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カフェ書体にみるミニマリズムのトレンド

アートディレクターの市川です。
前回は、欧文書体の歴史についてまとめてみました。

今回は身近にあるもののトレンドから、最近のカフェって、敢えて情緒を排したようなプレーンでフラットな印象があるなと思っていて、カフェの書体にミニマリズムのトレンドがきている気がしたので、カフェのロゴタイプをまとめてみようと思います。

見出しの写真は、サードウェーブコーヒーの火付け役と言われるスタンプタウン・コーヒー・ロースターズがある ポートランドのエースホテルです。ホテルのラウンジとカフェが繋がっていて、営業時間内ならホテルのラウンジでくつろぎながらコーヒーが楽しめます。日本でも京都に今年オープンしたエースホテル内に出店しているようですね。こちらはどちらかというと少し情緒がある印象ですが、ぜひ行ってみたい♪


コーヒー文化の伝来

カフェ書体のトレンドをまとめるにあたって、まずはコーヒーの伝来について調べてみたいと思います。伝来についてはコーヒー豆がその国へ輸入された年や一般に広まった時期などいろいろ定義づけられそうですが、今回はその国に「カフェ」という社交の場が出来た年を、「コーヒー文化の伝来」として定義していきます。合わせてその国に現存する伝統的なカフェの看板やお店の雰囲気を比較していくことで、歴史によるトレンドの変化をみていきたいと思います。

・1554年頃 トルコのコンスタンティノープルに世界最初のコーヒーハウスが開店
(参考写真:18~19世紀のトルコのコーヒーハウス)

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・1645年 ベネチアで最初のコーヒーハウスが開店
・1689年 パリに最初の純フランス風カフェ「カフェ・ド・プロコープ」が開店https://www.procope.com/ja/
・1697年 ボストンでコーヒーハウス「グリーンドラゴン」が営業開始
・1720年 ベネチアに現存する世界最古のカフェ「フローリアン」開店
https://www.caffeflorian.com/en
・1864年 横浜の外国人居留地の西洋人を対象としたコーヒー・ハウスが開店
・1911年 銀座で日本初のカフェとされるカフェー・プランタンが開業
・20世紀初頭 中国雲南省にフランス宣教師が初めてコーヒーノキを持ち込む。
・1980年 日本でドトールコーヒーショップのチェーン1号店が開業
・1960年〜2000年 アメリカでスターバックスに代表される「シアトル系」のコーヒーチェーンが人気を博し、セカンドウェーブが起こる
・1990年〜現在 作り手が見える豆を求めるブルーボトルコーヒー などの「サードウェーブ」が流行
2018年 中国のラッキンコーヒーが北京に1号店をオープン。6,912店(2020年5月12日時点)

時系列と地域によるカフェ文化の4象限

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コーヒーについて、カフェ文化を時系列と地域で4象限にまとめると上記のようになります。大きな流れでは左下のトルコから始まり〜イタリア〜フランス〜アメリカ〜日本・中国といった流れで広まっていったそうです。

トルコのコンスタンティノープルで世界最初のコーヒーハウスが開店することで花開いたカフェ文化がイタリア・フランスに渡り、社交の場の「文化」として成熟していきます。現存するヨーロッパのカフェ書体が両方とも趣のあるフォーマルなスクリプト書体ということもイメージに合っていて妙に納得しました。

日本に最初にできたカフェ「カフェー・プランタン」は(フランス語: Café Printemps)という名からもサロン形式の店としてできたヨーロッパからのカフェ文化の影響を受けた「純喫茶」文化のはじまりとされています。

カフェ文化がコーヒーハウスとしてアメリカに渡り、大量に消費されるようになってから、アメリカでインスタントコーヒーの大量生産(ファーストウェーブ)が始まります。そしてその反動として起こったセカンドウェーブ〜サードウェーブの流れは世界的に流行しているトレンドであり、日本・中国においても例外なくスターバックスに代表されるようなセカンドウェーブ〜サードウェーブのスタイルのカフェを目にすることが多くなっているように感じます。

SNS時代におけるロゴタイプの「サンセリフ化」

現代のカフェチェーンのロゴタイプは、イタリア・フランスの歴史あるカフェにのようなスクリプト体やローマン体(セリフ体)は少なく、スターバックス、ブルーボトルコーヒーのような「サンセリフ化」が進んでいるようです。
これはカフェに限ったことではなく、企業のシンボルロゴやハイブランドにおいてもセリフ体→「サンセリフ化」が顕著になっているようです。

logo-before-after_tateのコピー

考えられるひとつの理由としては、スマートフォンで情報に触れる機会が圧倒的に多くなり、ロゴタイプをSNS上の画面でも視認できることを意識し、変更していっているそうです。画面上での伝達のスピードを考えると、情緒を排し記号化していくデザインの流れとして「ミニマリズム化」は必然の結果とも言えます。

このトレンドは一時的なものでなく、情報の通信速度に比例して、これからますます加速化していくであろうと思います。ミニマリズム化の先にある、表現幅の少ない中での戦い。タイポグラフィに限らずこれからのトレンドを見据えた上で、次の流れをつかんでいけたらと思います。

最後まで読んでいただきありがとうございます。
次もひきつづき欧文書体について調べながらまとめてみたいと思います。

以下に今回の投稿で参照したウェブサイト、書籍を紹介します。


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