組織エンゲージメント向上に向けて
これまでは三条市における各種施策について記事を更新してきたところですが、今回は行政内部の組織作りについて書いていきたいと思います。
昨今、市町村レベルでも職員の中途退職が話題になっています。
この背景として、職員が直面する課題の不確実性と専門性が高まる中、個々の職員の能力に依存した課題解決が限界に達している現状があると思います。
加えて、労働市場の流動性が高まり、能力の高い人材にはほかのキャリアの選択肢が拡大する中で、能力向上や、やりがいを見いだせないことや、ワークライフバランスを満たせず、家庭を維持することも難しくなった事態が生じているという背景もあります。
問題は、そういった職場の環境改善や行政ニーズの多様化・複雑化への対応策(デジタルへの投資など)を怠ってきたことや、生産性の向上を行ってこなかったことが結果として、そのツケが若手行政官の退職増加に繋がっていることだと思います。
そもそもですが、「良い行政サービス」を作るためには、その前提として、「良い組織作り」が必要です。
少子高齢化・東京集中の影響で、将来的な行政運営が困難になる中、三条市民への行政サービスの提供を維持するためにも、人材確保は必須であり、基本精神は職員の心身の健康と自己成長を通じたエンゲージメントの向上がマストです。
ちなみにですが、副市長としての基本精神としては、、、
副市長としてやりたいことは、職場で過ごす時間が課員一人一人にとって豊かな時間にすること(仕事は成長の機会なので、楽しく)
わからないこと、できないことは恥ずかしいことではない。お互いにフォロー、補完しあえるチームが理想。加点主義へ
バリューを生み出さない仕事はほどほどに
政策形成は「繰り返しゲーム」。自分のブランドが高まれば、相手の行動も変わる
「専門性」と「人間性」の双方を大切に。どちらも成長できる課内環境を目指す
です。
なお、就任した際に、「行政の組織強化と政策形成は両輪」と題して、にいがた経済新聞様に取材をしていただきましたので、こちらも御参考までに。
https://www.niikei.jp/778979/
記事のとおり、「よい組織」であることが「よい行政サービス」を提供する、これは車の両輪であると言えます。
そのような認識のもと、三条市では昨年からエンゲージメント調査を導入しております。
そもそもエンゲージメントとは・・・
「ワーク・エンゲイジメントは、仕事に関連するポジティブで充実した心理状態であり、活力、熱意、没頭によって特徴づけられる。特定の対象、出来事、個人、行動などに向けられた一時的な状態ではなく、仕事に向けられた持続的かつ全般的な感情と認知である」(「新版ワーク・エンゲイジメント*3」より抜粋)と定義されております。
AgileHRエンゲージメントが注目される背景とエンゲージメントの定義 |
エンゲージメントとは、組織への満足度と置き換えてもいいかもしれませんね。
三条市議会でもこのエンゲージメント向上に関する答弁をしておりますので、以下に参考までに記載しておきます。
----------
(参考)議会答弁の抜粋
令和 5年 第 4回定例会(第4号 6月21日)
今後の三条市のまちづくりを考える上では様々な視点があるところではございます。それは三条市役所という組織で働く職員一人一人の方々の心身の健康とか、エンゲージメントの向上といったものがあって初めて実現されるわけでございまして、そういった意味では政策形成とこういった組織改革ということは両輪で進めていく必要があるかなと思っています。
私が副市長として職員に求めることは、やはり目の前の仕事の先に誰がいるかを常に考えるということだと思っています。それは当然三条市で暮らす市民の方々なわけですけれども、最近は行政全体の絶対数も少なくなってくる、公務員の数も少なくなってくるという中で、やはり目の前の業務に忙殺される職員がいたりといったことの課題とか、組織のある程度の高齢化に伴う組織の硬直化というところが起きてきているわけです。せっかく三条市役所で三条市民のために誇りを持って働いている三条市の方々なわけですから、彼らの職場で過ごす時間を少しでも豊かにするということが私の副市長としての責務であると考えております。とはいえ私は業務改革の専門家でも組織改革の専門家でも何でもありませんので、職員の方々に寄り添いながら本プロジェクトを進めていきたいと思っております。
----------
国全体でも人的資本経営の動きが加速してきておりますが、日本全体としてみても、人的資本経営の重要性に対する認識はまだまだ薄いと感じます。
(人材の獲得、育成、定着等に関する知見に乏しく、それらを体系的に習得、実践する人的、金銭的な余裕もないが現状かと。。。)
