神様に決めてもらった、日本行き。/Cheng Chien Hsiang
#01 INTERVIEW グラフィックデザイナー/Cheng Chien Hsiang(通称:SAM)
―はじめに―
こんにちは。はじめまして。
GRAND DESIGN TOKYOでADしています
(ニックネームで失礼します)YOと申します。
好きなこと、趣味は旅行です。
海外・国内に限らず、「世界って広い!」と誰しもが旅行で感じる、驚きと感動の『出会い』。それと同じように、誰かと話して、その人が辿ってきた過去や価値観を知ったときに感じる驚きと発見の『出会い』はそれにとても似ています。
どんな夢を持ってる?どんな子供だった?
たわいもない話から、もうちょっと踏み込んだところまで。
そんな話しながら浮き上がってくる、彼らの人間性と個性、価値観。
その感動や発見との『出会い』を1人でも多くの人に共有したい、それがこの記事を書こうと思ったきっかけと、目指すところです。
そしてもう1つ、その『出会い』が誰かの助けになること。
未だに終息の兆しが見えない新型コロナウィルス。
今年、私たちの生活は一変しました。今までの常識や生活形式はもちろん、
仕事のスタイルまでも。そしてこの影響によって多くの企業が経営に苦しみ、
倒産や職を失う事態に発展し、今なおその問題は深刻化しています。
そんな中で仕事を失わずに働かせてもらっていることについて、本当にありがたく、幸福なことだと日々感じています。
でもそれは他人事ではなく、明日は我が身にも起こり得る話。
感謝で済ませるだけでなく、いま世の中が陥っているこの現状から突破できる方法を1人1人が模索すべき時だと、私は考えています。(何だかちょっと話が大きくなってしまいましたが・・)
この記事は、身の回りの方々のご紹介をすることがメインの企画です。
ただそれだけ。でもそれがいつか誰かと誰かの『出会い』になって、そしていつしか誰かの助けになること。それを目標に続けていこうと思っています。
これがその小さな一歩になりますように。
未熟なこんな新米記者ですが、模索しながら企画を続けていきます。
今後とも暖かく見守って頂けたら幸いです。どうぞよろしくおねがいします。
台湾出身、グラフィックデザイナー Cheng Chien Hsiang(通称:SAM)
我々の会社には、台湾出身のSAMさんと、ほか2名の中国出身のスタッフがいる。これは普通のデザイン会社とは少し違ってるところかなと思う。今回ピックアップさせて頂くのはそのSAMさんだ。
静かで、清潔で、穏やか。
そんな言葉が似合う、SAMさん。
社内では席が遠いこともあり、普段あまり喋らない。
きっと自宅の部屋はとっても清潔でキレイなんだろうな。
というかこの人は、怒ったり、わめいたりするんだろうか?
そんなイメージだった彼。
白いシャツがとってもよく似合う彼は、肌が白い。その透明感のせいで、ちょっとお人形っぽくも見える。
けど話してみると、実はよく喋るし、明るい。そしてとってもロマンチスト。そんなSAMさんの一面が見えた。
一体何を思い日本へ来て、日々何に苦悩を感じ、そして今後をどう考えているか。それはいわゆる社会人3年目の悩みだったり、台湾人ならではの苦悩もあった。どちらかというといつもは寡黙な彼が、このインタビューでは自身のことをたくさん話してくれた。
日本行きは、“神様”に決めてもらった。
――まず、台湾から日本へきた経緯を聞いてもいいでしょうか。
S:子供の頃から絵を描くことが好きだったこともあり、いつの頃からか美術に関する道を志していました。大学でプロダクトデザインを専攻し、そしてさらなる勉強のため、留学を決意しました。
――もともとはプロダクトデザイナー志望だったんですね。
はい。ですが両親には猛反対されていました。そんなもの仕事ないだろうって(笑)。でもそれを押し切り、日本へきました。でも実はその時、もう1つの候補の国があって…日本かイギリスと迷っていました。その決断をなかなか決められなかったので、家族で占いに行って、そこで神様に決めてもらいました。
――えっ!占い!?
S:はい。台湾人にとって占い文化は、日本の占いのイメージとはかなり違っていて、とても生活に密接しているものです。とても盛んで、観光客にも人気ですよ。だから家族で占いに行くことは台湾人にとっては日常的なこと。ただし、台湾人でそれを信じる度合いは、人によってそれぞれ差があるけど…僕は50%くらいかな。そして実のところ、僕がいま、全く牛肉食べないのは、そこで助言されたせい(笑)。
――それ、けっこう信じてますね(笑)。その決断に後悔したことはない?
