多様性とイノベーション
多様性がイノベーションにつながる。これは大凡、受け入れられやすい主張です。そこで「多様性、イノベーション」というワードで検索を試みましたが、思ったほど多くはありませんでした。
経済産業省から「ダイバーシティ経営」という概念が提示され、すでに「ダイバーシティ経営企業100選」「新・ダイバーシティ経営企業100選」などが選ばれていることを知りました。令和2年の募集も行われています。
ダイバーシティ経営では、社員の能力を見極め、適材適所を図ることによって、イノベーションの創出や生産性の向上を実現させることを目指します。そのためには、個々人の抱える事情に配慮し、すべての人材が様々な制約の中でも仕事への意欲を高め、能力を発揮できるような環境整備が必要となります。例えば、子どもを持って働く母親、日本語での会話が難しい外国人、何らかの支援が必要な障がいのある人、週 5日フルタイムで働くことを望まない高齢者などです。
(価値創造のためのダイバーシティ経営に向けて、経済産業省資料より)
多様性がイノベーションを生むことはデータでも証明されています。「イノベーションに寄与する多様性の要素とは?」(日経ビジネス)という記事にドイツの研究成果が紹介されていました。ここでは、多様性の要素はいろいろありますが、アカデミックバックグラウンド(学位の種類等)の多様性はほとんど関係がない、また、年齢の拡がりがマイナス、という面白い結果も紹介されています。
もちろん、これらは従業員の多様性について述べています。
ボルドリッジでは、主要用語の一つとして「多様性」を取り上げています。ここでは働き手とともに顧客層の多様性からも恩恵が得られるとしています。
多様性(DIVERSITY.)
労働環境を豊かにする働き手の間の個人差で、雇用層および顧客層を代表するもの。この差異は、人種、宗教、肌の色、性別、国籍、障害、性的指向、年齢や世代、教育、出生地、および、技能の特性、さらには、アイデア、思考、学問分野、観点など、多くの変数に対応しています。審査基準では、働き手の雇用と顧客層の多様性を大切にし、そこから恩恵を受けることを指します。両方を十分に活かして働き手を増強することで、高い業績、顧客、働き手とコミュニティの満足、顧客と働き手のエンゲージメントのための機会が増えます。
(Baldrige Excellence Framework 2019-2020, BPEP より引用。翻訳筆者)
また、ボルドリッジの核となる価値観と概念のひとつ「人を大切にする」では、従業員のみならずパートナーや協働者などにも多様性を求めています。
成功する組織には、従業員、パートナー、協力者の、多様な背景や特性、知識、スキル、創造性、および行動の動機を活用する、多様性を受け入れる文化があります。
(Baldrige Excellence Framework 2019-2020, BPEP より引用。翻訳筆者)
多様性を活かす取り組みについて、最近の話題のひとつは、スターバックス コーヒー nonowa国立店の開店です。このコロナ禍の中、新しい挑戦には感動です。(スタバのプレスリリース(2020/06/24))