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XRグラス「MiRZA」ホームアプリデザイン制作振り返りインタビュー

株式会社NTTコノキューデバイスさんがリリースするXRグラス「MiRZA™(ミルザ)」のホームアプリデザインをGraffityが担当しました。3D空間での表現の難しさをどのように解決したのか、プロジェクトを進める上での工夫について両社で座談会形式でインタビューを実施。さらに、株式会社NTTコノキューデバイスさんから「MiRZA」への期待や今後の展望についてもお話していただきました。

インタビューイー:
株式会社NTTコノキューデバイス

小木曽 敦 様
西 立司 様
町田 和嘉子 様
Graffity株式会社
リードデザイナー / ディレクター 塚本 英成
ディレクター 河上 寿岐
3Dジェネラリスト 髙村 純一

人々の暮らしに寄り添うデバイスを目指して。XRグラス「MiRZA」の開発背景

株式会社NTTコノキューデバイスの小木曽様

——XRグラス「MiRZA」のポイントについてお聞かせください
小木曽さん:まずは重さが約125gと軽いところです。今までに出ているグラスデバイスはゴーグル型で重さも500gから600gくらいあり、かけ心地についても課題を感じる声をいただいていました。
ビジネスでXRグラスが業務改革に繋がるように、開発で大切に思っていることがあります。まずは「かけ心地」です。メガネのようにかけられて、長時間作業しても疲れない、かけ心地を追求しました。その次にデバイスの無線化と、グラスを透明な状態で使えるようにすることにこだわりました。現行のグラスはサングラスのようなスモークがかかったものが多く、視認性が悪いという声があがっていました。透明な状態でも使えるようにし、より3Dコンテンツに没入感を持って使いたいときにはサングラスのような状態に切り替えられるようにしました。

空間認識ができるデバイスで約125gという重さは、実際に体験した方からは驚かれます。さらに、実際にかけた感覚としてはより軽く感じられると思います。また、ハードウェアのデザインとして横から見たときのスリムさも特徴です。かけたときのビジュアルがスマートに見えるようにこだわりました。

——XRグラス「MiRZA」の開発背景についてお聞かせください

小木曽さん:私たち自身でXRグラスを開発することにした背景は、技術先行型のデバイスが世の中に多いなかで、一人ひとりの生活課題の解決に繋がるようなデバイスサービスを作りたいと思ったからです。 メガネ形状で、より日常でお使いいただきやすく、その人の暮らしを豊かにできるようなXRグラスの開発を目指しています。
ドコモグループとシャープグループを結集させて、より人々が手に取りやすく、生活の一部として寄り添うようなオリジナルデバイスの開発を決定しました。

Graffity森本:国内ではなかなかない取り組みだと思います。難易度が高いプロジェクトだったのではないでしょうか?

小木曽さん:そうですね。グローバル企業でもXR事業以外でも成功していて技術力や資金力を持っている企業が開発にあたり、苦労している分野だと理解しています。やはり国内企業として開発はやはり簡単なものではありませんでした。

Graffity森本:AWE USAで出されていたブースが非常に盛り上がっている印象がありました。そこで感じた手応えはどうでしたか?

小木曽さん:手応えは感じています。AWEのブースでは期間中を通して行列ができていたそうですし、体験した方々からは「こんなデバイスを持っていた!」など、感動の言葉をいただきました。

3Dデザインの知見を持つGraffityをソフトウェアのデザインパートナーに選定

——Graffityをデザインパートナーとして選定していただいた理由をお聞かせください
小木曽さん:私たちもこれまでにAndroidのアプリ開発業務に携わり、そのなかでいくつかのデザインベンダーさんとも連携がありました。そのなかで、XRや3Dデザインでの知見と経験が豊富なGraffityさんが候補にあがり、これまでの取引もあったのでデザインパートナーとして選定させていただきました。

Graffity塚本:今回のプロジェクトは日本でほかにない高いレベルのチャレンジだと思います。その一端でもご協力させていただきたい一心で、我々にできる最大限のご提案をさせていただきました。この経験をしているデザイン会社は日本でほかに何社あるのかというレベルだと思います。今回のプロジェクトの検討の土壌にあげていただいたところに、感謝しています。

——Graffityは本プロジェクトでどのような取り組みをしましたか?

