チョコレートとソーテルヌを合わせる話
図らずもバレンタインが近いということで、ソーテルヌのマリアージュ記事第2弾、『チョコレートとソーテルヌを合わせる話』をお送りいたします。
牡蠣とソーテルヌを合わせる話はこちら
はじまり
ワインのマリアージュにおける基本ルールのひとつに、「同じ要素を持つもの同士を合わせる」というものがある。
例えば、
バターを使った料理にはオイリーな雰囲気のあるワインと合わせる。
浜焼きには塩味を感じるお酒を合わせる。
という感じだ。
ソーテルヌに関しても、「デザートやチョコレートと相性が良い」と記されているのをよく見てきた。
が、今まで、ベストマッチ!と言える組み合わせに出会ったことがない。
デザート全般とすると範囲が広すぎ、私の手と胃に余るので、今回はチョコレートとのマリアージュを試すことにしました。
メンバー紹介
チョコ代表
チョコレートを粒売り(バラ売り)しておりなおかつ自分の生息圏内にあるお店、レオニダスでいくつか目星をつけて買ってきたのがこちら。
ソーテルヌ代表
本日ご登場いただくのはこちらの御二方。
せっかくなのでフレッシュさんと熟成さんに登場してもらい飲み比べることにしました。
ちなみにモノにもよりますが、個人的には10年よりも若いものはフレッシュなソーテルヌに属するかなぁというイメージです。(ハーフボトルは熟成が早いので、10年ものだとそこそこ熟成が進んでいる場合もあります。ただ、格付けシャトー(※)のソーテルヌだと、10年過ぎていても全然若いな…ということもあったり。一概に言えないのがワインの難しいところです。)
(※詳細は割愛しますが、ソーテルヌには格付けシャトー(造り手)が造るもの、ざっくり言うと「ブランド品」みたいなモノがあります。今回勝ったフレッシュさんは格付けナシ、熟成さんは格付けシャトーのものです。)
色々長くなりましたが、まずはそれぞれテイスティング。
フレッシュ代表
半年に1回くらい行く大型ワインショップで購入。流石に2018ヴィンテージは若すぎるだろうなあ~~とは思いつつ、前回買ったカントグリルを買いに遠出する気にはなれなかった。
これはホワイトチョコに合いそうかな。
熟成代表
流石に格付けシャトーとはいえ、ネットでヴィンテージを調べても、ちょっと終わってる(飲み頃を過ぎている)感が否めず不安。
思いのほかソーテルヌを超越していて驚いた。
これはフレッシュとは逆にホワイトチョコは合わない気がするなあ。ビターチョコ系だろうか?
長くなったがここからが本番だ!
まずはプレーンなものと合わせてみます。この四角い形状のものをナポリタンと言うらしい。
まずは「ソーテルヌに合わせるなら」とよく紹介される王道ホワイトをあわせてみて、それ以外と比較してみようと思います。
ホワイト
フレッシュ代表(以下、「若」と表記):◎
美味しい。合う。相乗効果。
同じパックに入っていたオレンジの香りが若干移っているのか、オレンジみがあり、その柑橘のニュアンスがホワイトチョコとベストマッチ。喧嘩しない。これは◎
熟成代表(以下、「熟」と表記):×
想定通り、熟成したものは味わいが強すぎて、ホワイトチョコには合わない。「まずくなる」わけではないが、チョコの味が無くなるので合わせる意味がないかな…と。
ミルク
甘さ控えめでスパイシーな雰囲気がある。
若:×
チョコレートの味わいが強く、ソーテルヌがいなくなる。ミルクチョコだとやはり厳しいか。
熟:◎◎
チョコレートのミルク分というか油脂分がよりコク深く感じられる。良い。同じパックに入ってたからかオレンジっぽいフレーバーがついておりそれがなお良い。
ダーク
苦味しっかり、でも上品。余韻長い。
若:×
ミルクに同じ。ソーテルヌは消える。
熟:△
ダークチョコレートの渋みが強調される感じで、ややえぐみが残る。
ここまでくるとソーテルヌではなくバニュルスのほうが良いのかも。
(※バニュルス…簡単に説明すると、発酵途中のワインにアルコールを加えて途中で発酵を止めた甘口のワイン。チョコレートのマリアージュといえばたいていバニュルスが紹介されます。実験するには定番すぎるため今回は試していません。)
