洋服の海をサバイブする
かきわけてもかきわけても洋服だらけのこの世の中がわたしはとても愛おしい。
洋服はわたしにとって戦闘服でガチガチの鎧であり、リラックスする為の物ではない。小心者でダサすぎる心のうちが見えないように、弱い個体である自分が明日も明後日も生き延びられるように、そういう観点で全てのアイテムを選んで身につけている。
今回はわたしの洋服感(こんな言葉ある?)について存分に書いてみようと思う。
寿命が尽きるまでこの海を泳ぎ切るには、優秀な相棒が不可欠だ。その相棒たちの選び方と付き合い方について。
一番大事だと思っているのは、『わたしを際立たせる洋服を着る』ということだ。服には主役の座を与えない、わたしのフォローをしてくれる右腕的な存在としての服を探す。派手な色や柄ももちろん好んで着る。でも他者に与える印象は、“派手な服を着てる人”じゃなくて“じゃじゃ馬を乗りこなすカウボーイ”でありたいのだ。
次に大切にしていることは、不本意な洋服には一銭も支払わないということ。元来のネチネチした性格も相まって、執拗にわたしにとっての満点に近い洋服を探す。ああ!この出会いを待ってたよ!と思えるまで、さながら大企業の採用担当のごとくお祈りメールを出しまくる。黒ブラウス様の、サイドゴアブーツ様の、派手ニット様の、今後のご活躍をお祈り申し上げております。富豪ではないので金額ももちろん重要なのだが、体感では95点くらいまでの物を見つけるまで諦めない。骨の折れる作業ではあるが、荒波を乗り越える仲間を探すのに手間を惜しむことはできない。
そうして無事仲間に加わった洋服たちのご機嫌は頻繁にとるようにしている。レザー製品にはブラシをかけオイルを塗り込み、シワのついた洋服はスチームアイロンで伸ばし、首元のリブが伸びないようにそっと脱ぎ着し、脱いだ洋服を点検しほつれを直しボタンをつけ直し、必要があれば染み抜きをして一着ずつネットに入れて洗濯をし、しっかり形を整えてから直射日光の当たらないところに干す。一年でも長く、一回でも多く戦で敵をけちらしてもらうために。相棒とは末永くいい関係でいたいから、このあたりに関しては奴隷の如く振る舞う。
しかしながら、どれだけ懸命にご機嫌をとっても洋服の方が先に寿命がきてしまう。いつだって見送るのはわたし。サイズが合わなくなる、色褪せる、今のわたしにしっくり来なくなる、流行が過ぎ去る等々、理由はそれぞれだがいつかは別離の日が来るのだ。旅行用や焼肉用や普段着に降格して、部屋着にできる素材のものは部屋着にして、そうしてどうしようもなく傷んだものから手放していく。わたしは物に対する執着がとても強くてなかなか捨てられないのだが、たくさん着た洋服は心からありがとうと思って気持ちよく手放せる気がしている。
カッコつけたけど、もう着ないなってうすうす思っているが見ないフリをしてる物もたくさんあるんだよね実は。やっと涼しくなったので、これを期に2Sを心掛けたいなと思っているがおそらく今回もまた失敗するだろう。無限に広がるウォークインクローゼットが欲しい。
そんなことをつらつら書き留めながら、息をするようにZOZOTOWNを開き洋服の海を周遊する。今冬に出会えるといいなと思っているのは、蛍光カラーのゆったりしたニットと足首が綺麗に見えるミドルブーツだ。今夜もハートマークの嵐。