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チッピングガードを生かしたリペア


車のサイドシルです。

前から後ろまで20センチくらいの凹みですね。

このサイドシルにはチッピングガードという、飛び石からボディを守る分厚いゴムのような塗装がされています。

サイドシルの真ん中から下にかけて厚くてボコボコしているような塗膜ですね。





従来の鈑金塗装修理ですとチッピングガードを含めた凹んでいる部分の塗膜を剥がして、スタッドやハンダを溶着させての引き出し方法になると思います。

ですが、このくらいの凹みであればGPR(グループルリペア)が活躍しますね。

※ GPRとは、グルー(接着剤)を使用した引き出し方法です。

塗膜を剥がさずに引き出すので、チッピングガードもそのまま残した修理が可能になります。

チッピングガードを剥がしてのリペアですと、このチッピングガードを塗装し再現しなければなりません。

それが難しいらしいんですよね(塗装屋さんがやるので僕は分かりませんが)



KECO センチピードタブ

KECOのタブにグルーを塗布しパネルに接着させ、タブにアダプターをかけてスライドハンマーで引き出します。


上と下は出てきましたが中心部がまだ入ってますね。

上と下の出しすぎた部分を叩きならし、細いタブに変えます。


アダプターも10センチから5センチに変えます


中心部を重点的に引き出したいのでタブの長さは変わっていませんがアダプターを短いのに変えました。

この短いアダプターを使用することで、より中心から引き上げる効果があります。


また、高い部分を叩きならし


さらに細いタブに変えます。


大まかには出せましたかね。

あとは細かい凹みの部分を引き出しつつ高いところを叩き落としていきます。


凹みに合ったタブで引き出し、高くなった部分の叩きを何度も繰り返します。



完成

チッピングガードに少しいびつなラインみたいなのが入っている感じですが、反対側もこのような形でしたので直しきれてないとかではないですから😅


あとはサイドシルのガーニッシュを外して塗装屋さんにパスです。

このくらいの仕上がりですとチッピングガードは触らず、上の部分はサフェーサーで仕上げたようです。


使用したポンチやタブ、スライドハンマーなど



今回のような損傷もGPR(グループルリペア)により、塗膜を剥がさずにチッピングガードを生かしたリペアが可能になります。

GPRを使いこなすことで、パテをつけませんしチッピングガードを塗装する必要もなく、材料をなるべく使わないリペアができます。

さらにデントリペア(無塗装の仕上がり)になってくると塗装すらしなくても良いんですよね。

今回は鈑金塗装での依頼でしたので塗装(色とクリアー)もしますが、鈑金塗装より安く済ませるのであればデントリペアでも良かったかもですね。


僕の勤めている鈑金塗装店ではデントリペアの看板を出しているわけでは無いので料金設定がキッチリ決まっているわけではありません。

ですので、地元のデント屋さんを参考にしたりしています。

ちなみにデントリペア屋さんの料金設定は(お店によって違いはありますが)
ざっくりと

1センチの凹み 8800〜13200円
2センチの凹み 13200〜16500円
3センチの凹み 16500〜19800円
4センチの凹み 19800〜22000円
5センチの凹み 22000〜24200円

6センチ以上 お見積もりのお店もあれば
10センチまで 33000円というお店もありますね。

※すべて税込


例えば今回のサイドシルの凹みは20センチですので、お見積りになります。


以前、ビックデントをよく手がけているデント屋さんに、大きな凹みの金額はどう決めているのか聞いてみたことがありました。


そのかたによると

・基本的に鈑金塗装の金額より高くなることはない。

・ケースバイケースだが鈑金塗装の金額の7掛けくらいかなと。
 歪みの残り具合でも変わってきますが。

とのことでした。


ですので今回のサイドシルの鈑金塗装の金額が、例えば8〜10万円だとしたらデントリペアなら5万6千円〜7万円の前後といったところでしょうか。



と言いつつデントリペアの仕上がりに持っていくには、ここからあと1時間くらいはかかりますし、塗膜の剥がれのリスクもあるので「絶対にできます」とは言い切れませんが😅

しかも少し歪みが残ると思います。

デントツール(鉄の棒)で裏から押し出せれば、けっこうな完成度までイケますが

やはりプーリング(GPR)ですとデントツール(鉄の棒)での押し出しより完成度は落ちますね。

凹みによってはプーリング(GPR)でもデントツール(鉄の棒)での押し出しと遜色ない仕上がりも可能ですが、今回の凹みは厳しいです😅

強めの芯が複数あるんですよね。それを出し切るのが難しい。

時間をかければ出し切れるかもですが、金額と見合わなくなってきますので。


※デントリペアでのグルーの引き出しは「プーリング」といいます。

※サイドシルはツール(鉄の棒)が入らないケースがほとんどなので、たいていはプーリング(GPR)でのリペアになります。




今回はサイドシルの凹みをGPR(グループルリペア)によって、チッピングガードを剥がさずに鈑金塗装することができました。

材料をなるべく使用しないリペアが可能になりましたね。

GPRを使いこなすことで、鈑金塗装の可能性が広がります。



以上、ありがとうございました。

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