オレンジ
ダークチョコ+オレンジ
若:×
ミルク&ダークに同じ。チョコの味が強く消される。
熟:○
オレンジとワインがマッチ。ダークでもオレンジの風味が付いていればいけるか。でもビターな後口は強調されてしまう気が。
ここまでのまとめ
若:ホワイト◎/それ以外は×
熟:ホワイト×/ミルク◎/ダーク△/オレンジ(ダーク)○
プラリネ系チョコレートと合わせる
ちなみにプラリネとは
味はナポリタン(さっきの四角いやつ)と比較すると結構甘い。そして当たり前だけどナッツ感が強い。
中のプラリネの個性が強かったのか、3種類であまり大きな違いがなかったのでざっくりと紹介します。
若
ホワイトチョコ:×
プラリネ(ナッツ)のえぐみが強調される。香ばしすぎるというか、煙い。ミルク:×
同上。合わない。ビター:×
以外にもビターのほうが悪くない。が、チョコにワインが負ける。
熟
ホワイト:○
問題なし。バッチリ、までは行かないがケンカはしない。ミルク:○
普通。ほぼ同上。ミルクのほうがマイルドに感じるビター:○
問題なし。この3種類だとビターが一番美味しい。チョコの甘味を流しつつ、ビターの余韻とお酒の酸味が良い塩梅。
ただ、比べれば良いというだけで、突出して相性が良いという感じはない。
ここまでのまとめ2
プラリネに若いソーテルヌは合わない。
次はガナッシュ系だッ!
次はガナッシュを使用したダークチョコレートのコンビ。
ダークチョコレートがゲシュタルト崩壊しそうです。
ちなみにガナッシュとは
ハート型のダークチョコ
ダークチョコレートガナッシュ+ダークチョコレート。
コーヒーっぽさのあるビター感。後に酸味がくる。これは熟成ソーテルヌと合いそうだ。
若:○
ダークの中ではいちばん良い。今回選んだソーテルヌには酸味があまりないので、チョコレートの方に酸味があることによってバランスが取れているのかも。
熟:×
後口が酸味×酸味になってしまい、かなり酸っぱく感じる。ワインの熟成感が強調されてしまい、個人的にはダメ。これは予想外。
長方形のダークチョコ
カカオ72%ガナッシュ+ダークチョコレート。
こっちのほうが甘さ控えめでかなりビター。酸味はない。でもクリーミーな雰囲気もある。粉っぽいが滑らかというか…矛盾している…
これは熟成ソーテルヌでしょ!(フラグ)
若:×
チョコに若干のクリーミーさ(バニラ感)が加わるがチョコに全てを持っていかれる。
熟:?
なんだか不思議な味だ…
チョコとワインがぶつかって混沌となっている。パレットの上で絵の具を混ぜた結果、なんだかよくわからない色を生み出してしまった感じだ。失敗なのか成功なのかもわからない…
トリュフもガナッシュ系です
ガナッシュをチョコレートでコーティングし、その上から粉糖やココアパウダーをまぶしたものがトリュフだそうです。(Wikipedia様より)
レギュラー
正式には、ビターとミルクのガナッシュクリームを使用したトリュフ。
美味しい。ほんのりキャラメル感。甘い。ガナッシュがふわふわ軽い。
若:△
うーーーーーん。良くも悪くもない。ココアとちょっぴりケンカする。後口
はソーテルヌのバニラ。
熟:○
後口にココアの渋みを感じる点が気になるが、バランスは良い。ワインの酸味とトリュフの甘さが合わさり、ソーテルヌが飲みやすくなっている。
もしかすると、甘さの落ちてきた熟成ソーテルヌは、甘さ控えめだと合いづらいのかもしれない。
ダークトリュフ
正式にはカカオ分72%のガナッシュを使用したトリュフ。
甘さ控えめのココア。レギュラーと同様、外側パリっと中ふんわり。
若:×
ビターは合わない。後口にビターチョコの苦味が強調され、最後には口の中にソーテルヌのバニラだけが残される。
熟:△
ダークはたぶん合わないだろうなあ…と思ったけれど、以外とそうでもない。酸味はけっこう強くなるが、後を引かず、口の中で一緒にスッと消えるので悪くはない。ただ、酸味が苦手な人はダメ。
ここまでのまとめ3
フレッシュソーテルヌは酸味のあるチョコレートならいける?
