モチベーション・人間関係の融和
「内部統制評価基準 勝ち抜く会社の800のポイント」は特に「業務の有効性と効率性」を基軸にした「内部統制」の有効性を診断する評価基準です。この評価基準を活用した内部統制の仕組みづくりでは、内部統制に関わる組織経営のプロセスを8つの側面(カテゴリ)に分けて、具体的に仕組みに落とし込んでいく方法をとっています。
内部統制評価基準の8つのカテゴリーの5つ目は
5.知の経営の実現
です。
知の経営を支える社員・従業員のモチベーションの向上の取り組みを確認します。
5.(5)モチベーション・人間関係の融和
経営幹部、管理職は、会社の従業員の心情の理解に努め、彼らの上昇志向、勤労意欲、愛社精神の涵養を心がけ、また人間関係の融和に配慮していますか。
上昇志向、勤労意欲、愛社精神の涵養はすなわち、エンゲージメントの向上です。
働き手のエンゲージメント。
組織の仕事、使命、ビジョンを達成するための働き手の感情的および理性的な献身(commitment)の程度。働き手のエンゲージメントが高い組織は、多くの場合、高いパフォーマンスを達成する業務環境が特徴となっています。ここでは、働き手は、お客様の利便性と組織の成功のために、最善を尽くすように動機付けされています。
(ボルドリッジ主要用語集より。翻訳筆者)
社員・従業員は、業務に個人的な意義と動機を見出し、個人間および職場で支援を受けたときに、エンゲージメントを感じます。
言い換えれば、エンゲージメントは
・有意義な仕事を行っているという意識
・明確な組織の方向性が示されていること
・パフォーマンスに対して責任が与えられていること
・安全で信頼関係が高く、効果的で協力的な職場環境
などによって維持・向上が図られます。
職場における人間関係も重要であり、エンゲージメントの高い働き手は、
・信頼関係
・安全で協働的な環境
・良好なコミュニケーションと情報の流れ
・権限移譲
・業績に対する責任の付与
などによって強化されます。
従業員エンゲージメントを高めるには
・訓練とキャリア開発
・効果的な表彰と報酬の制度
・公平な昇進と校正な待遇
・家族的な親密感
などが求められます。
働き手エンゲージメントの推進力
給与や昇給への満足も重要ですが、一般的に、これらの2つの要因だけでは、働き手のエンゲージメントと高いパフォーマンスを確実にするには十分ではありません。これら以外の要因として考えられる事例としては、効果的な問題解決や不満の解決、能力開発とキャリアアップの機会、職場環境とマネジメントの支援、安全で安心して働ける職場、業務量、効果的なコミュニケーションと協力やチームワーク、権限移譲の程度、雇用保障、多様な働き手グループの異なったニーズの理解、顧客にサービスを提供するための組織的な支援などがあります。
(ボルドリッジ審査基準の解説5.働き手より引用。翻訳筆者)
「内部統制評価基準 勝ち抜く会社の800のポイント」が示す取り組みとしては、以下の要件が挙げられます。
・経営幹部・管理者が部下を大切にする方針を明確にしている
・経営幹部・管理者は自身が魅力的で模範となること
・仲間意識を高める仕組み(階層別研修、部門横断プロジェクト、交流会、飲み会等)をつくること
・権限を委譲し、リーダーシップ発揮の機会を与えてること
・従業員の評価に連動した昇給・昇進等を図ること
・従業員間のコミュニケーションを活性化させるため活動(各種会議、SNS、レクリエーション等)
また、経営幹部・管理者は、定期的に部下と仕事上の成果・評価や今後の希望等を話し合う場を設けることは重要です。
さらには、多様性や包括性(インクルージョン)が求めらる時代になり、高齢者・女性・外国人等多様な従業員を尊重する風土の醸成に努力することも重要になってきています。
していますか。
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内部統制評価基準改訂版「内部統制評価基準 勝ち抜く会社の800のポイント」については、NPO法人内部統制評価機構のウェブサイトをご覧ください。
ボルドリッジ(ボルドリッジ・エクセレンス・フレームワーク)は、米国発の「証明された」経営フレームワークです。
筆者らが翻訳した、ボルドリッジ・エクセレンス・フレームワークの要約版、「ボルドリッジ・エクセレンス・ビルダー【日本語版】」は、米国NISTのウェブサイトからダウンロードできます。ページ下方の Non-English Versions / Japanese を参照ください。