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僕が民法を解くときに考えていること~R5予備を題材に~

バッタです。

僕はハッキリ言って民法が得意です。
R5予備短答満点、予備直前模試A(上位6.1%)、予備論文本番A
TKC模試A(上位4.0%)、司法短答73/75点、司法論文Aと実績もそこそこあります。

そのためか、僕の質問箱には「民法ってどうやったらできるようになりますか」という質問が大量に来ます。

そこで、皆さんが民法を得意にするための一つの指針として、僕が令和5年度予備試験・民法を本番に解いているときに考えていたことを可能な限り言語化してみようと思います。

このnoteを通して、僕が常日頃から
”民法論文の最高の対策方法は問研だ”とか
”問研はできるだけ一問を抽象化して使えるように”
とか言っている理由を理解していただければなと思っています。


以下、僕の再現答案を引用しつつ思考過程を述べていきます。
原本はこちらのnoteに載せているので、よければご一緒にどうぞ。


第一 設問1について
1 BはAに対して本件請負契約に基づく報酬支払請求(民法(以下、法名省略)632条)として250万円の支払いを求めることが考えられる。

 そんな当たり前のこと知ってるわ!という声が早速聞こえてきそうですが、民法答案のスタートは必ず訴訟物から始めましょう。

 特に訴訟物に困ったときは、まずその契約の基礎的な請求から順番に考えていくのが吉です。
 たとえば売買契約なら目的物引渡請求や代金支払請求です。

 一部の再現答案の中には、報酬支払請求をすっ飛ばして債務不履行の損害賠償請求から始めている人もいました。
 しかし、あくまで債務不履行の損害賠償請求というのはイレギュラーな請求です。
 ますは、当該契約の基本的な請求から考えることを習慣づけましょう。

以上のことは、問研第28問(旧司昭和60年第2問)から学んだことです。
 この問題は債権譲渡の事例でしたが、僕は初見で解いたときに訴訟物を何に設定するかで悩みました。
 その経験から学び取ったことです。



かかる請求が認められるためには、請負契約が成立している必要があるところ、

要件事実的に書き始めています。
 請負契約に基づく報酬支払請求の要件事実は、請負契約の締結と仕事の完成です。仕事の完成が先履行であることは、Aからの反論として言い分が問題文に記載されているため、ここでは書きませんでした。


 やはり、民法答案の肝は主張反論構造です。
 そしてこれをしっかり身に着けるためには、要件事実の知識がどうしても必要です。
 特に物権的請求の場面では要件事実の知識がめちゃくちゃ活きるので、ぜひ要件事実の勉強は頑張ってみてください。

民法答案において主張反論構造が大事である事やその書き方も問研から学んでいます。
 問研の答案は主張反論構造で貫徹されていますから、問研を通して主張反論構造での書き方というのを学んでください。


Aは本件請負契約の請負債務は契約締結時の時点で履行不能(412条の2)であったのだから、契約は無効であると反論する。では、原始的不能は契約の無効をもたらすか。

 事実8に記載されているAの言い分2つに忠実に答案を展開します。

当事者の言い分が問題文中に記載されている場合には、その言い分を法的に昇華してできる限り丁寧に論述しましょう。

 わざわざ作問者が言い分という形で問題文にヒントを与えているのは、そこに点数があることの裏付けとなります。
 当事者の言い分を聞いてそれを法的に主張することは法曹の基本的な素質ですしね。

 この言い分に忠実に丁寧に展開する書き方というのは、問研第34問(旧司平成10年第1問)で身につけました。
 この問題は当事者の言い分を答案化する際の処理手順を確立する上でうってつけの問題です。
 R5予備民法を解いているときも、この問題を想起していました。


 なお、論点の問題提起を差し込んでいますが、これは緊急避難的に行ったものです。
 というのも、単なる事実の問題提起だけでは今から何を書こうとしているのかが読み手に伝わらないかもしれないと危惧したため、差し込みました。

論点の問題提起は原則不要です。事案の問題提起さえすれば何を今から書こうとしてるのか普通は分かりますし、そういう問題提起の仕方をするべきです。
 しかも、論点主義的な印象を読み手に与えかねません。

