レス
”レス”だという女性が必ず漏らすと言ってもいい。
三種の神器的なセリフである。
彼女たちの多くは、40〜50代で女性として恵まれた環境にある。
具体的には、高収入の旦那様と結婚し、専業主婦として暮らしている。
子どもはいたりいなかったりだけれど、一様に「夫婦仲はいいのだ」と主張し、実際に旦那様のそこ以外には不満はなさそう。
専業主婦でない場合もあるけれど、生活のために仕事をしているというよりは、自己実現のためだ。
また、個人的な見解ではあるけれど、容姿にも恵まれている方が多い。
実際、わたしの口からは同じセリフは出てこないと思う。
わたしはずっと女でなくなりたかった。
痴漢に遭っていたから、男性から性的な視線で見られることが苦手だった。
けれど、女であるという事実は変えられない。
だから「女を捨ててる」という表現には違和感しかない。
若い女だというだけで発生しうる危険はあって、捨てられるなら捨てたいと何度も願った。年齢を重ねるたびにおばさんに近づいて、ホッとしていた。
だから、三種の神器的セリフにすごく違和感があった。
わたしにとって、女であることはそこまで重要でないように思えた。
逆を言えば、彼女たちにとって「女」であることはすごく重要だということになる。
もしかしたら。
女としての幸せというものを順調に手に入れてきた、いわゆる ”勝ち組” と言われる彼女たちにとっては、最初の挫折になるのかもしれない。
同時に何もわたしが喪わないのは持っていないからかもしれない。
そう考えると、女性として「持っている」というのは危うい。
その価値は自分ひとりでは成り立たないからだ。
その価値を認め愛でてくれる男性がいて、初めて成り立つ。
そうなると、価値は相対的なものになってしまう。
「若さ」「美しさ」とか色々な尺度で測られ、比較されてしまう。
そう考えると、価値が下がり「喪う」ことは必然である。
自分の価値を他人に委ねれば、自然そうなる。
彼女たちは一様に保守的で不倫やらアプリやらは基本なさらない。
そもそも、そんな世界は現実ではなく空想の世界だくらいに思っている。
彼女たちにやってみるだけやってみたらいいのに、とわたしは言うけれど、「でも」と必ず返ってくる。
別に不倫を勧めているわけではない。
それがただのおしゃべりであっても、他の「男性」への接触をためらう。
そして、男友達が欲しい(降ってくればいいのに的な)、という。
けれど、三種の神器的セリフを口に出す女性は、かなり切羽詰まっているとわたしは思う。
それは「女」としての命の話だからだ。
けれど本人たちに自覚はあまりなくて、自分の気持ちに気づかない。
レスの原因は、旦那様が夜には元気がないとか、そもそも全体的に元気がないとか、だからといって無理やりやって欲しいわけではないとか。
相手に原因がある以上、彼女たちには打つ手がない。
けれど、彼女たちは何も行動しない。
自分の「女」としての価値の喪失を恐れているのに、カフェ巡りとか料理教室とか子どもの教育とか慈善事業とかに精を出す。
それが悪いわけではないけれど、レスの原因に本当の意味では向き合わない。
そういうひとの話を聞くことがすごく増えてきた。
だから、セッションを始めることにした。
誰にも言ったことがないんだけどねとレスの話をしていた彼女たちのようなひとの居場所になることを目指している。
けれど、
「夫婦仲はいいのよ」
「不倫がしたいわけではない」
とはもう言えなくなってしまう。
そんなセッションになると思う。
Comming soon…!!!