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#30ピッチングメカニクスと固定観念
こんにちは!
ベースボールプレーヤーMOTOです。
まずは軽く自己紹介…
普段は恵比寿でパーソナルジムSTRENGTH&STRETCHというジムの代表と、TOKYOMETSというチームで現役として野球をしながら主に投手向けの情報発信を各種SNSでおこなっています。
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「ベースボールプレーヤーMOTO」
さて、2022年が始まってから早いもので1週間が経過しました。私にとって昨年2021年は硬式野球に復帰して1年間を通して最後まで苦戦したシーズンとなりました。
かなり歯痒いシーズンでしたがそれと同時に改めて考え直す良い時間になったなと感じています。
さて、そんな中でここ1年間でピッチングについて考えが変わった部分と、より確信が深まった部分がありますので今回はその内容を伝えていきます。
私と同じように投手として伸び悩んでいる人にとって、またそうでない人も参考になる内容かと思いますので是非最後まで読んでいただけると嬉しいです。
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ピッチングを向上させる2つの軸
さて、過去にもいくつかのSNSを通して発信していますが、ピッチングを向上させたいと考える時「より速い球を投げる」「より強い球を投げる」にフォーカスする場合は以下2つの軸があります。
❶ピッチングメカニクスの向上
➡︎動作の改善
❷フィジカルの向上
➡︎筋力、瞬発力、柔軟性、連動性の向上など
投げる方向に向かって身体をどう動かせば効率よくエネルギーを伝えるか、その身体の動作を行うためには身体のどの部分を強化するのか、常に考えて取り組むべきです。
この内容は当然のように思う方も多いでしょうが、この部分を深く理解せず目的が曖昧な練習やトレーニングに取り組んでる選手が多いです。
さて、偉そうに言っている私自身も2021シーズンは「分かっているつもり」のまま不甲斐ないシーズンを過ごしました。
2021年は軟式球から硬式球に変わったことにより、春先までキャッチボールですらボールが抜けたり引っ掛けたりする状態が続きました。ただこれは想定内でありじきに慣れると確信して焦らずに取り組んでいました。
そして8月の都市対抗予選
大事な初戦の先発を任されました。
その日のピッチングは凄惨たるもので、3回2/3を投げ6失点…都市対抗予選は1年に1度のチームにとっての大事な大会にも関わらず戦犯となってしまいました。
硬式転向して1年目で結果が残せるほど、自分の実力はありませんでした。
昨年問題だったのはこの後のアプローチ法です。大事な大会での大失敗により私は大いに焦りました。
ピッチングメカニクスの見直しとフィジカルの強化、両方が足りないと痛感して大きくフォームを変えることとハードなトレーニングによる身体の強化に取り組み始めます。(トレーニング内容に関しては今のところ大きな問題はないと判断しています)
ここで行った事は「ダルビッシュ有選手」のフォームがメカニクスとして欲しいと強く感じ、その動作を取り入れるための取り組みをしました。
ここでの致命的なミスは頭が硬くなりすぎたことです。「頭を整理して考えた事だから正しい」と信じ込み、「自分の身体にあったメカニズム」を度外視してしまいました。
その後も強豪チームのハナマウイに滅多打ちにあったり(3回12失点)、他のクラブチーム相手の時にも思うようなボールが投げられませんでした。まともにストライクが取れなくなってました。今まで積み上げてきた自信は崩れ去り、投げる事に恐怖感も覚え始めました。
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究極の投球フォームという幻想
あなたに質問です。
「究極に正しい投球フォーム」
というのは存在するでしょうか?
答えは恐らく「否」です。
もし、そんなものがあるなら150km/h以上を投げるような選手は皆同じ感じのフォームとなるはずです。
MLBの試合は見たことあるでしょうか?
