【場末のアートサービス分析】〜STRAYM編〜
概要
STRAYM(ストレイム)は、100円から注目のアート作品の共同オーナー権を保有、売買できるマッチングサービス。
競合や類似サービス
startbahn(スタートバーン)、ANDART(アンドアート)など
コメント
最近増えて来たアートの共同保有サービスの1つがSTRAYM(ストレイム)です。
類似のサービスは海外には多数ありますが、日本では元サイバーエージェントの松園さんが2019年に立ち上げたANDART等が有名です。
STRAYMも後発ながら徐々に勢いを伸ばしており、最近では作品追加のタイミングでサーバーがダウンすることもあるなど人気の程が伺えます。
サービス分析
これまで、banksyやAndyWarhol,KAWSなど様々な超有名アーティストが取り扱いされています。
ユーザーはこれらの作品に対して、最低100円に分割された保有権を購入し作品の一部を所有することが出来ます。
ユーザー側が作品の一部を保有するモチベーションとしては主に下記が挙げられます。
・購入した所有権はサイトを通じて売買が可能で、保有権の値上がりによって利益がでる
・過半数の所有権を持つことで実際の作品の貸し出しなどのサービスが受けられる
基本的には作品の取引価格は100万円前後となるため、過半数を取得するにはハードルが高く、多くの人は購入した保有権の値上がりによる利益が目的になるかと思います。
実際に、ほとんどの作品が超が付く有名作家のものであると共に、これまでの作品の多くが初値から数倍近くに値上がりしています。
なんだか株の取引のようですが、所有権の購入画面も株式の「板」そのものです。
(画像はSTRAYMのサイトより引用)
つまりサービス提供側も"所有権"そのものが、値上がりし売買が活発になることを期待しており、ある種の投機的な利用を推奨していることになります。
サービス側としては、売買の度に取引手数料が入るので証券会社やビットコイン等の取引所のビジネスモデルと同じであると言えると思います。
つまり、このようなアートの共同保有サービスの実態は、作品の存在を裏付けに発行される仮想通貨(所有権)の取引所と言えるのではないかと思います。
投資対象として買いか?
では、実際にこのサービスを利用してアートの所有権の一部を持つことが投資対象として良いのかを考えたいと思います。
結論としては、"投機としては有り、投資としては無し"だと思います。
理由を説明します。
まず、投機としては有りである理由です。
これは、ほとんどの作品の保有権が初値である100円から数日で1.5倍から2倍程度に値上がりしていることです。単純に初値で購入し、値上がりしたタイミングですぐに売り抜けてしまえば取引手数料を加味しても利益を得ることが可能だと思います。
次に投資としては無しである理由です。
これは、売買されている作品の価格にあります。
基本的には作品がセカンダリマーケットと呼ばれる2次流通で取引される参考価格があります。
例えば、他の販売サイトで100万円で購入できる作品Aがあったとします。これが、STRAYMの時価総額(作品所有権の総額)では150万円であった場合、150-100=50万円分が分割保有することによるプレミアム(上乗せ分)であると言えます。
所有権の価格が妥当であるかどうかは、この上乗せ分がどの程度であるかを調べることで判断ができると思っています。
具体的な作品で見ていきましょう。
KAWSのUntitledの下記作品は2020年11月現在で、2,500万円の時価総額となっています。
(画像はSTRAYMのサイトより引用)
1点物の作品であるため、全く同じものでの比較は難しいですが、KAWSの同年/同サイズのペイント作品は概ね1,000万円弱程度で取引されています。
つまり、初値である1,000万円が作品に対して妥当な価格だと思います。
ここから計算すると2,500-1,000=1,500万円が分割保有に対する上乗せ分と言うことになります。
投資としては無しだと判断した理由は、分割保有に対する上乗せ分が1,500万円と言うのはいささか高すぎると感じているからです。
他の作品も概ね2次流通価格の倍程度が上乗せ分として含まれています。
これでは、例え作品そのものの価値が上がり流通価格が高騰しても、上乗せ分がそれを吸収してしまうため、一時期のbanksyのようにバブル的に価格が上がらないと投資として利益を出すのは難しいでしょう。
今は需要と供給のバランスで言うと需要過多の状態で、溢れた需要が価格の上乗せ分に反映されている状態です。いずれ、必ず取り扱い作品や類似サービスの増加により供給が増えてきます。その時に、現在のプレミアム(上乗せ分)を維持できるとは思えません。
一昔前の仮想通貨のように、サービスの目新しさや投機性で資金が集まっている時期だと思いますのでご利用の際には十分な注意が必要です。
最後に
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