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似非エッセイ#15『大人になれないまま』

あいつとはもう10年近く会っていなかった。
いつか、そのうち、また、会えると思っていた。
当たり前だ。だって俺たちはまだ30代を折り返したばかりじゃないか。
二度と会えなくなるにはあまりにも早過ぎる。
なのに、あいつは先に行った。

若い時からヤンチャくれで、入学式で喧嘩して高校を初日から停学になるような奴だった。
ある日偶然街であった時は、警察に連れて行かれている最中だった。
また別の日。俺が同じ高校の友達とゲームセンターにいたら悪そうな集団によくわからない理由で絡まれた。しばらく因縁をつけられ続け、そこにボスらしき男が遅れてきた。あいつだった。俺があいつを呼び捨てで呼ぶとさっきまで凄んできていた連中の顔が一気に青くなった。

他にも思い出を挙げればキリがない。とにかくそのすべての場面で俺たちは笑っていた。

だけどな、おい。今回ばかりは「馬鹿だな」と笑っては済ませられないぞ。
事故の経緯も聞いた。本当は言いたい。馬鹿だよお前は。何やってんだよ。
馬鹿やるのは、生きたままじゃなきゃ意味ねえんだよ。

連絡を受けて一週間以上経つけれど、まだ、実感なんてあるはずがない。
今日が葬儀だったそうだ。
どうせ遺影の中のあいつは、あの時のままの、あの笑顔でいるんだろう。


一人の人間の死をこんなところに、こんなにも短く書くことは不謹慎かもしれない。でもそんなの知るか。俺とお前の仲だ。

『あいつは虹の始まりと終わりをきっと一人で探しに行ったのさ』
そんな風にはまだ思えない。
だけど同じ曲の別の歌詞にこんな一節もある。

『君と僕は一生の友達なのさ』

忘れんなよ。
じゃあ、またな。

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