経営理念の企業文化への反映
「内部統制評価基準 勝ち抜く会社の800のポイント」は特に「業務の有効性と効率性」を基軸にした「内部統制」の有効性を診断する評価基準です。この評価基準を活用した内部統制の仕組みづくりでは、内部統制に関わる組織経営のプロセスを8つの側面(カテゴリ)に分けて、具体的に仕組みに落とし込んでいく方法をとっています。
内部統制評価基準の8つのカテゴリーの5つ目は
5.知の経営の実現
です。
知の経営の前提として、経営理念の浸透について確認します。
5.(1)経営理念の企業文化への反映
会社のもつ企業文化は、経営者の経営理念を深く反映していますか。
経営理念は経営者の想いであり、企業経営や事業経営の基本的な考え方を示したものです。
企業経営や事業経営を行っていく上で、社員だけでなく、顧客や株主、パートナーや地域社会に対して、経営の基本的な考え方を示していくことは重要です。
将来にわたってどのような方向を目指し、どのようなやり方で経営するかを共有し、理解を高めることは、社員には動機付けとなり、顧客には購買動機となり、株主やパートナーには協働の意欲となります。
経営理念には、企業や事業体の社会での目的、存在意義や使命、経営哲学や企業行動の規範となる基本的な価値観を示します。時には将来のありたい姿を含むこともあります。
経営理念が企業文化を形成する主要な要素です。経営理念=経営者の想いが、企業活動において具現化され、従業員に浸透し、実践され伝承されることによって企業文化が確立されます。
そうして確立した企業文化は、他の企業や組織との差別化の基盤となり、競争優位を作り出します。
経営理念を伝え、理解を深めてもらうために、会社案内への記載、ホームページへの掲示、経営者の会合での発信など、取引先やパートナー、顧客など、利害関係者の理解が深まるような仕組みを作ります。経営者、経営幹部の重要な役割の一つです。
経営者は経営理念を浸透させるべく、継続的に従業員に対して分かりやすくその内容を伝える努力をします。そして、それが正しく伝わっているかどうかをコミュニケーションを通じて確認します。
重要な意思決定や判断に際して、経営理念に沿った判断をする、経営理念で示した価値観や行動規範に則った行動をするなど、経営者が経営理念を体現し模範となることも、社員や利害関係者に理解・浸透を図るために重要です。
ボルドリッジでは、経営理念に代えて、ミッション(使命)、ビジョン、価値観の組を示し、経営幹部がコミュニケーションや行動(模範)を通じて、利害関係者に理解してもらうように努めることを重要としています。
将来を見据えたリーダーシップ
組織の経営幹部は、組織のビジョンを設定し、顧客に焦点を当て、明確ではっきりした組織の価値観と倫理観を示し、従業員に高い期待を設定することが必要です。ビジョン、価値観、期待は、すべての利害関係者のニーズのバランスを取ることが求められます。リーダーが定義する価値観と戦略は、組織のすべての活動と意思決定の指針となります。
(ボルドリッジ「基本的価値観と概念」から部分引用。翻訳筆者)
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内部統制評価基準改訂版「内部統制評価基準 勝ち抜く会社の800のポイント」については、NPO法人内部統制評価機構のウェブサイトをご覧ください。
ボルドリッジ(ボルドリッジ・エクセレンス・フレームワーク)は、米国発の「証明された」経営フレームワークです。
筆者らが翻訳した、ボルドリッジ・エクセレンス・フレームワークの要約版、「ボルドリッジ・エクセレンス・ビルダー【日本語版】」は、米国NISTのウェブサイトからダウンロードできます。ページ下方の Non-English Versions / Japanese を参照ください。