グラパン

グラパン

最近の記事

見えないものは絵画に描けるのか?

先日あるギャラリーで展示されていた作家の方と少し話をしていて、写真に撮ったものから絵画を描いている、それは写真では、自分がその時感じていたあいまいなものが消えてしまっているからだというエピソードを聞いてなるほどなぁと思いました。でもその時に感じた事をうまく言語化できなかったのです。 人は視覚や聴覚だけで感じているわけではない その後、YouTubeでCDとレコードの違いの話を聞いていて何かが言語化されていると思いました。CDは人間の耳の可聴範囲の音はもちろん拾っているので

    • 内藤礼展で思う、現代アートの鑑賞体験とは

      東京国立博物館で開催されている内藤礼展『生まれておいで 生きておいで』を観て来ました。最近観た展覧会の体験としてはちょっと独特でしたので、その感想をまとめてみました。 展覧会場は、大きく2つあり平成館企画展示室、本館特別5室、そしておまけ的な展示が本館1階ラウンジにありました。メインの2会場はどちらの空間も1つ1つの作品から受ける印象はそんなに強くないというか、さらっと見て通り過ぎればあっという間に鑑賞し終えてしまう感じでした。 空間を改めて感じてみるということ 何回か

      • 政治家が劣化したのは何故か?

        最近の裏金問題に端を発した政治家の言動を見るにつけて本当に政治家が劣化してしまったなあと思ってしまいます。国民の一員としての責任はあるはずなので少し考えてみたいと思います。 岸田首相の行動から見る日本の政治 岸田首相というのは、ある意味日本が米国の属国であるということをはっきり国民に知らせるという意味では、これ程わかりやすい行動をする首相も珍しいと思います。バイデン政権に対する聞く力が存分に発揮されていますね。 第二次大戦後の歴代の総理大臣は、多かれ少なかれ米国の意向に

        • 私たちにとって記憶とは何なのか?

          先日観た、NHK BSのヒューマニエンスの記憶の回がとても印象に残ったので、番組を観て感じたことを含め自分用のメモとして纏めておきたいと思います。 記憶とはネットワークで保存される 記憶は、色々な感覚器官からの情報が海馬に集まって、海馬の中でそれらの情報がネットワーク化されて保存されるものだそうです。神経細胞のネットワークなのでその繋ぎ方は膨大な数が可能であり、物理的には一生涯の出来事を記憶することも可能だそうです。ただ海馬の記憶は好き、嫌いの情動とは関係なくニュートラル

        見えないものは絵画に描けるのか?

          2024京都市長選挙論点まとめ

          *2024年1月30日更新 2月4日に行われる京都市長選挙について討論会やそれぞれの候補のYouTubeでの話を見て論点をまとめてみました。個人的に誰に投票するかを考える資料のようなものです。まだ今後情報をより収集できたら更新していきます。自分の推しを見つける参考になれば幸いです。 討論会を聞いて知ったのですが、京都市の年間予算は9300億位ですが、そのうち使用目的がほぼ決まっている分を除くと裁量の余地があるのは500億程度とのことです。候補者は、村山祥栄氏、松井孝治氏、

          2024京都市長選挙論点まとめ

          もしフリーレンが友だちだったなら

          アニメ『葬送のフリーレン』を楽しみに観ています。主人公のフリーレンは1000年以上生きているエルフという設定ですが、そんな存在が友だちだったなら何をしたり聞いたりするだろうかとか考えてみました。 友だちであるなら、まずその人(エルフ)のことをわかっていないといけないと思います。フリーレンは1000年以上生きているそうですが、見た目は変わらず若く、魔法使いとしての実力も衰えていないようなので成人したままの状態をキープして生き続けていると思われます。きっと死ぬ直前まで衰えること

          もしフリーレンが友だちだったなら

          心からわかりあえる人はいますか

          Netflix で韓国ドラマ『マイ・ディア・ミスター〜私のおじさん〜』を昨年末に観ました。とても良いドラマで観ながら色々考えたのですが、特に「孤独である」とはどういうことなのか、そして「人を理解する」とはどういうことなのかについて特に考えさせられました。 ドラマは、サムアンE&Cの部長であるパク・ドンフンが、社長派と専務派の社内の権力争いに巻き込まれることから始まります。ドンフンの元で派遣社員として働くイ・ジアンは借金返済に追われており、ドンフンに間違えて届けられた賄賂の金

          心からわかりあえる人はいますか

          お天道様は見ている?

          日本人が正直者であることの理由に、お天道様がみているからというのがあります。このことは日本人はなんとなく世間のようなものを規範としていて、西洋的、キリスト教的な倫理感がなくてダメだというような文脈で言われることがあります。このことには前からちょっと引っかかっていました。何故かというと、日本では財布とか失くしても戻ってくることが多いし、それはつまり拾った人がちゃんと届出をしているからです。西欧でこういうことはほぼないとよく聞きます。 この日本人の心性はどこから来ているのかとい

          お天道様は見ている?

