Don't think! Feel.
先日、清澄白河に行ってきたことは、こちらに書いた。
その日の目的は、『クリスチャン・ディオール、夢のクチュリエ』を見るためだった。
4月に行く予定だったのが、天気が悪くなるとの予報を受けて延期することになり、5月になった。会期終了まであと少し、私が外出できる日取りを考えるとその日しかなかったのだが、結果的に当初行く予定だった4月の時よりも悪天候になってしまった。
とはいえ、行って良かった。
去年行った『ガブリエル・シャネル展』では、ココ・シャネルのモノ創りに対する哲学に焦点を当てていたのだが、このディオール展では、純粋にドレスの美しさと可能性が表現されていたように思う。元々裕福な家の出身であるディオールは、社会と闘う必要がなかったのだろうというような感じがした。
その展示の中で、ひとつ異彩を放つ展示物があった。
ドレスではない。バッグでも香水でもない。
オブジェだ。
ディオールは『クリスチャン・ディオール』を操業する前に、画商をしていた。その時マン・レイというアーティストの作品を扱っていた。彼の絵や彫刻等の作品を検索してみると、なまめかしい雰囲気の作品が多い。また、ココ・シャネルとも親交があったようで、彼女の写真も撮っている。
そのマン・レイが制作した『非ユークリッドオブジェ』が、会場入り口から入ってすぐのところに展示されている。
全体は50~60cmくらいの小さなオブジェだ。金属でできたサッカーボールで、六角形の部分は銅板のようなもので出来ており、五角形の部分は穴が開いていて、そこを黒い棒が突き抜けている。棒の下にはゴムチューブのようなものが絡みついて土台となり、サッカーボールを支えている。
私の語彙力ではこれ以上説明が出来ないので、ご興味のある方は調べてみてください。
それを一目見て「なんだ、これは?」と思わない人がいるだろうか。
100人いたら100人がそう思うだろう。101人いたらそのうちの1人が「いやぁ、これはこのようなことを表現しておりましてね」と解説してくれるかもしれない。
私ももちろん「なんだ、これは?」と思った。
このオブジェの意図するところを考えようとしたその時、
Don't think! Feel.
というブルース・リーのセリフが頭をよぎった。
私はブルース・リーの映画をきちんと観たことはない。このセリフは何かのドラマの中で、主人公が象徴的に使う言葉で、その時にこのセリフを言うブルース・リーの映画の一場面が流れたのだった。それを思い出したのだ。
その瞬間、私はオブジェの意味や美術的価値を考えるのを即座に止め、その代わりに「なんだ、これは?」と感じたことをそのまま認めた。
私はそれほど考えすぎる性質ではないと思っているが、特にnoteを書いていると、多少なりとも考えるクセがつく。
一方で感じることも大切だから、考えることと感じることのバランスは一応取ろうと試みてはいる。
考えることと感じることは分離できず、少しでもどちらかに傾くと、それは私自身にとって、あまり良いことではないのだろうと思う。
今の私は、若干考える方に傾いている。
そのことを、このわけのわからないオブジェは教えてくれた。
考えるな。感じろ。
私は、もう少しブルース・リーになったほうが良いかもしれない。