人的資本経営に関する重要性は私も十分に認識をしているので、その一環で
三条市では今年度から、eスポーツをフックにした職員交流を開催しております。
趣旨としては、新人職員同士の交流促進を通じた同期の繋がりをより強固なものにするという福利厚生の一環で、「ぷよぷよ」を活用した大会(もちろん定時後)になります。
部署が異なり普段から交流がない職員同士の交流や会話が生まれることで、職員間の心理的安全性が高まり、組織全体の活性化へ繋がったなと実感をしております。
上記は一例ですが、このように三条市役所でも滝沢市長や幹部職員含め組織のエンゲージメント向上に向けて各種施策を打ち出しているところ、今回は若手係長級とのワークショップを実施しました。
若手係長の人数が多いので、4人1グループに分けて、週に1階ぐらいのペースで進めたいと思ってます。
第1回から、係長達からは積極的に意見交換を発表を行ってくれました。
以下はその概要です。
------
1.「やりがい」について
○感謝の気持ち
・人の役に立つこと、人の助けになっていると感じること
・周囲からの感謝(市民、職員問わず、特に災害対応)
・大切なことは感謝の気持ちを言語化すること、日々の業務推進の中ではなかなか他者への感謝やポジティブな声がけはできていないと感じる
→どうすれば、議会や市民・事業者から行政が信頼・感謝され、(細かいクレームを恐れながら何重ものチェックや根回しをすることなく)、挑戦に邁進することができるようになるか?(副市長)
→人が能力を最大限に発揮できるのは、自分の仕事に対して、意義ややりがいを見いだして、それに打ち込める環境があってこそ(副市長)
○難易度高い課題を見出し、チームで力を合わせて自分達にしかできないアウトプットを作ること
・具体的に詰めた上で、課室の意思決定に貢献できた
・課の意思決定をスムーズに進めることができた
○社会課題解決に貢献
・地域経済の関係者を巻き込めたという実感を得れたとき
・支援した事業者や地域が活性化されたとき
2.係長としてやらなければならないこと
○部下の育成について
・部下自身で考えさせるためにも、「少しの手助け」を意識している
・メンバーがアイディア出しを行える環境を整える
・部下に対する指導の方法を日々模索している
(データで送られるとどこか修正されたかがわかりにくいということや、係長としての想いも伝わりにくいため、一旦紙で打ち出して赤ペンを入れて修正している)
・そもそも育成を部下に押しつけているのではないか。部下が将来的にどうなりたいのかを把握できていなかった
→どうすれば、部下が自分の問題意識がある領域の仕組みづくり・浸透・成果実現まで一気通貫でやり遂げることができるようになるか?(副市長)
→どうすれば、部下が単なる「労働力」ではなく「価値の源泉・資源」や「大切な仲間」ととらえられより付加価値の高い仕事に注力できるようになるか?(副市長)
○マネジメントについて
・TODOリストの作成。課内会議とは別に係会議も実施している。
・メンバーの意思表示や能力を把握
・適切な声がけが必要
・係としてのディレクション(方向性)を定める
・課長、補佐との良好な関係を作らないと部下がやりづらくなってしまう
・課長や補佐との無駄なラリーを避けることが必要
→どうすれば、上司と部下が分断せず、課の方針が1人1人に浸透し個人の「やりたい」と、組織の「やらねば」のすり合わせ・腹落ちができるようになるか?(副市長)
○係長としての役割を確立させること
・主任から係長になると業務量が1.5倍ぐらいになるとともに、部下の相談や案件処理も見なければならないので、ある程度の余裕、余白を保っておくことが必要だと感じる
・余白を生じさせるために業務の総量規制をかけている
・ミスなく案件を処理すること
・仕事を前に進めること
・無駄な調整をなくすこと(同時に課長、補佐に報連相)
3.2が実現された日にはどんな1日を過ごしているのか
・とくかく周りの感謝。課長、補佐には承認してくれてありがとう!部下にはやってくれてありがとう!
・より新たなアイディアが出てくる
・休暇、リフレッシュの時間に充てることが必要
→休むために働いているのか、仕事をするために休んでいるのか。日本人はまだまだ「休み方改革」の意識が薄いよう感じる。(副市長)
などなど、2時間では収まりきれない盛りだくさんの内容でした。
役所は一般任用職員と係長の力量によるところが大きいと思いますし、係長におかれては、今後、管理職へと育っていく優秀な方々ばかりです。
そんな係長の皆さんが自分たちが描くキャリアに対して、どんな形で自己実現ができるのか、それを捉えて組織としてどう対応していくべきなのかを引き続き考えていきたいと思いますので、読者の皆様の忌憚のないご意見などを是非お聞かせください!