
もともと持っていた以外の病気には(まず)かからない
単独飼育なので餌の量のコントロールが容易
単独飼育なのでケンカでケガを負う心配がない
ちょっとした不調が回復するとが多い
異変や変化に気づきやすい(ちゃんと見てれば)
小型容器止水飼育のデメリット
ほぼ毎日換水がマスト
上記の関係で家を空けることができない
数が増えると餌やりが若干めんどい
ずっとそのままだと運動不足になる可能性がある(若い個体だと発達を阻害する可能性も)
繊細な個体は餌を食べなくなってしまうことがある
保温・保冷が不便(部屋ごとの場合は関係なし)
部屋ごと保温する以外では、大きめの容器を用意してそこにヒーターを入れ腰水にするなどの方法があります。寒い部屋で保温を怠ってしまうとかえって調子を崩すこともあります。パネルヒーターは熱くなりすぎるリスクがあり、使うときはくれぐれも注意してください。
準備と水換えの手順
1.魚の力で開かないくらいの強度でフタをロックできる1Lくらいの容器を用意します。
2.20Lくらいの容器を用意し、換水用の水をストックします。
3.換水用のタンクの水を使って全換水します。
排水は、容器のフタを少し、魚が落ちない程度にずらしてカップ焼きそばの湯切りよろしく水を捨てます。一緒にフンや餌の残りも捨てます。
注水は、換水用のタンクを水槽より高い場所に置いておき、そこからサイフォン原理で水を落とすと便利です。容器にフンなどが残っている場合は、新しい水を少し入れて魚ごとすすぎ、その水をいったん捨ててから注水します。
この全換水を、最低1日1回、必要な場合は1日2回ほど行います。くどいですが忘れずに水温は合わせましょう。
餌やり
容器のフタを空けて餌を放り込みます。あまりガチャガチャ動かすと餌を食べなくなるので、うちでは、上段に積んである個体に餌をやる→フタをしてしばらく放置→上段のケースを移動させ、その下の段の個体に餌をやる、というのを繰り返して給餌しています。
容器の側面の上の方、水を8分目くらいまで入っても届かない場所に穴を空けておいて、そこからやってもOKですがかえってめんどいのでやめました。
こんな乱暴な方法で飼育したら餌を食べなくなりそうな気もしますが、今のところうちでは本水槽で問題なく食べてた個体は小容器飼育でも少しして慣れれば食べるようになりました。また本水槽で複数飼育してると拒食しても分かりにくいのですが、小容器だと餌が残るのですぐに分かります。
個別飼育のメリットを活かし、餌の量を加減することで太りすぎた個体を絞ったり、痩せた個体を太らせたりすることもできます。
必要な用品
容器
1Lから1.5Lくらいの、魚の力で開かないくらいの強度でフタをロックできる容器を使います。
その他、配管用品など
換水用タンク
20Lくらいのポリタンクであれば何でもいいです。水槽が余ってるならもちろん水槽でも。
水槽→換水用タンクまでのホース
なみなみと水をくんだ換水用タンクを水槽より高い位置に持ち上げるのがイヤなら、水道からタンクに注水できる長さのホースを用意します。その間にアクアリウム用浄水器をかませてもいいですし、中和剤で塩素を中和してもかまいません。
この飼育法だと水換えは大変か?
この方法では基本的に毎日の換水が推奨されます。小型種であれば1日、2日おきで大丈夫ですし、大型種でも餌を控えていてフンが少ない時は水換え間隔を伸ばすことがありますが、普通に水槽で飼育するよりずっと高頻度で換水することになります。
では換水が大変かというと、一概にそうとも言えないかもしれません。容器を選べばカップ焼きそばの湯切りのごとく一瞬で排水できますし、容器が小さいので注水にも時間がかかりません。容器1つあたり換水に要する時間は長く見積もっても1分。20個管理してたとしてもたかだか20分です。
こう考えると、この方法での換水は手数こそ多いものの、かかる時間は普通の水槽のメンテとあまり変わらないと考えることもできます。ただし家を1日以上空けたりするのは危険です。
なぜこの方法でうまく行くのか?
ひとつには、ワイルドベタをふくむキノボリウオ亜目(Anabantoidei)の仲間は空気呼吸するための器官(上鰓器官)を持っていて、水中の溶存酸素が少なくなっても呼吸できることが考えられます。12cmほどのワイルドベタと同じくらいのボリュームの他の魚でこれをやったらおそらく酸欠になってしまうでしょう。
しかし、フィルターを回した水槽より場合によっては状態よく飼えるのはどういうことか?
推測ですが、流水に生息するタイプのワイルドベタは、野生下では同じ水が流れてこない「かけ流し」的な環境で暮らしています。同じ水を循環させていれば、いくらフィルターが回っていて代謝物から出るアンモニアなどの有害物がちゃんと分解される環境下でも、水中の細菌などは殖え続けてしまいます。その影響で調子を崩すことがあるのかもしれません。
であれば、フィルターなんかに頼らずに全換水して、水中の細菌も代謝物も一掃してしまった方が、ペースは遅いですがまだしも「かけ流し」に近い環境を再現できるということなのかもしれません。
もちろん、フィルターを回した通常の飼育環境下で何の問題もなく、長期間状態良く飼えることも多々あります。
おわりに
以上、小型容器止水飼育について説明しました。常にこの方法で飼うと弊害も考えられますし、なにより家を空けることもできませんが、ちょっと体力をつけさせたい個体を隔離したり、♂♀ペアのパワーバランスが崩れて療養兼立て直しをする場合などには知っておいて損のない方法です。