組織の成熟度
組織の成熟度というのはあまり馴染みのない概念かもしれませんが、1980年代後半からソフトウェア開発の世界で大切な概念となって、ソフトフェアを受託開発する際の企業の選定基準にこの組織成熟度が用いられるというようなことが行われていました。私もソフトウェア開発の現場におり、ワッツ・ハンフリーの書物やISO化されたその基準を学びました。インドの企業には最高位のレベル5の企業は多いのに、日本の企業はレベル5を取得できない。取得するとニュースになる、というような状況でした。
ソフトウェア開発で使用されていた成熟度モデルは、米カーネギーメロン大学のソフトウェアエンジニアリング研究所(SEI)が開発した能力成熟度モデル(Capabilty Maturity Model, CMM)で、成熟度を5段階で評価しています。
成熟度レベル
レベル1 初期
レベル2 反復できる
レベル3 定義された
レベル4 管理された
レベル5 最適化する
ここで例えば、レベル1「初期」は、「場当たり的」な状態です。ボルドリッジと同じです。
成熟度レベル5段階の各レベルにおける主なプロセス変更の特徴を以下に示
す:
1) 『初期』 ソフトウェアプロセスは場当たり的、時には混沌としたもの
と特徴付けられる。ほとんどのプロセスは定義されておらず、成功は個人の努力に依存する。
(ソフトウェア能力成熟度モデル1.1版、CMU/SEI発行、ソフトウェア技術者協会翻訳より引用)
余談ですが、私も一時、ソフトウェア技術者協会(SEA)のメンバでした。このCMMの翻訳には携わりませんでしたが、SEA-SPINには度々参加し、多くを学びました。
CMMはその後、CMMIへと進化し、ソフトウェア開発プロジェクトだけでない、より広い分野を対象にするようになりましたが、5段階は変わっていません。
ボルドリッジは、一般企業・組織の経営プロセスを対象としたこと、また、プロセスだけでなく結果も併せて評価対象としたこと、プロセスおよび結果の評価軸にADLI(プロセス)、LeTCI(結果)を用いたことが特徴です。
レベルは、ボリドリッジ・エクセレンス・ビルダーは4段階ですが、ボルドリッジ・エクセレンス・フレームワークは6段階です。いずれも「場当たり的(問題に反応)」から始まります。
ソフトウェアの世界では、スーパープログラマーがいて、一人で優れたソフトウェアを開発する例はよくありますが、CMMではそれだけでは恐らくレベル1です。
ボルドリッジでも、「お客様からクレームの電話を受けたら30分以内には現場に到着し迅速解決する」ということを売りにした「優れた」組織も、それだけでは「場当たり的」でしかありません。
ボルドリッジ・エクセレンス・フレームワークの要約版、ソフトウェア・エクセレンス・ビルダーの成熟度の4段階は、ソフトウェア・エクセレンス・ビルダー【日本語版】で見ることができます。
※上のタイトル図は、「2011-2012年パフォーマンスエクセレンスへ向けての審査基準【対訳版】」(日本経営品質賞委員会、2011)より引用。翻訳GQF。