プロジェクトの前半でPMを務めたGraffityの塚本

Graffity塚本:Graffityとしては、MiRZAのソフトウェアのUX・UIデザイン業務をさせていただきました。デザインといっても、今回のプロダクトのデザインは特殊です。先ほど3Dの知見についての話が出ましたが、今回のプロジェクトでは2Dの絵を起こすということにとどまらないように意識しました。実際の担当領域としても、具体的にはUnityの3D空間のハリボテ (Prefab) 作りまでを実施し、Unityでの開発にのせるためにARグラス上で立体物としてデザインしていきました。それが今回のプロジェクトの特徴的な部分です。

商用化ベースからPMを務めたGraffityの河上

Graffity河上:プロジェクト初期のFigmaのデザインをみると、まずはどういうテイストにするかというところから始まっていますよね。当初は今よりもメタリックなデザインで検討していましたが、それを今回のターゲットであるビジネスユーザーに向けてどのように変化させるか、どのようなデザインテイストがいいのかというところから試行錯誤しました。私が引き継いだときには絵をどう3D化していって見やすくしていくかという段階でした。このように、本当に初期の段階から作らせていただいたというのは大きなチャレンジでしたし、取り組みとしての意義深さを感じます。

Graffity森本:プロジェクトとしては商用化とR&Dはどれくらいの期間ですか?

Graffity塚本:R&Dと一括りにしていい期間は、8ヶ月くらいです。商用化ベースは9ヶ月くらいで、シームレスな移行だったので、合わせて1年半から2年くらい一緒にさせていただきました。

3D空間での表現の難しさ、デバイス開発と並行したプロジェクトでの工夫

——ホームアプリのデザインに取り組む上でどのような点に苦労しましたか? また、どのように解決したかを教えてください

Graffity塚本:一番苦労したのは、実際にAR空間で見てみないと想定した表現ができているのか確認できなかったところです。2Dで自信を持ってデザインしたものでも、3D空間に置いてみないとサイズ感がわからないんです。大きさがちぐはぐだったり、ごちゃごちゃしていたり、UIのデザインとして日常使いできるクオリティになっていないということが頻発しました。

株式会社NTTコノキューデバイスの西様

西さん:大きさがわからないのはもちろんですし、同じ大きさでも奥行きが違うことで受ける印象が違います。例えば、1m先に1mの物体がある、2m先に2mの物体があるというのも平面で見ると同じですが、立体で見るとやっぱり違う。また、ほかのオブジェクトとの距離感も一致させないといけません。そのような違いが大きかったのではないでしょうか。

Graffity塚本:解決策としては、2Dでデザインしたものをいち早く3D化するという泥臭い方法でした。とにかく早くAR空間に我々が作ったデザインをのせることを意識しました。

西さん:プロジェクトの初期に2Dデザインと3Dデザインの違いに気付かされ、実際に触って動くモックを見ながら議論できたのは、非常に有意義でした。
特に3Dで難しかったところは、一般的なスマホアプリだとフォントサイズはどの画面でも同じはずなのですが、3Dだと奥行きによって同じフォントサイズでも見た目の大きさが違うという問題でした。その部分も含めて、高村さんはかなり苦労されたんじゃないでしょうか。

Graffityの3Dデザイナー高村

Graffity高村:苦労したところはさまざまですね。「完全に新しすぎるものを作っても使いにくい、とはいえスマートフォンベースのデザインをそのままは持ってこれない」という難しさがありました。まずGraffityとして注力したことは「形にすること」です。形にして実機で確認することで、想定していたものと違っていたということも多々ありました。形にすることで議論を進め、より良い表現を模索するという営みを、プロジェクトメンバーの皆様と共に取り組ませていただきました。

過度に3D的な表現に寄せすぎても使いにくいものになってしまいますし、どのようなバランスで表現していくかは、このプロジェクトにおいても一番試行錯誤が必要だった点です。その一方で、そのような取り組みから生まれる表現こそが、このデバイスならではのデザインのポイントでもあると思います。

株式会社NTTコノキューデバイスの町田様

町田さん:チュートリアル部分も苦労した点だと思います。一番最初にユーザーが見るシーンなので、文字数や時間の制限があるなかでワクワク感とわかりやすさを両立させないといけません。今回、普段グラスを使わないメンバーに触ってもらい、チュートリアルに特化したユーザーテストを積極的に行ったのですが、「わかりにくい」「どうしたらいいのかわからない」という意見がでました。そのなかで、高村さんは何パターンかアイデアを出してくれて、それぞれの利点について説明してくれました。クイックに動画で出してくれたのも大変わかりやすかったです。