S:後悔はありません。もちろん、日本へきたばかりの頃は辛いこともあったけど。だからこそ、グラフィックデザインの道が開けたし、いまの会社の仲間にも出会えた。今の僕があると思ってます。
写真はsamさんが占いをした場所のイメージ。(お寺で占いをされるそう)
もともとはプロダクトデザイナー志望だった。
――日本へプロダクトデザインを勉強しにきたけど、グラフィックデザインに志望変更したのはどうして?
S:日本にきて、いろんなものを見ました。目に入るもの、美しいものがとても多かった。その中でもグラフィックデザインが、特に衝撃的だったからです。
プロダクトじゃなくて、やっぱりグラフィックがやりたい、と強く思いました。
――なるほど、その中で特に心に響いたグラフィックデザインはどのようなものでしたか?
S:日本はかっこいいグラフィックがたくさんあありましたが、なかでも特に原研哉さんの作品でした。繊細なのにどこか力強くて、美しい。もちろん今でも大好きです。
言葉と文化の壁は、今でも感じてる。
――新卒でグランドデザインに入社したのですよね。
S:はい。今年で3年目です。1年目の頃はソフトの使い方もままならなくて、何をしても時間がかかってとても辛かった記憶があります。
――1年目はやはり大変ですよね。そのなかで一番つらかったことはなんですか?
S:カンプ制作です。時間をかけてもかけても、なかなか仕上がらなくて(苦笑)でも丁寧に先輩が教えてくれて、徐々に出来るようになりました。
あと、今でも辛いことは“コミュニケーション”です。
僕は台湾人なので、日本人独特の良い回しや空気感を読むことが難しい。
あとは僕の日本語力。伝えようとしてることが、伝わらない。
この前もありましたね。
撮影中のことでしたが、小さなトラブルが起こった際に、その解決方法について僕は懸命にクライアントに説明しました。けど相手には理解してもらず『?』な反応が返ってきた。見かねて先輩が同じ説明をすると『なるほど!』とクライアントは即納得。僕も同じことを伝えてるはずなのに、伝わらない悔しさ。
その時はとても悲しかった。
――そうでしたか…撮影で少し焦ってしまったことも理由でしょうか。
S:それもありますが、仕事でしゃべるとき、僕大体焦ってるかも(笑)
『待たせちゃいけない』って気持ちで話すので、言葉が抜けてたりしますね。ちゃんと伝わるように、もっと落ち着いて話せるようになること、
これはずっと自分への課題だと思ってます。
――うーん。日本人じゃなくても、、。というか私も同じ課題を持っています(笑)ただその『待たせちゃいけない』という気持ち、それってSAMさんの気遣いの現れのはずなのに、それが逆効果というのが悲しいですね。
S:伝わらないだけじゃなくて、仕事が出来ない人に見える。
とってもマイナスポイントだと思うから、これを改善することは僕のしばらくの目標です。
――日本人とは違う視点のお話が聞けました。
辛い話をさせてすみません。でも、仕事で楽しいと思えることもありますよね?
S:はい。進行中はすごく辛いですけど、やっぱり、全て納品してそれが仕上がったとき、一番うれしいです。ああ、頑張ってよかったなと思えます。
いつかは地元・台湾に貢献できる人に。
――今後の目標や夢はありますか?
S:今は日本で働いていますが、やっぱり僕は台湾人だから、最終的には生まれ育った国と人々に貢献したいと思っています。例えば向こうで個人事務所を持って、デザインの力で台湾を盛り上げていくこと。それは1つの目標です。今後、この日本で学べらるものをできる限り吸収していって、視野や可能性を広げていきたい。そのうえで僕が出来る方法を考えていきたいと思っています。
――素敵ですね。頑張ってください。今後のSAMさんのご活躍が楽しみです。ありがとうございました!
Cheng Chien Hsiang(通称:SAM) PROFILE
出身 : 台湾高雄/1989年生まれ/A型/好きな映画 : ONE DAY(本当に好き!何度も見てます)/好きな音楽 : JAZZ R&B/日本にきて驚いたこと : 泥酔した人々が外で寝ていること!日本人、飲み過ぎです(笑)。/もし寿命が決められるとしたら :90歳くらいまで生きたい。おじいちゃんになってもデザインの仕事していたいな。
話してみて、やっぱり優しかったSAMさん。地元、台湾のため、誰かのためにいつか何かしたいと、そう言う彼の顔はいつもとは違って見えた。きっと将来、彼にしかできないこと、デザインにできることがある。それはもう彼のなかにあるかもしれないし、違う何かかもしれない。模索しながら、彼はその人生を旅してくんだろうな、と思った。近くて遠い、台湾という国からきた彼は、これからもこの日本に抗い、いつしか乗り越えたときにまた新たな彼の目標が出てくるんだろう。それが楽しみだし、それを楽しんでほしい。
社内スタッフ編、台湾出身のグラフィックデザイナーSAMさんでした。
次回は写真家、森本洋輔さんです。
ありがとうございました。
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