 しかし、事案の問題提起で上手く問題提起できなかった場合に、緊急避難的に用いるのはアリだと思います。


ア この点について、412条の2第1項は履行不能の場合に「債務の履行を請求することができない」と規定し、同条2項は原始的不能の場合であっても「損害の賠償を請求することを妨げない」と規定している。これらの規定は、原始的不能の場合であっても契約が有効であることを前提としているのである。
 したがって、法は原始的不能であっても契約は無効とならないことを予定しているというべきである。

 ここは基礎マスター民法の際に塾長が話していたのをなんとなく覚えていました。
 塾長の顔と声を思い浮かべつつ、塾長に最大限感謝を心の中で伝えながら解いていたのを覚えています。


イ したがって、Aの反論は認められない。

 基本的なことですが、主張反論構造で答案を書く際は、このように「○○の反論(主張)は認められる/認められない」と結論を明示しましょう。

 この一文によって、ワンラリー分の主張反論が終わりましたという、採点者に向けた合図になります。

 この形は問研の答案を通して徹底されていることから学びました。


(2) 次に、Aは、請負契約においては仕事の完成が先履行であり、請負債務が履行不能となっている以上、反対債務である報酬債務を履行する必要はないと反論する。では、仕事の完成は報酬支払の先履行となるか。

 事実8に記載されたAの言い分の2つ目を法的に昇華します。

 再現答案では同時履行として主張させているものが多かったですが、Aの生の主張を忠実に法的に昇華するなら、同時履行ではなく先履行の抗弁でしょう。

 ここでの論点の問題提起は蛇足ですので本来は不要です。


ア この点について、633条は目的物の引渡しと報酬の支払いを同時履行の関係としているところ、目的物を引き渡すためには仕事を完成させる必要がある。そうだとすれば、法は仕事の完成が報酬の支払いよりも先履行であることを前提としているというべきである。
イ したがって、Aの反論は認められる。

 この部分も、原始的不能と同様、事前に論証を準備していたわけではありません。

 大島本にこんなこと書いてあったよな~というのを思い出しながら書いています。


(3) そうだとしても、Bは、請負債務が履行不能となったのは、Aの「責めに帰すべき事由」に基づくと主張して、536条2項前段に基づき250万円の支払いを求めることができないか。

 ここは、事実8に記載されたB側の言い分を法的に昇華しています。

 僕はこの年解いている時に、最初に契約締結上の過失の構成が思いつき、次に536条2項の構成が頭に浮かび、どちらでいくかめちゃくちゃ悩みました。

 まず536条2項の構成が頭に浮かんだのは、問研第19問(旧司昭和52年第1問)が想起されたからです。
 この問題で用いられたのは、567条の方ですが、「ふざけんな、お前のせいなんだから俺は払わないぞ」という当事者の生の主張を危険負担に昇華させるという頭の使い方が脳にストックされていました。

 結果として536条2項の構成を選んだのは、(一部後付けの理由もありますが)こんな感じの理由です。

① 不文のものより明文のものを優先すべきと思ったから
② 契約締結上の過失は契約不成立のときに主に問題になるはずだと思ったから
③ 近年の民法は、債権法改正で変わったところを聞いてくる傾向にあり、536条はこれに合致するから


 まず、甲が本件損傷により修復不可能な状態に至ったのは、Aが個人宅における掛け軸の標準的な保管方法に反し、甲を紙箱に入れたのみで湿度の高い屋外の物置に放置したためである。通常、古い掛け軸であれば、その傷みやすさから、厳重な梱包のもと、適切な温度・湿度管理を施した環境下で保管するべきであったといえることから、Aの管理不足が認められる。
 また、Bは甲の保管状況についてAに数回にわたって問い合わせていたのであり、甲がAの支配領域にあった以上、Bが尽くすべき注意は尽くしていたということができる。
 さらに、Bは契約締結に際して、甲の状態について念押しをしていたのであるから、Aは甲の保管について自己責任を問われ得ることを覚悟していたというべきである。
 以上のことから、Bには「責めに帰すべき事由」が認められる。

 本当は規範を立ててきれいな三段論法にしたかったのですが、「責めにきすべき事由」の規範を立てるのが無理でした。

 ここは明らかに当てはめ勝負で差がつくところだと思い、Aのせいっぽいところをとにかく書きまくりました。
 当てはめでは、とにかく”事実の引用+その評価”というセットを意識していました(引用では分かりやすく、評価の部分を黒字にしているので参考にしてください)。