Graffity高村:動画で見ていただくか、実機用のデータをお渡しするかなど、判断材料によって臨機応変に対応させていただきました。XRグラスは画面という枠がない分、検討すべき範囲が多いです。例えばポインターを見失ってしまうなど、実際に体験することで考慮不足だった部分が判明するということもありました。プロジェクト期間中、実機での確認が難しいというタイミングもあり、そんなときは、動画にして確認していただきました。

小木曽さん:今回はデバイスとソフトの開発が同時に進んでいるプロジェクトでした。ハードウェアとソフトウェアが同時に開発されているからこそ、苦労した部分と工夫した部分があったと思います。

Graffity河上:やはり見ないとわからないというのがネックでしたね。動画で見るのと3D空間で目の前で見るのとは感覚が違います。週2回の定例会を16カ月間行い、そこで実際に確認していただきました。空間上にボタンを並べ、選択肢を見て比較していただくなどしました。

また、商用化でデバイスの開発も同時に進んでいたことから、これまでのデバイスで確認してOKだったものでも、新しいデバイスで見るとレンズの違いから見え方が変わってしまったということも。限られたスケジュールのなかでトライ&エラーを繰り返し、チームとして試行錯誤しました。

Graffity塚本:デザイン上で実現したいことはあるが、エンジニアがそれを思う通りに表現する難しさもあります。それをアジャストしていく苦労はありました。今回のプロジェクトではスピード感をもって開発するために、Unityをさわれるデザイナーを増やすようにしました。僕自身が横について、画面を実際に見てもらいながら教えて、アサインしたメンバーに対してUnityも学んでもらうように働きかけました。

小木曽さん:ここまでお話されてきたように、そもそもプロジェクトの難易度がかなり高く、途中で判明した問題もありました。その部分をUnityも触れる方を増やしたり、すぐに確認できる環境を用意してくれたりと、とにかく今できる最善のやり方で進めてくれました。そういった部分で、Graffityさんで良かったな、と思いますね。

Graffity塚本:3D空間で形にするデザイナー実装力はチームとしての強みです。Graffityだからこそ出来たプロジェクトの進め方だったのではないでしょうか。

トライ&エラーを繰り返し、課題解決に向けてクイックに対応する力

——本プロジェクトを通して感じたGraffityの魅力はどのような部分ですか?

小木曽さん:実装しながらトライ&エラーを繰り返して、顔を突き合わせてダイレクトにコミュニケーションをとりながら進められたのは大きいです。開発環境が変わっていくなかで、そこにアジャストする力はGraffityさんの魅力だと感じました。

西さん:課題解決に向けてさまざまな案を出してくれるなど、ディレクションの力はかなり大きかったと思います。選択肢に対して悩む部分に対しても、過去の知見を含めてアイデアを出してくださったので、我々としても決定しやすかったです。

町田さん:Graffityさんは対応力が素晴らしいと思います。指摘したデザインをその場で「直しますね」とクイックに反映してくれました。また、デザイナーもSEもできる方がいたり、専門的な技術者の方がいたり、スキルが多岐にわたっていることにも驚きました。そして最新技術に対して常にアンテナを張っているというところが信頼できます。Apple Vision Proが発売されたときに海外に買いに行かれ、我々向けに体験会を開催いただくなど、私たちも最新のデバイスにいち早く触れられる機会をいただけたことで、非常に勉強になりましたし、良い経験ができて感謝しています。

XRグラス「MiRZA」への期待と、今後の展望

小木曽さん:今回のMiRZAはビジネスユーザーをメインターゲットとしています。
主に遠隔作業支援や、複数画面で業務環境を展開するユースケースを考えています。これまでそのような環境で作業することがなかったユーザーに、まずは使っていただいて業務改革に繋がるかという市場の反応を確認させていただきたいと思います。

その上で、一般の皆様に日常で使っていただけるグラスデバイスの開発を目指し、普段メガネをかけている人が「このメガネじゃなくてMiRZAをつけよう」という未来を目標にしたいです。そのためにはハードのデザインも大切ですし、Graffityさんに担当していただいたソフト面でのデザインも大切です。今後も日常に溶け込み、人々に普段から使っていただけるグラスデバイスの開発を推進していきたいと思っています。


Graffityでは、AR技術に特化した新規事業の企画・開発・運用改善まで支援するスタジオ「Graffity AR Studio」を運営しており、これまで累計25万ダウンロードを突破したARシューティングバトル「ペチャバト」や、グローバルに展開しているARシューティングバトル「Leap Trigger」など、ARエンタメを中心としたAR新規事業を推進しております。これらの知見を活かし、スピード感を持ってARを活用した新規事業をワンストップでサポートいたします。

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