色んなタイプの投手がさまざまなフォームで投げています。MLBの場合はそれでも平均球速が150km/hです。
ピッチングとは簡単に言えば、身体という道具を使って、いかにしてボールにエネルギーを伝えられるかどうかです。
一人一人、身長や手足の長さや筋力や柔軟性や得意な動作パターンなどが違う中で同じフォームなどあり得ないはずです。
ですが、日本人らしさかもしれませんが多くの選手が「究極に正しいフォーム」というものを心の中で求めているように感じます。
私の出した結論、そんなものありません。
ただし、共通事項として
✅立つ姿勢をしっかりと決めること
✅パワーポジションの形成と軸足を傾けること
✅踏み込んだ脚の膝が着地後前に出ない事
などがあるに過ぎません。
そして、それらの目的はあくまで
「よりボールに力を伝達するためであり」
フォームがプロの選手に似ていたとしても
「力が伝達していない」なら意味がないのです。
私がダルビッシュ選手の動作を取り入れようとした事は「形を真似すること」が目的となってしまい、自分の身体に合わず「再現性の低い」「ボールにエネルギーの伝わりづらい」形となっていました。
こういうことを「手段の目的化」といいます。
これは他の例だと身体を大きくすれば球が速くなると考えウエイトトレーニングを始め、「ボディビルダー」のような身体を目指してしまうことに似ています。
※ベースとなる筋量は大事なためこれが上手くハマるパターンもあるかと思います
先日、前沢力さんとの合同トレーニングで
「立野君は左手は前に出した方が合うと思うよ」
というアドバイスを受けました。
ダルビッシュ選手のフォームを習得しようとしていたため、夏の失敗以降ずっと手を3塁方向に出していたため「え?」と思いましたが試してみたところ、リズムが凄くしっくりきました。
考えてみれば私は本来「ホップ系のストレート」と「フォークボール」が武器の投手です。フォームとしては横回転か縦回転かで分ければ明らかに縦回転が得意なタイプのはずでした。横回転のフォームに向いているであろう、3塁側に手を出すことは私本来のフォームの特徴とは相反するものです。
先程、「身体という道具を使っていかにしてボールにエネルギーを伝えられるかどうか」と書きましたが、もっと極端な例え話をすると
あなたの前にボールが1つ置きTにセットされています。
そこにバット、テニスラケット、卓球のラケットのいずれかが置いてあるとします。
さて、このボールをより遠くに飛ばしたい時の打ち方は同じでしょうか?
もちろん、違いますよね。
道具が違ければ使い方が違うように、一人一人の身体が違うわけですから使い方は違います。与えられた道具が違うわけですから、ボールにエネルギーを伝達する方法も一人一人違うわけです。
(似た体格であれば似たようなフォームが合う可能性は大いにあります)
自分の身体に何が備わっているのか、どんな特性なのかを深く向き合い、どんなフォームが合うのか、また課題があるなら何が問題なのかを見極めるべきです。
「左手を前に出す」ようにしただけで、ストライクがまともに取れなくなるほど崩れていた投球フォームの感覚とリズムが戻ってきました。
とはいえ、それが12月の話だったのでまだ投球が本当に良くなったのかどうか、試合で現れるのはこれからです。
今回のブログで伝えたかったことは「投球フォームの形はもっと自由な発想で良い」ということです。
ただし、ややこしいですが投球フォームについての理論を否定する話ではありません。
例えば私が繰り返し発信してきている「45度フルダウン」「踏込脚のブレーキの重要性」「テイクバックのタイプ」「並進運動のタイプ」などは実際に多くの選手を分析してきた結果ですし、物理学的な話してあるため、ある程度の共通となる正解は存在するでしょう。
今回問題だったのは「自分の身体の特性を考えずに1つの型にはめようとしたこと」です。
振り返ってダルビッシュ選手のフォームを完コピしようとした時のフォームを見ると、並進運動で充分な推進力が生み出せず、さらに踏込脚の膝も割れやすい形となっていました。自分に合わない動作を取り入れた弊害で、さまざまなデメリットがあることを身をもって体験しました。
こういうエラー動作を「代償動作」といいます。
代償動作には筋力の不足や、誤ったトレーニングによる動作パターンを身につけてしまった場合などに多く見られます。
さらに今回学んだことは「自分の特性に合わないフォームに取り組んだ場合も起こる」ということです。
フォームの問題点を見つけた時に、その部分だけに目を向けると沼にハマりやすいです。大抵の場合は問題点の前のシーンのフォームがそもそも悪かったり(立つシーンの時点でバランスがおかしいなど)、身体の材料が足りなかったりすること(筋力や柔軟性の不足)が多いです。ここまでが私の以前までの解釈でした。
ここに加えて、果たして目指している動作そのものが"自分の身体に合っているのか"という問いかけが必要と学びました。
そして身体に合っているのに出来ないならそれは何故か、技術不足なら練習すべきですし、筋力や柔軟性が足りないのであればトレーニングやストレッチに取り組むべきですし、材料が足りているのに出来ないのであれば動きを近づけたトレーニングが必要かもしれません。
ピッチングとは非常に奥深いものです。
プロ野球選手ですらイップスになることがあるくらい繊細ですし、世界最高峰のMLBの舞台ですら制球を崩して降板する選手もいます。
そして、ピッチングとは面白いものです。
よりボールにエネルギーを伝えるためにどうすればいいのかを考え、課題を見つけ克服していくことで進化します。手の位置ひとつで大きく動作が変わります。
練習は嘘をつかないって言葉があるけど、頭を使って練習しないと普通に嘘つくよ。(ダルビッシュ有)
あなたは「究極のフォーム」という幻想に囚われてはいないでしょうか?
考え方はある意味シンプルです。
自分の身体を使ってボールによりエネルギーを伝えるためにはどうしたらいいだろうか?
今回の記事が誰か1人でも何かのきっかけになれば嬉しいです。
今後もYouTubeでも上達のヒントとなるであろう内容を発信していきます!
では、また!
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