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卵子凍結とは
私のクリニックでは、
プレコンセプションケア、卵子凍結、一般不妊治療、婦人科保険診療を行っています。
卵子凍結について解説をしたいと思います。
どんな人が卵子凍結をするのか?
卵子凍結を行う人はバリキャリ系の人?
芸能関係の人?
というようなイメージがあるかもしれません。
そういう訳ではありません。
もちろん、中には海外転勤予定の方や留学前の方もいらっしゃいます。
メインの理由は、、
『将来子供を持ちたいと考えているが今パートナーがいないもしくは今のパートナーとの状況がわからない方』
です。
次に多い理由は
『将来子供が欲しいかわからないが、持ちたいと思った時に持てなくなるのは嫌だと思う方』
です。
(東京都卵子凍結アンケート結果より)
キャリアだけではない理由も大きいと思います。
なぜ卵子凍結を検討するのか?
⚪︎近しい人で卵子凍結をしている
⚪︎不妊治療を行っている知り合いにお勧めされた
⚪︎年齢に伴う卵子の質の低下を気にして
という方も多いです。
自分の妊孕性について考えて、行うかを悩みながら皆さんご相談にきてくださっています。
さらにその中で、卵子凍結を行うか是非検討をして頂きたい方がいるのはご存知でしょうか?
ヨーロッパでの医学的適応(病気の影響がある可能性がある場合)の卵子凍結にはがん以外の病気が含まれています。
①子宮内膜症で卵巣に腫れがある方
②卵巣の腫れがあり、手術をされた方
③早発卵巣不全と言われている方
そのような方は日本ではまだ医学的適応には入っていませんが、少なくとも卵子凍結を行うか検討して良い方になると思います。
①、②、③の方はAMH(卵子の在庫数の指標)が下がりやすく卵子の在庫は少なくなりがちです。
まずは自分が卵子凍結を検討するかどうかは、病気を持っているか知るところからと考えて頂ければと思います。
卵子凍結を行っているクリニックではどこでも卵巣機能は全般的に評価できます。特に経腟超音波検査とAMH検査は受けて頂けると良いのではと思います。
20代で生理痛のある方の30%
30代で生理痛のある方の50%
に子宮内膜症や子宮筋腫のような病気の背景があると言われています。
婦人科は行きにくい場所ではあると思いますが、悩む前にまずは自分の事を知るため婦人科に来てください。
なぜ卵子凍結があるのか?
卵子の特性として質と量という2点の重要なポイントがあります。
①卵子の量
生まれる前に作られるだけで、以降体の中で作られることはない。思春期で20-30万個の在庫があるが、それ以降生理周期毎に200-1000個がなくなっている。
1ヶ月に多い人だと1000個の卵子がなくなる。排卵している卵子は1-2個なのに、その背景でこんなに沢山の卵子がなくなっているのです。
その事実を知っている人は少ないかもしれません。
②卵子の質
生まれる前からずっと体の中にあり、新たに作られている訳ではないので質は年齢とともに変化します。一般的には30歳頃から緩徐に低下し、37歳からは急激に低下します。
30歳で1回の生理周期で自然妊娠する確率は約30%ですが、35歳では約18%、40歳では約5%となります。
この2つの概念は日々生まれ変わる精子とは違います。精子にも質の低下はあるのですが、35歳から緩徐に、45歳から急激に低下すると言われています。
女性の年齢に伴う質の変化より男性はやや遅い年代で起きるのです。
そのような卵子の事実があるためどうしても
2人の子供を自然妊娠で授かるなら、女性の年齢で27歳までに1人目の妊活を考えて欲しいということになります。
1988年の平均の第一子の出産年齢は26.6歳。
実は自然に2人の子供を授かる事ができる年齢で1人目を出産していたのです。
2021年の平均の第一子の出産年齢は30.7歳。
これは不妊治療の最終段階である体外受精も含めて2人の子供を授かれるギリギリの年代になります。
このたった4年という平均出産年齢の変化も年間約54万件の不妊治療が必要な世の中になっている原因になります。
産婦人科医はほとんどが30歳までに挙児を考えて欲しいと思っているのではないでしょうか。35歳以上は一般に高齢出産と言われる領域に入るからです。私もその中の1人であり、できれば、、その年代では考えて欲しいとは思います。
それはかなり難しい選択になることは、多くの私の友人達の話を元に思いました。
20代から子育てをしても社会復帰して女性がキャリアを築ける社会であれば、卵子凍結は要らないのだと思います。現実そうとはいえない状況が続いています。
育休から復帰する後や時短で勤務する場合には部署が限られて元々のキャリアには戻れていない。
そんな先輩を見て早く子供を欲しいと思うでしょうか。まだ自分が子供を持つことが現実的ではないと思いつつも、いつかは欲しいと思うかもしれないと思うのが一般的かと思います。
遅くとも10年後には現在の社会構造が変化して欲しいと願いつつ、、すでに今の20-30代にはこの卵子凍結という選択肢をお伝えしていくしかないのではと思っています。
妊娠は100%ではない?!
卵子凍結をしたとて、確実に100%妊娠できる訳ではないです。
なぜならそもそも、妊娠が確実にできる方法がないから。
どんなに若くても妊娠は100%できる訳ではないです。妊娠が確実にできるとわかる検査ももちろんありません。
不妊治療で行っているのは妊娠の確率を上げる治療です。その中で卵子の質が低下していると、そこを改善する手立てが中々なく治療に苦しむ人が多い。また卵子の質の低下は年齢による部分がかなり大きい。
若い卵子を凍結しておく事で、妊娠の可能性が上げることができる。ということで、始まったのがこの卵子凍結です。
ただ、その卵子の凍結技術の向上にかなりの時間がかかりました。ようやくこの5年ほどでかなり技術が改善し、多くの方に行なって頂いても良いものになったと思います。10年ほど前は凍結した卵子の生存率は50-70%と言われていましたが、現在は90%を超えるクリニックがほとんどです。これにより、多くのクリニックが卵子凍結という技術を提供するようになりました。
当院で卵子凍結に来られる方も妊娠を確実にするものというイメージではなく、皆さんできる限り可能性を高めたいと思ってきていただいています。
今年も多くの方に来て頂き、
大切な卵子凍結という技術をお任せ下さった事に本当に感謝しております。
100%ではないとはいえ、いかに100%に近づけるかを常に考えて来年も行っていきたいと思います。
実は今年は私自身も資格を一つ取りました!12月が試験でしたので、noteの更新が滞ってしまい申し訳ございません。。
卵子凍結や不妊治療の生殖心理のサポートを今までより深くできるよう『生殖心理相談士』という資格を取りました。
皆様に心理面でのサポートも手厚く、来年も頑張って参ります。
最後まで読んでくださってありがとうございます。良いお年をお迎え下さい。
グレイス杉山クリニックSHIBUYA
院長
岡田有香