熟成ソーテルヌは甘さ控えめチョコレートと相性が悪そう。
最後はフィリング入りチョコで締めたいと思います
お店で商品を選んでいたら急にお客さんが入って来てしまい、早く決めなくては!と焦って買ったのですが、両方ともダークチョコだったと記事にしてから気づきました。
(飲んでるときは酒が入っていたためあまり疑問に思わなかった)
キャラメル入りビターチョコ
思ったより甘くない。外側がビターだからかもしれない。
(※自分の原稿メモ書きがだんだん小学生並みになってきて笑える。)
若:△
キャラメルとの相性は悪くない。外側がビターチョコだからか、後口にちょっとギシギシする渋みが残るのが気になる。ミルクチョコだったらもう少し相性が良かったかも。
熟:○
ビターチョコのギシギシ感は若干あるものの、マリアージュとしては悪くない。
塩キャラメル入りビターチョコ
ちょっとキャラメルにフレーバーが入っているように感じる(こなみ)。
若:△
キャラメルフレーバーがワインの風味と似通っているからか、中身(キャラメル部分)だけだったら合う。ただ外側がビターチョコなので総合するとイマイチ。
熟:◎
バッチリ。美味しい。ちょっとアタック(口に入れたときの味わいの感じ)が強いけど、後口がスッキリ消えていくのが良い。
まとめ
フレッシュなソーテルヌには…
やっぱりホワイトチョコレート
(オレンジのフレーバーがあるとなお良し)甘さ控えめ、酸味ありのチョコレートとは相性が良さそう?
ナッツのフレーバーが強いものとは相性が良くない。
キャラメルとは相性が良い(もはやチョコレートではない)。
熟成したソーテルヌには…
ミルクチョコレートと相性が良い
(オレンジのフレーバーがあるとなお良し)。甘みがあればダークチョコレートも悪くはない。ただしホワイトなど味わいの軽いチョコレートは、ワインの味が勝ってしまう。
甘さが控えめなチョコとの相性はいまいち。
冒頭でマリアージュの基本として「同じ要素を持つもの同士を合わせる」と書きましたが、これはフレッシュソーテルヌ&ホワイトチョコの組み合わせに当たるのかなと思います。
それ以外の良かった組み合わせについては、もう一つ、マリアージュの基本である「足りない要素を補完する組み合わせ」が成り立っていたのかなと。
今回のフレッシュソーテルヌはワイン単体だと酸味が足りないため、酸味のあるチョコレートを足すと合う。
逆に、熟成ソーテルヌは酸味はあるが甘みが足りないので、甘みの強いチョコレートが合うと。
元々、「同じ要素を持つもの同士を合わせる」のが成り立つのか調べるための実験だったのですが、意図せず「足りない要素を補完する組み合わせ」が成り立っていることもわかり、マリアージュは本当に奥が深いぜ…と改めて思いました。
ということで、現場からは以上です。
(これ、果たして参考になるレベルなんだろうか?)
編集後記
とても長い。これでも削ったんだがそれでも長い。
甘いものは好きなんですが、さすがにこれだけのチョコレートを買って実験すると食べたい欲が減衰したため、チョコは翌日以降にスタッフ(自分ひとり)が美味しくいただきました。
途中で見出しレベルが足りなくなって読みづらくなってしまった感が否めない。h4以下の見出しもください、noteさん…。
あとこれはダイマですが、レオニダスのチョコは1個何円!ではなく、重さで金額が決まる量り売りスタイル。粒売りスタイルのチョコ屋ではコスパが良くおススメです。
※バラで大量買いするときは繁忙期を避けてくださいね。
レオニダス
https://www.leonidas-alex.jp/
※残念ながら僕にお金は一銭も入りません。