 自分なりの言葉で頑張って事実を評価しようとしている姿勢が垣間見える答案というのは、試験委員の好きな答案だと僕は勝手に思っています。

 問題文の事実4でBが念押ししたという事情からすると、おそらくAの有責という結論で大丈夫だろうと考えていました。

 僕は結論の妥当性を相当重視します。
 この事例なら、問題文を読み終わった時点でBを勝たせるべき、Bの請求を認めさせるべきと決め打ちし、そこから法律構成を考えていました。

 当てはめでは、契約締結上の過失における考慮要素「先行行為の態様、契約交渉過程の成熟性、当事者の属性・従前の関係」に多少気を配りつつ事実を評価しています。


(4) もっとも、536条2項後段により、Bは請負債務が履行不能になったことで得た利益を償還しなければならないから、本件損傷を知った令和5年7月13日以降に必要となるはずだった費用は差し引いて、報酬を請求することになる。

 ここは536条2項後段もちゃんと考えているということをアピールするためだけに書きました。

 40万円という事情をどうやって使ったらいいのか、試験中の僕には全く分かりませんでした。

 これ重要そうだよなーと思いつつ、536条2項後段に絡むだろうということは検討がついていたので、そこにだけ触れてアピールし、捨てました。


 僕の答案は、以前飛翔さんから”分からないところは素直に飛ばす分、分かるところで勝負をかけることができている”的な評価をしてもらったことがあります。

 たしかにこれは僕の答案の特徴だと思います。
 試験本番だとどうしても、捨てる・飛ばすという選択肢をとるのがとても怖くなってしまいます。

 しかし、分からないところを誤魔化す答案よりも、せめて分かるところで頑張る答案の方が明らかに点数はあがります。

 本番、どの論点・どの問題も完璧に分かるなんてことあり得ませんから、捨てる・飛ばすという選択肢も時には必要なんだと頭の隅に置いておいてください。


2 よって、BはAに対して、250万円から上記の利益を差し引いた金額の支払いを求めることができる。

 結論です。


■ 第二問に移る前に

民法、特に総則・物権においては信頼の対象というのが極めて大事です。
 このR5予備民法第二問では、まさにこの”信頼の対象の違い”というのがドストレートで聞かれた問題だと僕は思っています(詳しくは再現分析note参照)。

 この信頼の対象が大事である事、それに意識的に着目しなければならないということは、問研第38問(予備平成29年)を経て学びました
 本番でも、この問題で得た着眼点から、即時取得と表見代理にたどり着いています。


第二 設問2(1)について
1 Dの乙を占有するCに対する所有権(206条)に基づく乙の返還請求が認められるためには、Dに乙の所有権が認められる必要がある。

 設問1と同じく訴訟物からです。
 Cが乙を占有していることは明らかに認められるため、「乙を占有するCに対して」と書き始めています。

 このような書き方は、問研第2問(旧司平成6年第2問)において、伊関講師が答案を修正したことから着想を得ています。


そこで、Dは、乙につき即時取得(192条)が成立すると主張することが考えられる。

 争点は所有権→所有権を主張する方法として様々あるうち、即時取得を選択という流れをできるだけ分かりやすく書くようにしました。

 このように、請求原因→そのうちの争点となる請求原因→争点の争い方という風に順に答案で着眼するポイントが小さくなっていくイメージです。


(1) まず、他人物売買も債権的には有効である(561条)から、有効な「取引行為」によって、乙の占有を開始したといえる。そして、「平穏に、かつ、公然と」占有をしていることと「善意であ」ることは、186条1項により推定される。また、Bが適法に乙を所有していたことも188条により推定されるため、これを信頼したDには「過失がない」ことが推定される。そして、これらの推定を覆す事情は本件では存在しない。

  即時取得では推定規定を落とさず全部使い切りましょう。

 推定される→覆す事情がないという流れは、問研第15問(旧司平成元年第1問)の答案例から着想を得ています。


(2) もっとも、Dは占有改定の方法により乙を占有しているが、占有改定によっても「占有を始めた」ということができるか。
 この点について、即時取得は真正な権利者の犠牲の下、譲受人の信頼を保護する制度であるから、保護に値するほど強い物的支配を確立している必要がある。
 そして、占有改定は、譲渡によって不利益を受ける譲渡人の占有を通じて公示をする点で、公示の信頼性が低いのであるから、保護に値するほど強い物的支配を確立しているとはいえない。
 そこで、占有改定では「占有を始めた」ということはできない。

