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ロコモから考える安全に歩けるまちづくり


運動器の障害のために移動機能の低下をきたした状態を 「ロコモティブシンドローム」で通称『ロコモ』といいます。
ロコモティブシンドロームとは、英語で移動することを表す「ロコモーション(locomotion)」と、移動するための能力があることを表す「ロコモティブ(locomotive)」からつくった言葉で、移動するための能力が不足したり、衰えたりした状態のことです。
人間が立つ、歩く、作業するといった、広い意味での運動のために必要な身体の仕組み全体を運動器といいます。運動器は骨・関節・筋肉・神経などで成り立っていますが、これらの組織の障害によって、立ったり歩いたりするための身体能力(移動機能)が低下した状態が、ロコモです。
ロコモが進行すると、将来介護が必要になるリスクが高くなります。
要支援、要介護になる原因のトップは運動器の障害による転倒のため、大丈夫と思っていても早い段階から対策が必要です。

図1 要支援・要介護になった原因
出所)日本整形外科学会 ロコモティブシンドローム予防啓発公式サイトより (※1)

20代からロコモは進行

【運動不足からの進行】

日本整形外科学会と日本運動器科学会が発行した「ロコモティブシンドローム診療ガイド2021」によると、ロコモと判定されるロコモ度1以上の人は4,590万人と推定されています。

骨や筋肉の量のピークは10代~30代で、40代を過ぎると下半身の筋力から低下し始めます。令和4年度「スポーツの実施状況等に関する世論調査」(※2)では、運動・スポーツ実施率について、20歳以上の週1日以上の運動・スポーツ実施率は52.3%であり、男女別では、男性が54.4%、女性が50.2%となっています。

週1日以上の運動・スポーツ実施率は、20代~50代の働く世代では低い傾向となっています。

更に、「業務内容の大半をデスクワークが占める」「リモートワークでデスクワークを行っている」という職業の場合、どうしても長時間座りっぱなしになるため、運動不足に陥りやすいです。そして、運動不足によって体重が増加すると生活習慣病のリスクが高まります。

肥満体形の人は腰や膝に負担がかかり、やがて関節などに障害が生じて運動器機能が低下するおそれがあります。また、ダイエットなどで低栄養の食生活を続けていると、骨密度や筋肉量の低下が懸念されます。

【食生活からの進行】

スナック菓子やインスタント食品には、カルシウムの吸収を阻害する食塩とリンが多く含まれています。また加工食品や肉類、食品添加物にもリンは多く含まれており現代人はリンの過剰摂取が問題となっています。

リンを多く摂取するとカルシウムの吸収を阻害するため、若くても骨密度の低下が起きる可能性があります。

また、カルシウムが足りないと骨粗鬆症の他に高血圧・動脈硬化・糖尿病・アルツハイマー病・変形関節症など色々な生活習慣病にもかかりやすくなります。

これは副甲状腺ホルモンが骨からカルシウムを引き出して、血管・脳・軟骨や細胞の中など、普通はカルシウムが余りない所に押し込んでしまうためです。カルシウムを充分にとればこれらの病気も防げます。

【予防方法】

食事ではリンとカルシウムは1:1の割合で摂取するのが好ましいと言われています。日ごろからスナック菓子やインスタント食品を多く食べている人はカルシウムの摂取にも気を使いましょう。

また、骨の強化には、適度な負荷が欠かせません。骨は負荷がかかるほど細胞が活性化し、より強くなろうとする性質があります。そのため、夏場なら30分程度の歩行、冬場なら1時間程度の歩行など軽い運動を継続的に行うことで、骨に適度な負荷をかけて、骨密度の低下を予防することができます。

歩けるまちづくりに向けて

【現状の課題】

一般社団法人日本建設機械施工協会HPにある「日本の道路整備の現状」のレポート(※3)では、一般国道以外の道路の平均幅員は7m以下であり、歩道等の設置率は13.5%です。

出所)一般社団法人日本建設機械施工協会「日本の道路整備の現状」(※3)

道路構造による交通事故として日本は、フランス、ドイツ、アメリカ、イギリスと比べると歩行者及び自転車の死者が多い傾向があります。これは道路の幅員が狭いことと歩道の設置率が低いことに大いに関連があると言われています。

図2 状態別・自動車1億走行台キロあたりの死者数
出所)一般社団法人日本建設機械施工協会「日本の道路整備の現状」(※3)

【まちづくり】

現在、人口減少や少子高齢化が進み、商店街のシャッター街化などによる地域の活力の低下が懸念される中、都市の魅力を向上させ、まちなかににぎわいを創出することが、多くの都市に共通して求められています。

日本政府は「都市再生特別措置法等の一部を改正する法律」により、市町村が、まちなかにおける交流・滞在空間の創出に向けた官民の取組をまちづくり計画に位置付けていて、国土交通省は、地域の取り組みに対して、法律・予算・税制のパッケージによる支援を行うことで、「居心地が良く歩きたくなる」空間づくりを促進し、魅力的なまちづくりを推進しています。(※4)

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参考文献
※1 日本整形外科学会 ロコモティブシンドローム予防啓発公式サイト「ロコモを知ろう」
※2 令和4年度「スポーツの実施状況等に関する世論調査」
※3 一般社団法人日本建設機械施工協会HPにある「日本の道路整備の現状」
※4 国土交通 都市再生:「居心地が良く歩きたくなる」まちなかづくり~ウォーカブルなまちなかの形成~

【執筆者】
神戸 修(こうべ おさむ)
株式会社グレイス ゼネラルマネージャー

大阪学院大学 流通科学部流通科学科卒
学生時代より、就活・キャリア支援のサークルを立ち上げ人材ビジネス会社、給食会社にて法人営業、採用、広報業務に従事
アニュアルレポート、統合報告書の作成
東日本大震災等では現地の医療関連従事者の業務サポートを手がける



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