【祇園舞妓小菊シリーズ】リスト
大人の女性探偵が多い山村美紗作品の中で唯一の少女探偵のシリーズです。内容の確認は初出の本ではなく、手に入りやすかった文庫版で行っていますが、発売日は初出の本のデータを掲載しています。文庫版に収録されている解説などの情報も付記しています。
祇園の売れっ子舞妓、小菊が探偵役となっている祇園舞妓小菊シリーズは全部で六冊刊行されています。ただ、それ以外にもキャサリンシリーズ二作目、1978年12月25日刊行の『百人一首殺人事件』に小菊という舞妓が登場しています。出身地その他で設定的に別人になっているのですが、キャラ立て的には共通点も感じられ、大きなベースとなったと考えています。
なのでリストには『百人一首殺人事件』も記しておきます。
百人一首殺人事件
キャサリンシリーズ第二作。多分、今作に登場する小菊が、祇園舞妓小菊シリーズの原型となったのではないかと思っています。
光文社カッパ・ノベルズ
1978年12月25日刊行
備考
カッパ・ノベルズ版に中島河太郎の解説『女流本格派、紅焔を吐く』収録。文庫版にも中島河太郎の同じ内容を含んだ解説(タイトルなし)が収録されているが、大幅加筆修正されている。
電子書籍版が光文社文庫から刊行。
都おどり殺人事件
祇園舞妓小菊シリーズ第一作。連作短編5作を収録。
新潮社
ハードカバー
1985年11月25日刊行
第一話 舞妓殺人事件 小説新潮1983年2月号
第二話 夏の密室殺人事件 小説新潮1983年10月号
第三話 京都おどり殺人事件 小説新潮1984年3月号
第四話 舞妓水揚げ殺人事件 小説新潮1985年2月号
第五話 浮舟殺人事件 小説新潮1985年6月号
備考
『舞妓殺人事件』時点で小菊は17歳。『夏の密室殺人事件』で東京出身と明記。『京都おどり殺人事件』時点で18歳。
文庫版には山村正夫の解説を収録。(昭和62年12月)
京舞妓殺人事件
角川書店
カドカワノベルズ
1986年04月25日刊行
備考
シリーズ初の長編。文庫版の解説収録なし。(新書版は未確認)
酒井法子版ドラマ『舞妓さんは名探偵!』二作目の原作。
京都花見小路殺人事件
新潮社
ハードカバー
1986年08月20日刊行
備考
ハードカバー版は解説、あとがきなし。文庫版は中島河太郎の解説を収録。(平成元年6月)
酒井法子版ドラマ『舞妓さんは名探偵!』一作目の原作。
京都東山殺人事件
ザテレビジョン 1986年07月18日号~1986年12月26号連載(全24回)
角川書店
カドカワノベルズ
1987年04月25日刊行
備考
作中で札幌に旅行に行くシーンあり。
文庫版には郷原宏の解説を収録。(新書判未確認)
酒井法子版ドラマ『舞妓さんは名探偵!』三作目の原作。
伊豆修善寺殺人事件
角川書店
カドカワノベルズ
1991年09月25日刊行
備考
序盤に小菊が「京都生まれの京都育ち」と書かれている。(今回だけなので多分設定揺れ)
修善寺への温泉旅行へ行く。
祇園舞妓小菊シリーズで2024年現在唯一電子書籍版が出ているので、こちらも別に貼っておきます。
京都西大路通り殺人事件
週刊読売 1995(平成7)年1月22日号~7月23日号連載
読売新聞社
新書判
1995年11月07日
備考
「出身は東京」「二十歳そこそこ」と書かれている。
文庫版には山村美紗死後に執筆された郷原宏の解説を収録。
祇園舞妓小菊シリーズ最終作。死亡前年に発売。
DS山村美紗サスペンス 舞妓小菊・記者キャサリン・葬儀屋石原明子 古都に舞う花三輪 京都殺人事件ファイル
山村美紗作品は実はかなりゲーム化されています。山村先生はゲーム好きで、ゲームのし過ぎで腱鞘炎になったこともあるくらいのガチ勢です。しかも生前にはご自身でシナリオも書かれているゲームが何作も販売されています。(小説原作のゲーム化だけではなく、オリジナルの『山村美紗サスペンス 京都鞍馬山荘殺人事件』も出ています。最初の3DO版ではテレビのサスペンスドラマそのままに実写が採用されています)
『DS山村美紗サスペンス 舞妓小菊・記者キャサリン・葬儀屋石原明子 古都に舞う花三輪 京都殺人事件ファイル』は祇園舞妓小菊シリーズ、キャサリンシリーズ、葬儀屋 石原明子シリーズの三本詰め合わせという構成になっています。
山村先生物故後に販売されたゲームで、山村先生のシナリオではありませんが、祇園舞妓小菊シリーズが初めてゲーム化した作品でもあります。
2008年6月5日
テクモ
対応機種 ニンテンドーDS
それぞれのシリーズに興味がある方がちょっと見てみようというのにいいんじゃないかとも思ったのですが、もう15年以上前のゲームなのでさすがにプレイしにくそうです。
舞妓さんは名探偵!