          京都に移住して感じること

          京都に移住してから5年程経ちました。結果的に今住んでいる場所は結構満足度が高いので、その辺、自分なりに纏めておこうと思います。 京都の住宅街って意外に静か まずどこに住むかを決めるにあたって、物件探しを始めたのですが、観光客として京都に来ていた時は、京都って人混みが酷くてこんなとこ住めるんかいなと思っていたんですが、いざ住宅街の物件を廻ってみると昼間とかしーんとしてて、めっちゃ寂しいやんとなったのです。実際、住み始めてからも住宅街では昼間はもちろん、夜も基本静かで観光地と

          京都に移住して感じること

          失われた感覚を求めて

          アートを鑑賞することが習慣になってから、沢山のアーティストと出会い、本当にいろんな話をしてきました。そんな中で自分がアートにどんなものを求めているのかもはっきりしてきました。それは作品がどんなものであれ、自分の感覚が開かれていくような鑑賞体験です。 感覚が開かれるとはどういうことか しかし、感覚が開かれるとはどういうことでしょうか?アート作品の鑑賞は視覚情報に依存することが大きく、目で見たものから何か身体に反応が伝わり、何かを感じるというパターンを辿ります。それはそれで面

          失われた感覚を求めて

          頼れるのは自分だけなのか

          香港映画『星くずの片隅で』を観て来ました。コロナ禍の香港で小さな清掃会社を経営している男(ザク)のもとに、小さい娘を持つ女(キャンディ)がやって来て、バイトで働きはじめ、段々といい感じで行くのかなと思わせて、事故?があり、どん底に落ち、それでも2人は出会ってよかったんだと思える展開が、全体的に重苦しい映画なのに希望を感じさせて良い余韻が残る映画でした。 自分だけが頼りという感覚 ザクとキャンディが親しくなってから、ザクはキャンディに「もっと人を頼れよ」というと、キャンディ

          頼れるのは自分だけなのか

          アート作品は鑑賞者を映し出す鏡であること

          アート作品を観ながら、ある特定の作品には凄く惹かれるのに別の作品にはそうでもない、そういう体験は美術館での鑑賞の場合はもちろんありますし、ギャラリーである1人の作家の個展で作品を観ている時にも起こります。それが起こるのは、逆に特に惹かれる作品が存在する場合により強く意識されるように思います。 ちょうどそんな体験を先日観た荒木由香里さんの個展『よりよき世界のかけら』で感じたのでどうしてそう思ったのかちょっと考察してみたいと思います。荒木さんの展示は、ハイヒールと日常のものを組

          アート作品は鑑賞者を映し出す鏡であること

          手の中にある雲を愛でる

          「手の中で雲を見たことがありますか?」そう聞かれて、はいと答える人はほとんどいないのではないでしょうか。そんな貴重な体験を先日してきました。現代アーティストAKI INOMATAさんの展示《昨日の空を思い出す》でのことです。 AKI INOMATAさんの最新作は、前日の雲のデータを3D プリンターでカップの液体の中に再現し、それを今日の雲と一緒に観るという作品です。ギャラリーでは、グラスに再現された雲を手に取って眺めることもできます。実際、手に取って眺めるとふわふわ、クネク

          手の中にある雲を愛でる

          AIは美の基準を変えるのか

          先日、Twitter(Xと言うべきか)でとても美人の女性が自分の写真を載せたところ、”絶対AIだろ、AIに違いない”というメッセージが大量に来たと言っていました。実際に存在する人らしい(直接知らないので、確かではない)ですが、何と言うかその反応が興味深かったです。 本当に美しいものはAIが作る? 興味を惹かれたのは、あまりに美人だと思える場合、人はきっとAIが生成したものに違いない、つまりAIが生成するものこそが、実在の人よりも美しいはずだという共通の理解のようなものが拡

          AIは美の基準を変えるのか

          「怪物」とは何か

          最近、怪物(モンスター)と名のつく映像作品を立て続けに観る機会がありました。是枝裕和監督作品の映画『怪物』、Netflixの韓国ドラマ『怪物』、そして同じくNetflixの浦沢直樹原作のアニメ化作品『MONSTER』です。 タイトルが同じか、似ていながら内容はかなり違います。『MONSTER』はドイツやチェコなど欧州各国が舞台であり、韓国ドラマ『怪物』は韓国の少し田舎の村が舞台、そして是枝映画『怪物』は、地方の小学校とその周辺が舞台の作品です。是枝映画で描かれる”怪物”は具

          「怪物」とは何か

          適当にアウトプットするということ、京都雑感

          坂口恭平著『自分の薬をつくる』を読みました。その中で特に印象的だったのが、人はインプットする際には、割と自由にいろんなものをインプットしているのに、アウトプットするとなるとちゃんとしたものをアウトプットしようとしすぎているという話です。 言われてみれば、自分もこのnoteに書こうとするとちゃんとした自分なりの考えをまとめてから書こうと思ってしまい、途中で書くのを諦めたnoteが幾つかあります。インプットについては言われる通りで、本は同時並行的に何冊か読んでいますし、YouT

          適当にアウトプットするということ、京都雑感