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男女コンビ、カップル探偵問題

今回は割と雑談に近い話です。

カップル問題──少女探偵について書くに当たって、どうしても避けられないというか大変紛らわしい問題です。「男女カップルだろうが何だろうが、少女が探偵役だったらいいじゃん?」とお思いになるかもしれませんがところがどっこい(懐かしいフレーズなのでつい使ってみたくなりました)、これがまた大きな障壁になっていたりするのです。

今までの記事を一通りご覧の方は何となく想像がつくかもしれませんが、「女性はワトソン役や道化役で、探偵役は男性だった」パターンが結構あるのです。いや、女性側に推理能力、探偵スキルがないとまでは言いません。(そういう作品もありますが)女性側が単独で探偵役を務めているシリーズのあるキャラクターもいます。ただ「女子はアシスタント? 女性探偵、少女探偵が解決する作品が見たかったんだけど」というしょんぼり感はどうしてもある訳です。

もちろんカップル同士協力しあっての推理で真相に辿り着くのが好きな人にとって、どちらがメインの探偵役かはそれほど重要ではことではないかもしれません。女性側がほぼ何も推理の役に立たないということはさすがにあまりなく、鋭い感覚で真相に結びつく何かを見つけてきたりとか、ある程度は貢献していたりするものです。

あ、一応本題に入る前に「探偵ポジを自認する女子がほぼ何の解決もできない」話も紹介しておきます。(そういうタイプの話がお好きな方もいなくはないでしょう)

紙本では『お嬢様作家♥春菜の事件簿』、電書では『春菜の事件簿』とありますが、このうら若き女性作家である二条春菜は、敢えて言いますが推理には完膚なきまでに役に立ちません。高橋留美子先生の描く、とても可愛らしい春菜ですが、思い込みが激しく従弟の隼太に全ての苦労を背負わせ、全力で間違った推理を主張して驀進する行動力でその苦労を増量サービスするヒロインです。
これはこれで巻き込まれタイプのコメディが大好きな人にはプラス要素なのだろうと思いますが、少女探偵を期待した人は全員辞世の句を口にする羽目になるのでそこは期待しないでください。
もちろん探偵役はいつも春菜の面倒を見させられている気の毒な隼太です。

ただしこのシリーズ、トラベルミステリとしては大変良心的に作られているので、キャラが苦手でなくてトラベルミステリがお好きな方にはお勧めします。

ちなみに「探偵を自称するキャラが役立たずのミステリ」がお好きな人には、ちょっと入手は難しいのですが速星七生『ナナオの症候群―名探偵テームズ』をお勧めします。
テームズ、めちゃくちゃ探偵としてアピールしていて偉そうですが、全く役立たずで、かわいそうなワトソン(本来無関係だった医者)が解決するという話です。面白いです。

とりあえず、この後ご紹介する作品ではここまでヒロインが役立たずという訳ではありません。それなりに役に立ちます。ただ「彼女達はメインの探偵役ではない」のです。少女探偵に関する流れを確認している時に、これが地味にノイズになります。
古くはトミーとタペンスから、男女二人のコンビとして書かれている作品は高確率で男性側が探偵役です。

少女探偵を調べるに当たって絶対避けては通れない仁木悦子の登場する仁木兄妹シリーズもそうです。

辻真先先生のミステリデビュー作でもあり、作品の多くがトラベルミステリ要素の強いポテトとスーパーシリーズもそう。

男女コンビの探偵役というだけで「……今回も男性が探偵役かな」と思うレベルです。

パズルゲーム☆はいすくーるの、ミステリ研に所属する三輪香月と押上大地のコンビは、珍しく女性である香月の方が謎解きをすることが多く、もっといろいろそういうタイプのコンビがあるのかなと思っていたのですが、なかなかそういう作品は多くないようです。
ただし、コンビ扱いとなるので、女性サイドもかなり有能なキャラクターが多く、あからさまに足手まといというパターンはあまりないです。

こうして見るとパズルゲーム☆はいすくーるの独自性を強く感じます。

ただ、そんなにミステリに詳しい訳ではないので「男女コンビの探偵もので、女性メインの探偵役のシリーズといったらあれでしょ!」という作品を取りこぼしている可能性はかなりあります。ご存じの方はぜひ館山までご一報ください。

次回何の記事を書くかはいくつか候補があるので決めていませんが、とりあえず近々トラベルミステリでは決して避けては通れない「トラベル」の部分に焦点を当てた記事を書きたいと思います。

追記
こちらの記事でも書きましたが、幽霊事件シリーズの水谷麻衣子は自分の恋人である日下千尋、親友の中田美奈子の中でダントツに鋭い推理能力を発揮し、彼女の推理能力を頼りに事件解決を依頼されたりします。続きの『京都探偵局』のシリーズでは探偵事務所の所長となります。三輪香月と並んで「探偵能力が群を抜いていて、後に職業探偵となる」少女探偵ヒロインです。


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館山緑(granat)
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