 ここは論証を貼りつけただけです。
 当然のことすぎますが、論証は確実に覚え切りましょう。論証暗記はマジでとんでもなくしんどいですが、そこが耐え時です。

 試験が終わったあとに、「一般外観上、従来の占有状態に変更をきたす」という判例準則を使わなければいけないとか、判例の射程が問題になるとか知りました。
 まあ、合否に直結するような問題ではないでしょう。


(3) したがって、Dに即時取得が成立せず、乙の所有権は未だCに帰属している。
2 よって、Dの上記請求は認められない。

 結論です。
 最初に、請求原因→争点となる請求原因→争点の争い方と小さくしていったのを、逆方向に段々大きくしていくイメージです。


第三 設問2(2)について
1 上述の通り、DのCに対する、所有権に基づく乙の返還請求が認められるためには、Dに乙の所有権が認められる必要がある。

 設問2(1)と同じです。

(1) まず、Dは代理による契約の効果として、CにBD間の乙の売買契約(以下、「本件売買契約」とする)の効果が帰属し(99条1項本文)、CからDに対して、所有権が移転したと主張することが考えられる。しかし、本件売買契約の時点では、Bは販売権限を失っていたのであるから、かかる主張は認められない。

 代理権では、まず普通の代理が認められないことから始めます。
 こうすることで、基礎基本から考えていることが採点者に伝わりますし、論点に飛びついている感が出ません。
 また、代理の要件事実をというのはその後の無権代理や表見代理にも共通していきます。

 以上のことは、問研第8問(旧司平成2年第1問)で学んだことですし、本番でもこの問題の答案例をイメージしてました。


(2) 次に、Dは事後的な代理権の消滅について規定した112条1項の表見代理が成立し、CからDに所有権が移転していると主張することが考えられる。

 問題文から、設問2(1)と違い、本問では信頼の対象が売却権限に代わっていることを読み取り、112条1項にたどり着きました。

 なお、わざわざ「事後的な代理権の消滅について規定した」と加えているのは、109条と112条の違いをハッキリと意識しておいた方がいいということを、問研第7問(旧司平成21年度第1問改題)から学んだからです。


ア まず、CはBに対し、本件委託契約において、乙の販売権限を与えているため、「他人に代理権を与えた」といえる。そして、本件売買契約の時点で、Bは販売権限を失っているものの、一度は本件委託契約の契約書を示して、販売権限を有していることをBが示しているのであり、それを信頼したのだから、Dは「代理権の消滅の事実を知らなかった」。
 また、本件委託契約書の提示から、本件売買契約の間は1週間という短期間の間隔しか空いていないのであり、この間に代理権の消滅の事実があったことを知ることは困難であるから、Dには「過失」も認められない。

 ここが僕の答案で最大の失敗ポイントです。
 112条1項を直接適用して検討してしまいました。

 また、当時は表見代理の要件事実的な構造がどうなっているのか知らなかったため、適当に条文に当てはめるだけのまとまりのない構造になっています。

 設問2(2)については要件事実をもう少し意識して書けていたら、もっとまとまりが生まれてよい答案になっていたかなと思います。


イ 以上より、Dには112条1項の表見代理が成立し、Cから乙の所有権が移転する。
2 よって、Dの上記請求は認められる。
                                    以上

 結論部分です。
 意識していることは設問2(1)と変わりません。



 以上が令和5年度予備試験民法で僕が考えていたことです。

 僕の答案が問研のつぎはぎによってできていることが伝わりましたでしょうか。
 冒頭で述べた通り、いつも僕が言っている民法対策は問研に尽きるという意味が分かっていただければ幸いです。


 このnoteを投稿した時点では予備論文まで残り約1週間となっています。
 皆さんが最大限実力を発揮できること、そしてあわよくばこのnoteが本番役立つことを願っております。
 ラストスパート頑張れ!!!!!!!!!


--2024.11.21
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