【ラブコイン】第6話 絶交
私は、エルの名前を知るためにはやはり美咲から聞き出すよりほかにないことを悟った。
そこで私は、再びラブコインアプリを立ち上げ、今度は美咲の本名を入力し、29ラブコインを支払った。
「美咲に私を好きになってもらおう。好きになったら私に本名を教えてくれるはずだ」。
美咲は、自分が私を好きになっていることに気づいた。しかし、美咲はラブコインの存在を知っていた。名前を知り、顔も知っている相手の気持ちを買うことができるのだ。そして自分は今、百合子という人に自分の気持ちを買われてしまったことを悟ったのだ。
美咲は、絶対にラブコインを使わないことにしていた。ラブコインを使うと自分の好きという気持ちがどんどん少なくなることを理解していた。そして、エルへの強固な恋愛感情を維持し続けるために絶対にラブコインを使うことはなかった。
さからこそ、美咲のLを思うその気持ちは、29ラブコインそこらで買収できるものではなかった。
美咲は私に対して怒りを覚えるようになった。「百合子、本当にあなたはラブコインを使って自分の気持ちを押し付けるなんて信じられない。エルへの恋愛感情は自分で勝ち取るものでしょ?」
私は悔しさに涙を流しながら言った。「ごめんなさい、美咲。私はただエルのことが好きで、どうしても彼の気持ちを引き寄せたかったんだ。でも、美咲の気持ちも分かる。本当に申し訳ない」
美咲は私を見つめ、冷たい声で言った。「百合子、もう二度と話しかけないで。私たち、友達じゃない」
そう言って、美咲は私の前から姿を消した。その日を境に、私たちは絶交することになってしまった。私は悲しみに暮れた。美咲とのコネクトを失った今、エルの本名を知ることは不可能なのだ。