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プロダクトの外側も含めて考える。マルチプレイヤーが生み出すビジネス✖️デザインの可能性
Goodpatch Anywhere(以下、Anywhere)のマルチプレイヤー、神田幸秀。「デジタルだけをデザインするのは嫌だった」と語る彼の捉える射程は広い。ビジネスとデザインが出会うとき、実現できるサービスの可能性は、どんなふうに開かれていくのか? 特殊な経歴について掘り下げつつ、デザインの対象について考えたメンバーインタビュー。
会社の看板に頼らずに仕事ができる人間になりたかった
——神田さんのキャリアについて教えてください
新卒で入ったのは大手IT企業で、法人営業からのスタートだったんです。2、3年目からはプロジェクトに参加し、システム開発のPMや、コンサルティング案件を担当するようになりました。大規模な案件に関ることができるのは面白かったのですが、一方で、つくったものの実感を得にくい状況でもありました。次第に、「いま自分が身につけているものは、ごく限定的な領域でのみ通用するスキルなのではないか?」という疑問を抱くようになったんです。この会社の看板がなくなったときに自分は仕事ができるのだろうか、と。
結局、新卒で入った会社は5年ほど勤めたところで辞めて、スタートアップに転職しました。
——大手IT企業から、スタートアップに。大きな変化ですね
そうですね。当時の自分にとって重要だったのは、「会社の看板に頼らず仕事をすること」と、「つくったものが目に見えること」でした。だから、転職したスタートアップでは、できるだけなんでもチャレンジするようにしました。ECサイトに載せるコンテンツ制作や、広告営業に近いような業務にも携わりました。
そこで経験を積んだのち、仕事を通じて声をかけてくれた知人に誘われ、より小規模なスタートアップの役員になったんです。マーケティングツールを販売している会社です。そのタイミングで資金調達をしたりして。開発以外のすべてをやるぞ、という感じでしたね。
——経営に携わるようになって変わったことは?
当時の僕は売り上げをつくる側の人間だったわけですが「自分にもっと、プロダクトをつくるための経験や知識があれば良かった」と思わされた瞬間は多かったです。クライアントにプロダクトを届ける役割を担っていたけれども、「クライアントが本当はどんなふうに物事を捉えているのか」とか、「言葉にしなくても必要にしているであろうことはなにか?」とか、そういう情報を、開発チームにフィードバックしていきたかった。
そんな歯痒さを感じていたタイミングで、新しいプロダクトを開発をしようというプロジェクトが起こり、そこでご一緒したデザイナーの方々の仕事ぶりから刺激を受けたんです。「こういう理由があって色はこれ」とか、「人間の認知はこうなので、ここにボタンがある」とか。非常に論理的にデザインをやっていた。UIUXという領域は面白いな、勉強したいな、と思いました。
また、そのタイミングで「デザイン思考」という考え方が日本で流行り始めたんです。いわゆる絵をおこしていく表層的なデザインだけでなく、仕組み側を設計していくサービスデザインやUXデザインの領域にとても興味を持ちました。そこで、2017年、ロンドン芸術大学に入学しました。サービスデザインについて勉強して、修士号を取得して帰国したら、ちょうど日本でもUXやサービスデザインが必要とされる潮流がきていた。じゃあ、それを仕事にしようと思って、Anywhereにジョインしました。
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デジタルと非デジタル、どちらもデザインの射程
——Anywhereを選んだ理由は?
UIUXに関わる仕事をするのであれば、デジタル以外も対象にしたいと思っていました。デジタルの体験と非デジタルの体験、どちらにも関わってくるのがデザインですから。そして、自分のバックグラウンドにはビジネスの要素もあるので、事業におけるデザインというのも重要でした。スキルや知見を活用しながら、事業やビジネスに寄与していける、という観点ですね。
そう考えたときに、すべての一つの組織で満たす必要はないという結論になったんです。フリーランスになって、自分でどちらもやればいい、と。いまは、デジタル領域のデザインをAnywhereで担い、それ以外の領域を、別の組織で手掛けています。自分でポートフォリオを組むような感覚です。
——デジタルのデザインと非デジタルのデザインに、同じくらい関わっていたい、と
そうですね。UXデザインって、プロダクトだけではなくて、それが置かれる空間や、事業そのものも射程に含まれていると思うんです。だから、いまは現場に入ってお客さんの生の反応に触れたり、スタッフさんのオペレーションを見たり、そういうことを大事にしています。デジタルプロダクトのデザインというと、どうしてもスクリーンのなかで考えてしまうけれど、実際には、非デジタルもデジタルも重要な要素で、それらをうまく組み合わせないと理想のサービスは実現できない。
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みんなが頑張ってつくりあげてきたものが、いまの自分の働き方の一部になっている
——神田さんは、Anywhereにジョインして5年ですが、働き心地はどうですか?
この組織にいると、案件ごとに毎回違うメンバーで組むんですよね。とはいえ、長くやっていると勝手知ったる人たちがそばにいることも割とあって、安心感がありますね。フリーランス同士だけど仲間という意識が持てる。お互いの力量がわかるし、行動様式がわかるから、価値を出すことに集中できる。
基本はやっぱりみんな、フリーランスなんです。プロフェッショナルとして、一人で立っている。自分の力で身を立てている人々だから、職業倫理がとても高い。そうした素地に加えて、Anywhereというコミュニティにおける行動様式が重なったことで、ただのフリーランスの寄せ集めではない組織になったんだと思います。
Anywhereの、コミュニケーションの質を上げ方だったり、話し合いながらアイデアを検討して物事を前に進めていけるようなやり方は、みんなが頑張ってつくりあげてきたものだなって思います。自分のいまの働き方の一部にもなっている。
——今後、挑戦したい領域は?
僕は、たとえばWebサイトのリニューアルをする際にも、その前後を考えてしまうタイプだと思います。周辺領域も含めて捉えていきたい。だから、事業やビジネスの全体を射程に入れた上でのデザインに関わっていたいですね。できるだけ広く、いろんなものをデザインの対象にしていたい。
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神田 幸秀(かんだゆきひで)
上智大学卒業後、日本アイ・ビー・エムに入社し法人営業・PM業に従事。その後スタートアップのCOO職を経て、University of the Arts Londonに留学、Master of Designを修了。デザインコンサルティング会社で業種や企業規模問わず事業開発やブランドコンセプト・戦略の策定、デジタルサービスの開発などを手がける。
Goodpatch Anywhereでは、一緒に「デザインの力を証明する」メンバーを募集しております!インタビューを読んで少しでも気になった方はお気軽にお問い合わせください。