韓国語版『クリスマス幽霊事件』購入レポート
以前に『清里幽霊事件』『スキー場幽霊事件』コミックスが中国語翻訳されて刊行されたものを入手した記事を書きました。
この時に購入代行というものを初めて利用し、大変スムースに本を購入して記事を用意しました。我ながらびっくりです。一応中国語はDuolingo英語版の方でその時に登録されている分のカリキュラムは終えていたので初歩的なところはかじっていて、台湾で使われている繁体字には馴染みが少なかったものの、戦前の日本でも使われている字が多く、ある程度推測もできたのが大きかったです。自分の乏しい知識とGoogle翻訳やDeepLを駆使して、解らないことが多いものの何とかぎりぎりいけたという感じでした。
しかし、小説の韓国語版についてはそうもいきません。
まず韓国語は学習していなかったのでハングルが全く読めません。一応『韓国語のかたち』を読んでハングルがどんな文字であるかをぼんやり頭に入れても、後はGoogle翻訳とDeepLでいけるという状態にはさすがになりません。正直諦めかけていたのですが、書影チェックのために見ていた古本販売サイトで『販売中』であることに気付いた直後、韓国での本の購入代行をしてもらえる会社を探していました。
本当はもう少し韓国語を勉強してから購入する予定だったのですが、売ってるサービスがひとつしか発見できず、先に買われてしまったら永久に手に入らない可能性があります。解らなくても買うしかないと思いました。
そして韓国の購入代行会社さんを見つけて、何とか本を購入してもらうことができました。
数日後、ありがたいことに本が到着しました。さすがに台湾版コミックスのように「両方ゲットできたあああ!!」という幸運まではありませんでしたが、無事に『크리스마스 유령사건(クリスマス幽霊事件)』が到着しました。『크리스마스』がクリスマス、『유령』が幽霊、『사건』が事件のようです。
こう書いていると「あれ? 韓国語初心者くらいの知識はあるのか?」と誤解されそうですが、現時点で館山の韓国語の知識は『韓国語のかたち』を読んだ後にちょっとプラスしたレベルです。しかももちろん「読んだだけ」なのであまり内容を習得していません。
まずタイトルが直訳の可能性があると期待して、DeepLで『クリスマス幽霊事件』のタイトルを翻訳して、それを検索してみて画像をチェック。そして韓国語版の表紙が引っかかったところで情報を確認したのが最初です。『軽井沢幽霊事件』を最初に検索しなかったのは偶然ですが、これは本当に幸運でした。(後述します)
そこで風見潤先生のペンネームのハングル表記も知り、もう少し検索の幅が広がりました。ただしもちろんこの時点でもハングルは読めません。韓国のオンライン書店で風見先生のペンネーム『가자미 준』や『크리스마스 유령사건』で検索していくうちに『軽井沢幽霊事件』の韓国語版のタイトルも判明しました。
『청평 유령사건』──漢字表記に直すと『清平幽霊事件』になるようです。これを見た時に「えっ、軽井沢って韓国語で清平っていうの?」と今にして思えば相当間抜けな感想を抱きました。でもこの時点では韓国語の知識も韓国の知識もほぼなく、そうではないと把握することができませんでした。
ちなみに清平というのは韓国の京畿道加平郡にある地域のようです。カタカナではチョンピョン。山間の観光、別荘地でもあるようです。元の舞台が軽井沢である話を変更するのにちょうどいい場所のようです。この時点でチョンピョンのことを調べていたら「内容についてもローカライズされているのでは?」ともっと早く思い立っていたはずですが、この時には「ワタシのDeepLの使い間違い? でも韓国では軽井沢のことを清平と言うのかもしれないし……」とそれ以前のところで苦悶していました。
そして数日して待望の本が届きます。
크리스마스 유령사건
知識がほぼないままのワタシの手許に韓国語版『クリスマス幽霊事件』が見た時のワタシの感想はひとつ。
「でけえっすけどっ!?」
そうなのです。ティーンズハートが文庫だったことを考えるととんでもない大きさの代物が届いたのです。横15.4✕縦22.4センチ。ちなみに本の四六判が12.7✕18.8センチ、A5サイズが横14.8cm✕縦21センチ、B5サイズが18.2cm×25.7センチです。大体A5とB5の間のサイズです。
ハードカバーではありません。ソフトカバーです。紙質はあまりよくないです。でも、表紙にもティーンズハートの丸めた正方形のような小さなロゴ、裏表紙には大きく横長のロゴが入っています。どうやら公式にティーンズハートの本を出しているレーベルのようです。
ページをめくっていきます。
奥付は巻末ではなく冒頭にあります。それ自体は洋書とかでもそうなので問題ではありません。ワタシが驚いたのは冒頭のキャラ紹介ページです。
『クリスマス幽霊事件』はシリーズの主人公である水谷麻衣子がメインの話ではなく、麻衣子の弟である孝夫が主人公の話で、麻衣子達いつもの面々は後で謎解きをしてくれる番外編的なストーリーです。
もちろん全く読めませんし、検索をかけるにもハングルを入力しないといけません。でも読めもしない言語のキーボードを入れても持て余すだけなのは間違いないので、オンラインのサービスを使いました。こちらです。ハングルのそれぞれのパーツを必死で追いかけて、一文字ずつ入れていく作業です。
そしてハングルで書かれている名前を何とか入力して読んでみたところ、やっと「……名前がローカライズされているのでは?」と気付いたのです。
