似非エッセイ#13『腕時計』
最近、よく腕時計が遅れる。
それなりに使っているから仕方がないとは
いえ、ネジを回す度になんだか物寂しくなる。
ちなみに断然アナログ派で、細かい話をするとすーっと進むタイプよりも、カチ、カチと一秒ずつ刻む秒針の方が好み。
文字盤っていう響きもたまらない。
むかし密着番組で見た時計職人の仕事は
途方に暮れるような作業の連続だった。
憧れるけど、不器用で忍耐弱い自分には絶対に無理だと思った。
完成した時計の値段にまたびっくり。
1000万を腕に巻くってどんな心境だよ。
持ったこともないけれど、高級な腕時計は遅れたりしないのだろう。
でも、今のこの、時々時を刻み損ねるこいつに何とも言えない愛着がわいている。
だからもうしばらくこいつと一緒に時を刻んでいこう。
時間は待ってくれないなんていうけれど、追いつけ追い越せと、たまに自分の指で合わせるのも悪くない。