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象の鳴き声をギターで再現:King Crimson 『Elephant Talk』
キング・クリムゾン(King Crimson)が好きだということは、あまり人には言わないことにしている。
それを言って話が楽しい展開になったためしがないからだ。
98%の人は「誰それ?」といった感じで、実際に何曲か聴いても「何がいいのかさっぱりわからない」という反応である。
残りの2%の人は狂信的にクリムゾンあるいはプログレが好きで、逆にその熱量がしんどい。
しかしたった一度だけ、言ってよかったと思ったことがあった。
美術大学で同級生だったTさんにそれを話したときのことである。
男性なのに「T君」ではなく「Tさん」と書いたのは、彼が大学受験で浪人をしていて、私より2歳年上だからだ。
大学時代の2歳の差というのは、ずいぶん大きく感じられる。
Tさんはデザインのセンスもデッサンの上手さも学年のナンバーワンで、私はいつも彼を憧れの目で見ていた。
そんなTさんが私がクリムゾンを好きだと知って、自分の部屋に招いてくれたのである。
知らなかった曲を教えてくれたり、アート系の作品を見せてくれたり、デザインについての話をしてくれたりしたので、私は大興奮した。
その後私は留年したが、Tさんは主席で卒業し、誰もがその名前を知っている大手広告代理店に就職した。
今日の1曲は、Tさんがそのときに教えてくれたものだ。
象の鳴き声を模した「パオーン」というギター、ちょっとキモいボーカル、スパっと気持ちのいい終わり方にも注目。
King Crimsonで『Elephant Talk』。