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【前編】グラミン日本の休眠預金活用事業 小林理事に聞きました!

こんにちは!グラミン日本です。
 
今回はグラミン日本の事業の一つである「休眠預金活用事業」について前編・後編の2本立てでご紹介します。
 
本記事(前編)では、休眠預金活用事業の仕組みやグラミン日本の事業の特色、2021年度採択案件の実行団体の活動について、本事業の責任者である小林理事にインタビューした様子をお伝えします。
 


小林理事に聞いてみました!

今回お聞きしたのは、休眠預金活用事業の責任者である助成事業担当理事の小林さんです。まずは簡単にご経歴を教えてください。

2022年12月から理事として参画し、主に助成事業を担当しています。
略歴としては国際交流基金や日本財団などで助成事業設計を数十年行った後、現在は多摩大学 社会的投資研究所の客員教授兼主任研究員をしています。研究分野はソーシャルファイナンス(助成事業・インパクト投資など、社会的課題解決を目的とした資金調達手段)です。

小林理事は、グラミン日本理事長である百野さんの古くからのお知り合いであると伺いました。

実は、2022年の理事就任前からグラミン日本とは関わりがあり、グラミン日本が設立する前から理事長の百野さんとは知り合いです。
グラミン日本の立ち上げの頃から、日本におけるマイクロファイナンスの可能性やグラミン日本の事業モデルなどについて、百野さんと議論してきました。

1.休眠預金活用事業とは?


グラミン日本はJANPIA(一般財団法人 日本民間公益活動連携機構)が公募する「2023年度 通常枠 <第1回> 休眠預金等活用法に基づく資金分配団体」に選ばれています。
そもそも、休眠預金活用事業とはどのようなものか教えてください。

休眠預金とは10年以上取引のない預金のことをいいます。この使われていない預金を銀行が使うのではなく、社会的に活用しようということで休眠預金等活用法が制定されました。この法律に基づき、社会課題解決のため行われる事業を休眠預金活用事業といいます。
同法は国・地方公共団体が対応困難な社会課題の解決を図ることや民間公益活動の担い手の育成と民間公益活動に係る資金調達の環境整備も目的としています。休眠預金はNPOなど、民間公益活動を行う団体の活動を支援するために使われています。

国民が預けている預金を、預金者の利益に配慮しつつ国民生活の安定向上及び社会福祉の増進のために利用することで、国民に還元する仕組みなのですね。
では、どのような仕組みで、休眠預金が民間公益活動を行う団体(以下、実行団体)に分配されるのでしょうか?

法律に基づいて、休眠預金が銀行から預金保険機構へ、そしてJANPIAという指定活用団体に移管されます。その後、JANPIAは資金分配団体に助成し、資金分配団体はそれぞれ自分たちが取り組みたい社会課題を掲げて実行団体を募集し、適切な団体を選定した後、資金支援を行います。このようにして実行団体に休眠預金が分配されます。
 
資金分配団体は、実行団体の募集の他にも実行団体に対し様々な伴走支援を行います。そして、JANPIAはその資金分配団体を統括します。
下記に分かりやすい図を引用しました。

グラミン日本は2021年度・2023年度と「資金分配団体」に採択されており、実行団体の募集・伴走支援を行うのが仕事なのですね。よく分かりました。

2.資金分配団体としてのグラミン日本の特色は?


資金分配団体も複数ありますよね。その中でのグラミン日本の特色は何ですか?

JANPIAは「草の根活動支援事業・ソーシャルビジネス形成支援事業・イノベーション企画支援事業・災害支援事業」といった4つのカテゴリーを設けて運営しており、グラミン日本は「イノベーション企画支援事業」で応募し採択されました。イノベーション企画支援事業は、イノベーションを通じて社会の課題を解決していくプログラムを運営することが求められています。
 
グラミン日本はビジネス経験が豊富な多くのプロボノの参加によって広範なビジネスネットワークがある上、アクセンチュアやデロイトトーマツコンサルティング、SAPジャパンやMAIAなど多数の企業からご協力をいただいているため、企業のリソースやコネクションをふんだんに活用することができ、新しいイノベーションを打ち出していくことに向いていると考えられます。
 
今回の事業におけるソーシャル・イノベーションとしては、これまでソーシャルセクターがあまり手掛けてこなかったデジタル就労支援(RPAやSAPなどIT技術の活用による雇用の創出)、コレクティブインパクト(株式会社やソーシャルセクターNPOなど、複数の団体が協働することによってイノベーションを創出する)を打ち出しています。

グラミン日本には、イノベーションを通じて社会課題を解決することが期待されており、それに適した土壌があるということですね。

3.実行団体のスケジュール、活動内容、グラミン日本のサポートとは?


