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やはり人生は神ゲーなのだ


 先日、夕暮れ時に近所のスーパーへ向かう途中、財布の中身が心許ないことに気づいた。月末、まさに「生活費のHPが残り1ケタ」みたいな状況だった。そんな時に限って、スーパーでは特売品の行列、レジ前の子どものぐずり、買い物カゴをぶつけてくる謎の猛者(おばあちゃん)など、まるで隠しステージのトラップがてんこ盛り。正直、「もう勘弁してくれ」とうんざりするシーンだったが、ふと考えてみれば、こういう予測不能なイベントが人生の妙味なのかもしれない。難易度高めのクエストがあるからこそ、クリアした時の達成感は格別なのだ。そして何より、この困難な「クエスト」を終えた後、自宅の台所で安く手に入れた食材を使って腕を振るう時、心に浮かんだのは「人生はやっぱり神ゲーなのだと思う」という一言だった。

【第1章:人生は神ゲーである】

 結論から言えば、人生は驚くほどよくできた「神ゲー」だ。ゲーム業界では「神ゲー」とは、完成度が高く、何度でも遊びたくなる作品を指す。人生という名のゲームは、グラフィック(景色や人間関係)、BGM(街角で聞こえる音楽や鳥のさえずり)、アップデート(技術革新や新しい学び)、すべてリアルタイムで変化し、刺激を絶やさない。もちろん、バグも不具合も多いし、いきなり高難易度ダンジョンに放り込まれるような理不尽さもある。でも、その予測不能な展開こそが、このゲームの深みを作り出している。むしろ、理不尽さがあるからこそ、我々は戦略を練り、創造性を発揮し、時に笑う。人生という「神ゲー」は、想定外の要素をふんだんに盛り込み、プレイヤーに飽きる暇を与えない。

【第2章:制限があるからこそ人は成長できる】

 例えば、人気RPGシリーズでも、最初は弱い武器と限られたアイテムからスタートする。多くのゲームでは「最初から最強装備」なんてことはあり得ず、プレイヤーは地道に経験値を稼ぎ、少しずつ前に進む。人生でも同じだ。人は生まれながらにして無制限のリソースを持たない。時間は有限、お金も有限、体力も気力も無限ではない。こうした制限があるから、我々は工夫する。もし制約がなければ努力や工夫は生まれないだろう。
 スーパーで小銭を握りしめて特売品を狙う私のような状況もまた、限られたリソース内で最大効果を出すための「成長イベント」なのかもしれない。そこには現実的な算段や、他人とのやりとりによる交渉、そしてときに妥協や斬新な発想が必要となる。こうした制限こそが、我々の成長要素なのだ。

【第3章:科学が示すチャレンジと幸福の関係】

 心理学者ミハイ・チクセントミハイによる「フロー理論」によれば、人は自分のスキルと課題の難易度が程よく釣り合うとき、深い没頭状態(フロー)に入り、強い充実感を得る。この「チャレンジとスキルのバランス」は、ゲームデザインでも重視される要素だ。難易度が高すぎれば挫折し、低すぎれば退屈する。人生という「神ゲー」は、不思議とこのバランスをとる仕組みがある。もちろん、現実はゲームほど公平ではないし、外部要因も多い。しかし、人が快感を得るメカニズムは、ある程度のチャレンジが必要であることを科学は示している。
 また、ポジティブ心理学の分野では、人は適度な困難を乗り越えた後に幸福度が上昇するといわれる。つまり、人生が「神ゲー」である理由には、我々が苦労を経て得る満足感がしっかりと組み込まれているからだと言える。

【第4章:小さな達成を経験値として積み上げる】

 ゲームの醍醐味は、経験値を積み重ね、少しずつキャラクターが強くなっていくプロセスだ。現実世界でも同じことが起きている。たとえば、朝、いつもより5分早く起きられたとか、少し重たいバッグを持って帰る筋力がついたとか、プレゼンで上手くジョークを挟めたとか、日々の暮らしには小さな「レベルアップイベント」が潜んでいる。
 これらの小さな成功は、ゲーム内での経験値に相当する。「なんだ、こんな些細なこと」と思うかもしれないが、脳科学的には、達成感はドーパミンの分泌を促し、やる気を維持する原動力となる。こうして「また頑張ろう」と思える持続可能なモチベーションが生まれる。地味なクエストの繰り返しが、実は大きなボス戦に備えるための下地づくりになっているのだ。

【第5章:ユーモアによる自己攻略は最強の戦略】

 最後に、人生という神ゲーの攻略法として「ユーモア」を提案したい。ユーモアは、困難なシチュエーションでも軽やかな視点を与え、脳に柔軟性をもたらす。笑いはストレスホルモンを低下させ、心身の健康を促進することが研究でも示されている。それはまるで裏技コマンドのようなものだ。
 冗談めかして考えると、スーパーでの特売争奪戦も、オンライン対戦のラグのようなものかもしれないし、理不尽な出来事は「隠しボス」に挑むイベントかもしれない。いかに苦い経験もユーモアというフィルターを通せば、攻略本には載っていない独自の戦略が生み出せる。そうやって我々は、厳しい現実をゲームと捉え、笑いながら進行する。そう、人生は神ゲーなのだから。

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