【ネジ巻き輪舞曲】第3章:カラーの歴史教科書
私は、目が覚めると小さな部屋にいました。部屋の中には、簡単な調度品が置かれていて、どこか懐かしい感じがしました。
機能のことを思い出そうとする私。確か、女子会の帰りに時計屋さんに言って、そこで高い時計を買って、そこから夢を見たのか森にいて、足をぶつけて、男性に助けてもらって……
足を見ると包帯がしてあった。服は、温泉旅行のときに着るような服を着ていた。見たこともない部屋にいることからも、あれは夢じゃなかったとだんだん思い始める私。
すると、窓から外を見ると、そこには驚きの光景が広がっていました。
それは、昔学生時代に教科書で白黒写真で見た街の風景、でも今はカラーで私の目の前に広がっているのです。
そこに広がるのは、昔話の中に出てくるような情緒あふれる浅草の町並みなのです。道路には、馬車や人力車が行き交い、屋台の前にはお祭り騒ぎのような賑わいがあります。鮮やかな紅葉の木々が街路に沿って植えられ、まるで美しい刺繍のように町を彩っているのです。私はこの町並みに魅了され、見入ってしまいました。
「失礼します」
私は襖の前で不意に声を聞きました。返事をすると、下から聞き覚えのある男性の声が返ってきました。私が立ち上がり襖を開けると、そこには昨日私を介抱してくれた聡が立っていました。彼は私の状態を気遣って訪ねてきたようでした。
「昨日は眠れましたか」
「よく眠れましたか?」と聡は声をかけました。
「はい、ありがとうございます。おかげでよく眠れました」と私は答えました。
聡はにっこり笑い、「それなら良かったです」と言いました。
しばらくして、聡は「朝食をどうしますか?ここで食べますか、それとも外で食べますか?」と尋ねました。
私は、「ここで食べるのもいいですし、外で食べるのもいいですね。どちらでもかまいません」と答えました。
「それなら、今日は私が朝食を用意します」と聡は言って、立ち上がりました。
「あの、すみません。この場所がどこか分かりますか?」と聞くと、聡さんが「ここは浅草の小さな下宿屋ですよ」と答えました。
私は、浅草という地名を聞いて、「えっ、浅草!?」と驚きます。私のいつも通る浅草とは全然様子が違うのですから。
「美咲さん。朝ごはんを作ってきましたよ」と聡が言いながら、手にはパンと卵料理が載ったお皿を持っていました。
「最近個々で流行っている欧州の食べ方です。ライスカレーでも食べれば、もう東京人ですよ」
聡は私の前にお盆を置いてくれます
「ありがとうございます、聡さん。」
「いえいえ、ところでおうちはどちらですか? 東京は広いので道に迷われたのでしょう。私も去年初めて東京に来て、ほんと 目を回しました。今日はちょうど授業がないので道案内させていただきますよ」
聡はとても誠実そうな男性であり、その顔つきから自分が信頼できる人物であると感じました。私は思わず、「あの、つかぬことを聞きますが、今年は何年でしょうか?」と聞いてしまいました。
「今年ですか、明治45年です。明治45年の7月29日です。」
「明治!?」と私は驚きました。この状況は何かの冗談のように感じられました。私は友達がイケメンの知り合いにお願いしてよくわからない冗談を仕掛けているのだろう、そう思いました。
「明治45年ってことは、最期の明治の年ですね」
「はい?」
私はこれでも歴史は結構知っている方だったんです。
「明治45年、1912年。辛亥革命によって中華民国ができた年。そして、明治天皇がなくなって次から大正時代になる。どお、私よくしってるでしょ!」
私は自慢気に答えましたが、聡の顔は曇り始めました。
「明治天皇……それってもしかして、天子様のことだよね。なくなるって崩御されるってこと!」
「そうよそうよ、いつだったかな……ちょっとググったらすぐ出てくるよ」
私は自分の勉強した知識で答えようとしたのですが、聡は真剣な表情で私に話し掛けました。
「君何言ってるの! そんな恐れ多いことを!」
聡は厳しい顔で私に言いました。
「君は小学校で勅語を読まなかったのか! 絶対外でそんな事言わないようにね。」