他にも祇園舞妓小菊シリーズはテレビドラマ化もされています。
『舞妓さんは名探偵!』というシリーズ名で二種類出ています。
ひとつは酒井法子主演、単発の2時間ドラマ3回のバージョン。もうひとつは酒井美紀主演、1時間ドラマ全9回のバージョンです。どちらもテレビ朝日で放映されています。
酒井法子版
山村美紗の密室ミステリー 京都花見小路殺人事件 舞妓さんは名探偵!
火曜スーパーワイド
1988年10月18日放映
京舞妓殺人事件 舞妓さんは名探偵II 祇園祭の夜、ニセブランド品が死を招く!
火曜スーパーワイド
1989年08月01日放映
山村美紗サスペンス 京都東山殺人事件 舞妓さんは名探偵
火曜ミステリー劇場
1990年04月24日放映
それぞれ一回目が『京都花見小路殺人事件』、二回目が『京舞妓殺人事件』、三回目が『京都東山殺人事件』のドラマ化のようです。
見ていないので改変パートはそこまで確認はできないのですが、三回目の『京都東山殺人事件』ドラマで男性社長の森宮を女性の水沢アキさんが演じているくらいしか違った部分を確認できませんでした。
酒井美紀版
舞妓さんは名探偵!
木曜ミステリー 20:00~20:54
1999年4月15日~1999年6月17日(全9回)
第1話 京都祇園連続殺人
第2話 茶の湯密室殺人事件
第3話 舞妓純愛殺人事件
第4話 京名菓殺人事件!!
第5話 女の斗い殺人事件
第6話 京都映画村大爆破!
第7話 殺人予告! 京友禅は見た!!
第8話 死の舞い! バラの刺の罠!!
最終話 衝撃の真実! 父娘涙の再会
6話までのあらすじがアーカイブに残っていたので、そちらのリンクを貼ります。
読んでみた感じでは祇園舞妓小菊シリーズのエピソードとちゃんと解るものはあまりなく、設定もかなりオリジナル要素が多い内容のようです。(原作のどこを使っているのかを確認するために、ちゃんと本は全て読んだ後にこの箇所を書いています)
さすがに第一話のあらすじを見た時には衝撃を受けました。小菊がまだ見ぬ父を探すために舞妓になる不遇のヒロイン、沢木の父が日本画家の重鎮で仲が悪いという『美味しんぼ』もどきの設定になっていたり、「原作付きドラマは原作改変してなんぼ」という時代を思い起こして懐かしい気分になりました。主人公と相手役の性格を大胆に変更した幽霊事件シリーズのコミカライズを読んだ時の衝撃どころではありません。(あちらは公式イラストレーターさんのキャラデザで、しかも大筋は同じです)
関西では視聴率がとてもよかったらしいのですが、この当時に山村作品を読んでドラマを見ていなくてよかったと心から思いました。
小菊にはモデルがいた?
『山村美紗の事件簿~エッセイ集~』に小菊のモデルについて書かれているエッセイが載っていました。モデルがいるという可能性について思い至っていなかったのですが、山村先生は「たまに」モデルありの登場人物を出したりしているようです。
『虚々実々(日本経済新聞1987年09月10日)』というエッセイの中に小菊について書かれています。
山村先生のグラビアが載っている雑誌をリアルタイムで見ている方は、もしかしたら「あ、あの舞妓さんか」と思い出せたりするのかもしれません。