全く伏線がなかった訳じゃないんです。ブログをGoogle翻訳した時にもキャラの名前がどうも韓国名っぽいなとは思っていたのです。でも何かワタシが処理を間違えたなどの理由でちゃんと読めていない可能性もあるので、この時点では「そうかも?」とふんわり思っていただけだったのです。
水谷孝夫 강정훈(カン・ジョンフン)
日下百合子 차보라(チャ・ボラ)
水谷麻衣子 강선영(カン・ソンヨン)
中田美奈子 김경아(キム・ギョンア)
日下千尋 차범진(チャ・パンジン)
人口の多い方のリストを見ると、水谷姉弟の苗字に割り当てられている강は「姜」。日下兄妹の苗字に割り当てられている차は「車」。中田美奈子の苗字に割り当てられているのは김は「金」。韓国で最も多い苗字です。
参考サイトはこちらです。
韓国では漢字表記がある人とない人がいるらしいので(日本でもひらがなやカタカナの名前の人がいるのと同じですね)、ファーストネームがどう表記されるかは全く解りません。
折り返しにあらすじが書かれていました。誤字などあったらごめんなさい。(ハングルの入力時点でミスは割とありそうです)
裏表紙にもあらすじ的なものが書かれています。
……多分合ってるのではないでしょうか。
とりあえず本文をがっつり読めるところまでいくにはかなり大変そうなので、本文テキストについては書けませんが、重箱の隅的な部分でも人によっては参考になると思うので、そちらを書きたいと思います。
まず、出版社の和平寺(화평사)について。
https://namu.wiki/w/%ED%99%94%ED%8F%89%EC%82%AC
ここで謎が解けました。この和平寺から出ていたティーンズハートの翻訳本は固有名詞が全て韓国名に変更されていたのです。そしてそれとセットで『軽井沢幽霊事件』の翻訳が『清平幽霊事件』となっていた謎も解けました。レーベル名が신세대 X문고(新世代X文庫)というのもここで知ることができました。(読めてなかったので、Xが入ってるからX文庫関係なんだろうなーくらいでスルーしてました)
そして『清里幽靈事件』『滑雪場幽靈事件』の時と同じく、巻末広告についても書きます。ティーンズハートの本を刊行しているレーベルだけあって、広告は全てティーンズハートの翻訳作品ばかりです。さすがにこちらはハングル表記を書いていると疲れ果ててしまうので日本語タイトルの方のみページ順に書きます。
表紙イラストの修正がある本はカッコ書きでその詳細を書いています。
(上下二段)
小林深雪『ハッピー・バースデイ』
小林深雪『ファースト・キス・コレクション』
小林深雪『16才♡子供じゃないの』(反転)
小林深雪『ボーイフレンドをつくろう!!』
小林深雪『失恋なんてこわくない』(反転)
風見潤『軽井沢幽霊事件』
折原みと『2100年の人魚姫』(反転)
若林真紀『ふたりの恋を許してください』(表紙イラスト修正?)
(ここから1ページ1作品)
林葉直子『キスだけじゃイヤ』上
林葉直子『キスだけじゃイヤ』下
小林深雪『プレゼント』
小林深雪『あなたを忘れる魔法があれば』
風見潤『クリスマス幽霊事件』
青山えりか『男のコにはわからない』
折原みと『真夜中を駆けぬける』
花井愛子『恋曜日』
小林深雪『17才♡奥様は高校生』
小林深雪『わたしに魔法が使えたら』
半分くらいが小林深雪作品で埋まっています。びっくりしました。小林先生一強状態です。
表紙の修正が入っている本の「反転」は左右反転して使われているものですが、ひとつだけある「表紙イラスト修正?」についての説明をします。
こちらのイラストは糸井美和先生のイラストが日本語版では使われているのですが、韓国語版のイラストが修正されているのです。もしかしたら別のイラストレーターさんの絵に差し替えになっているのかもと思い、画像を検証してみたところ、どうも眼、眉毛、リボンを後から修正しているようです。
それ以外の箇所は全てちゃんと重なるのですが、特に眼が違います。糸井美和先生の絵は瞳孔の中心にハイライトが入るのが特徴なのですが、ハイライトの位置、大きさが違っています。上にあった折原みと先生の『2100年の人魚姫』のイラストよりハイライトが大きいです。
「えー、この修正やるんだ……」と途方に暮れました。
そして、慌てて本文イラストも確認することにしました。
桂くに子先生の描かれたマップのイラストが全部カットされていて、一枚オリジナルの図が挿入されているのは、韓国を舞台とするためのローカライズの都合上仕方ないだろうとは思うのですが、納得いかない修正がひとつありました。
今回のヒロインの一人でもあるチャ・ボラ(日下百合子)の髪の毛だけが妙に黒いのです。最初は印刷が悪いのかなとも思ったのですが、百合子の髪だけがベタやトーンの重ね貼りなどで黒くなっています。
あと、絵ではありませんが、前回もチェックした英語で書かれたタイトル、作者などについてのテキストを確認。
タイトルは「CHRISTMAS YUUREI JIKEN」こちらは日本語のタイトル通りです。風見先生の名前は「KAZAMI JUN」とあります。苗字が先になってますね。そしてかやま先生の名前が「KAYA MAYUMI」とあります。かやま先生の表記はひらがなだと切ってないですが、BLなどの漢字表記だと加山弓で、昔のウェブサイトのURLらしきアドレスにも「~yumix」という箇所があり、実際には「かやま・ゆみ」と切るのだろうと思われます。
『청평 유령사건』が入手できた時には、こちらのタイトルがどうなっているのか気になりつつ、今回の記事を締めくくろうと思います。
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