最後に、グラミン日本が分配した資金がどのように用いられているのか、つまり実行団体の活動がどのようなものなのかをお伺いします。
まずは2021年度採択の実行団体について教えてください。

「3年計画」で進めており、2022年の10月に実行団体を確定し、2025年の2月末までの3年間の事業を行います。

今回、4つある実行団体の全てが生活困窮リスクを抱えたシングルマザーに対して、デジタルスキル研修を提供します。これによってスキルを身につけ、就労・起業・副業などで所得を向上していただくことが目的です。
このように枠組み・目的は4つの実行団体で共通していますが、そのアプローチはそれぞれ異なり、どれも革新的です。

4つの実行団体のアプローチについて、それぞれお伺いできますか。
 

①   Animo Plus株式会社
同社は、大企業から様々な外部委託業務を受注し、その業務を、研修を受けたシングルマザーの方々に担っていただく事業を展開しています。現在、経理業務の外部委託がトレンドで、このような業務を委託されることが多いです。加えて、最近は総務・秘書業務が委託されることも増えました。
 
期間としては1プログラム当たり約半年です。現在、3期まで進んでおり、1期、2期は経理業務の受注、3期は総務や秘書業務の受注と、どんどんプログラムの領域を広げています。残りの期間もプログラムの領域を広げていくようです。
 
②NPO法人シングルマザーズシスターフッド
同法人は「セルフケア・デジタルスキル研修の学び・仕事」の3つを組み合わせたアプローチをしており、大変ユニークです。
具体的には半年間の「デジタルキャンプ」というプログラムを2回行うとのことです。それに加え、「デジタルキャンプ プチコース」というライトなものも用意しています。
人数としては、3年間で約80名を支援する予定です。セルフケアに重点を置いているため、就労というより、副業する方を対象としています。
 
③一般社団法人ハートフルファミリー
同法人は「555日チャレンジ」を企画しています。このプログラムは、555日(約1年半)にわたり徹底的に伴走支援をして、デジタルスキルを身に付けて就労・起業などをしていただくものです。
このプログラムは2回行うことを計画しており、3年間で100人以上の方々を支援する予定です。また、状況次第では期間を短めにした3回目以降を行うことも検討中です。
 
④ RE/MAX JAPAN
同社は世界最大級の不動産FCブランドであるRE/MAXの中の不動産ネットワークです。
オンライン上で技術や知識を学び、最終的に自立した不動産エージェントになってもらうというプログラムです。具体的には、3〜4か月間、オンラインでの働き方から宅建士資格取得レベルの不動産知識まで学びます。その後、宅建士資格を取得し、さらに不動産エージェントとして働くためのOJTを受けて自立していただくという内容です。

どの団体も、大変ユニークな支援方法ですね。グラミン日本が期待されている「イノベーション企画支援事業」の理念に合致すると感じました。

その通りです。世の中には女性向けのオンラインキャリアスクールが数多くありますが、我々は違うアプローチを取りたいと思います。
 
困難に直面している女性の方々に対して、自己肯定感を高めてキャリア深化をサポートし、成功モデルを提供するという側面、そして、企業に対し、彼女たちの能力を活用するモデルケースを示すという側面、この両側面から助成事業を展開するのが我々グラミン日本の目指すところです。これは、必ずイノベーションにつながるものであると思います。

おわりに

前編では、休眠預金活用事業の仕組み・内容について、グラミン日本の特徴とともにご説明しました。
 
後編では、事業に携わっていく中で小林理事が感じたことや、将来展望もお伺いします。
 
ぜひ後編もお読みください


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