社長と恋とバターチキンカレー PART③
CEOエッセイ
~淡い恋の思い出編~
うちのCEO、目﨑は文筆業もこなします。(2011年には「幸福途上国ニッポン 新しい国に生まれかわるための提言」(出版社:アスペクト)を上梓)
そんな彼が、社内SNSに投稿したエッセイが、思いの他評判が良く、社外向けにも再掲することにいたしました。
CEOのキャラクター、そのおかげで生まれる自由でフラットな社風が伝わること間違いなし!
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大手町にある外資系の証券会社に就職した僕は、デリバティブという金融派生商品のトレーダーとして働いていた。
外資系といっても、基本的にはお堅い金融業界である。通常は、スーツでの出社だった。しかし毎週金曜日だけは「カジュアル・フライデー」があった。
のちにGPSSで一緒になる喜〇さんは、金曜日になると、寝間着のような短パンにヨレヨレのTシャツと、くたびれて色褪せたゴム草履で出社していた。
喜〇さんは、世の中のコスパを極限まで追求する「割安道」の、僕の師匠でもある。
吉野家で僕が特盛を注文した時に、「特盛を頼むなんて、トレーダーとして失格だ。腹減ってるなら、並を二つ頼め!」と怒られたことがある。特盛は割高らしい。
ちなみに当時喜〇さんは、早稲田にある学生用の安アパートに住んでいた。しかし乗っている車は、ベンツだった。彼にとって、早稲田の安アパートもベンツも、どちらも割安らしい。のちに彼は代々木上原の高級マンションに引っ越したが、箱買いしたチリ産ワインの木箱の上に、ホームセンターで980円で買ったコンパネを乗せたテーブルが、唯一の家具だった。喜〇さんの座右の銘は「七割引き」である。
彼はレストランに入ると、まず最初にメニューを隅から隅まで読み込み、価格設定に歪みがないかを瞬時に判断する。だから注文するのは、一番店が儲からないものである。天ぷらの「てんや」では、ご飯の「小盛」が割安だからと、かなり空腹な時でも小盛を頼んでいた。
そんな喜〇さんなので、服装に関しては、割高なブランド品には目もくれず、機能性とギリギリの見た目を保てればよかった。ちなみに、アディダスのスタンスミスというスニーカーだけを、過去40年以上、のべ100足近く履き続けている。
ある日、社内に通達文が配布された。
「毎週のカジュアル・フライデーの件について。
オフィスはビーチではありません。金融のプロとして相応しい服装で出社してください」
広いフロアを見渡しても、短パンTシャツ、ビーチサンダルで出社していたのは喜〇さんだけだった。
さすがにマズイと思ったのだろう。それからの金曜日は、「他人の印象と社会性」という価値が割安道に加わり、彼なりに未知の領域までアップグレードされた。
その日以来彼は、全身がユニクロになったのだった。
毎週金曜日には、もうひとつのイベントがあった。
モティ・バターチキンの日だった。
つづく
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