【ネジ巻き輪舞曲】第4章:ライスカレー
「住所ですか……そうですね、じゃあ、分かるところまで送ってもらうなら乃木坂までおくってもらえます?そこに会社がありますので。」
聡が住所を聞いてきたとき、私はとりあえず会社に行く必要があることを話した。おそらく、私にドッキリを仕掛けるためにどこか田舎の方に目隠しでもして連れてこられたのだろう。なんと手の混んだドッキリだ。
すると聡は、「乃木坂ってどこだ?」と聞いてきた。
「えっ、知らないってどういうこと?東京の真ん中くらいだよ。」
「東京の真ん中……そんな場所があるのか?」
彼の表情を見ると本当に知らないらしい。ああわかった。きっと彼は私の友達の知り合いで、地方にいる男の子で、東京のことは何も知らないんだ。私は東京からかなり離れたところにいるに違いない。
私は聡が驚いた様子を見て、「そうなのよ。でも、分からないならとりあえず乃木坂交差点くらいまで送ってくれれば大丈夫」と頼む。
「分からないって言ってるじゃないか。どうしようかな……。」
聡は悩んでいる様子だった。しかし、すぐに立ち上がり、「じゃあ、少し時間がかかるけど自分で探してくるから、その間に朝食でも食べてて」と言って、外に出ていった。
私は不安になりながらも、聡にお願いしたままに朝食を食べることにした。しばらくして、聡が戻ってきた。
「地図を見たんだけど、君が言う乃木坂ってところはどこにも見当たらないんだ。」
私はあきれてしまいました。「これはもう完全にドッキリなんだろうな。でもこのままじゃあ仕事に遅れちゃう。そろそろいい加減勘弁してくれないかな」と思いました。聡はどうしても「乃木坂」がわからないようでしたが、まあせっかく助けてくれるので、とりあえず道案内してもらうことにしました。
「じゃあ、六本木まで行ってください。その近くです。」
「麻布六本木だね。分かりました。ついてきてください。」
聡は、美咲の前を歩きながら、時折振り返って確認しています。私もその後
ろをついて歩きながら、周囲を見回していました。
「ねえ、電車の駅まで言ってくれればなんとかなるから。あなた東京知らないでしょ」
「失礼だな、麻布くらいなら僕でも歩いていけるよ」
「歩いていけるってどういうこと?」
しかし、道はどんどん分かれていき、聡の案内通りに行っていくと、だんだんと景色が変わっていきます。
「はい、到着したよ」
「あの、これって六本木ですか?」
「ええ、もちろん。ここは麻布六本木だよ。」
「えっ、どうみてもこれは私が知ってる六本木じゃないですけど・・・」
周囲を見回しても、高層ビルが立ち並ぶ街並みではありません。むしろ、木々が生い茂る閑静な住宅街が広がっていました。私は、この先にある会社がどこにあるのか、ますます不安になってきました。
「どうしたんですか?」
「ええ、いや、どこか違う気がするんですけど・・・」
「違うってどこが?」
「いや、ただ周囲が違うっていうか・・・」
絶対この人私をからかってる。そう思うと私はイライラが募ってきた。
「どうして、私をからかったの?本当に乃木坂も六本木も知らないの?」
私は聡に向かって怒りを露わにします。
聡は慌てて謝ります。「ごめん、本当に知らなかった。でも、六本木まで行ったらランチを一緒に食べない?ライスカレーが好きなんだよ。」
「そんな…もう帰りたいわ」と美咲が怒りながら言った。
「でも、せっかくだからライスカレー食べようよ。私のおごりだから」と聡が優しく誘う。
美咲は、少し気持ちが和らぎながら「そうね、ライスカレー食べると気分転換になるかも」と答えた。
そうして、二人はライスカレー屋に入った。美咲はライスカレーを食べながら、今日一日会社をサボって騙されたふりをするのも悪くないと思いながら、満足そうにライスカレーをほおばった。