いつまでもプレイヤーでい続けるために。UIデザイナーが語る、チームでデザインすることの意味
Goodpatch Anywhere(以下、Anywhere)でUIデザインのスペシャリストとして活動する佐藤岳彦。「ユーザーがデータを活用できて生活や仕事が便利になる、そんな体験を提供してくれる UI が好きです」と語る彼は、個人デザイナーとして17年間活動してきた。いまチームでデザインをする理由とは? プレイヤーでい続けるために必要なこととは? デザイナーとして最適解を追求することと、他者と対話することとの関係について掘り下げたメンバーインタビュー。
道具っぽいデザインに共感を覚えるタイプだった
——佐藤さんの経歴を教えてください
デザインの仕事を始めたのは、大学生の頃からです。専攻は経済学部でしたが、個人的に興味があり、知人の伝手で映像制作の手伝いをしたり、Webデザインの案件を受けたりしていました。地元のテレビ局のジングルや、東京の企業のパンフレットを作ったりもして。ホームページ経由で依頼がくることが多かったですね。
大学を卒業した後、音楽関係のベンチャー企業に入りましたが、ほどなく、そこが買収されることになり独立を決意しました。あの頃は、一企業がWebサイトにかける予算というのは現在よりもずっと小さかったので、個人のデザイナーが大企業の公式サイト案件を受注したりしていたんです。自分でデザインし、コーディングまでを一人で完結する形でした。
——佐藤さんは2019年にAnywhereにジョインしたんですよね。当時のきっかけは?
UIデザインの仕事をもっと増やしたいと思っていたんです。個人での仕事を続けていくなかで、徐々にUIデザイン関連の組織と繋がるようになって。自分がもともと、ロジカルなデザインとかインフォグラフィックをつくる作業なんかが好きだったので、情報を整理するなかで「足し算ではないかっこよさ」を追求することに興味がありました。いわゆる「派手なデザイン」よりも「道具っぽいデザイン」に共感を覚えるタイプだったんです。だから、UIデザインに触れたときは「こういうことができるんだ」という喜びがありました。こんな仕事を増やしていきたいと思いました。
最適解を求めて自分がつくったものに対して、同じデザイナーからのレビューがもらえる
——Anywhereにジョインして、仕事の内容は大きく変わりましたか?
僕は、Anywhereに入ってから初めてFigmaを使いました。ずっとAdobe XDで作業してたので、初めて触った時は「癖が強いな」と感じました。でもやっぱり共同作業ができるのは新鮮だったし、仲間ができた嬉しさは大きかったです。
——チームでデザインする環境は、佐藤さんにとって心地よいですか?
そうですね。個人での仕事というのは基本的に孤独なものです。17年くらい、ずっと一人で完結するような仕事をしてきたし、もともと人見知りなのもあって、最初は自分が馴染めるか不安でした。でもやっぱり、みんなが温かく迎えてくれたので。新しい人をよそ者扱いしない、というか。
僕は、経歴や年齢でみると「ベテラン」ではあるのですが、そういうことで距離を置かれたりしない、あまり関係ない接し方をしてくれる組織なのが、すごくいいなあと思います。
——たしかに、制作案件でスクラムを組むと、社を跨いでの「格付け」のようなことが行われたりしますね
そうなんです。でも、Anywhereの場合はそういうことが生まれにくい土壌がある。チームにとっての明確なリーダーをあえてつくらないようにしていますよね。それがすごくいいと思います。
——ほかの人の制作したUIに触れるなかで学びになることも?
あると思います。UIというのは、絶対的な正解があるわけではないけれど、最適解はあるんですよ。少なくとも自分の中では、これまで学んできたことやサービスの内容を掛け合わせて、最適解を追求していける。そんなふうに自分がつくったものに対して、同じデザイナーがレビューしてくれたりするので、それはすごく学びになってますね。
——佐藤さんの中での経験やロジックに基づくガイドラインがあって、それを一つずつ適用していくと最適化された制作物ができる、ということですね
はい。でも、「セオリーとしてはこうだけど、今回のケースではこっちの方がいい」みたいなことがあって。もちろん案件のたびにそれを模索していくんですけど、自分では気付けない視点もあるので。メンバーからのレビューで初めて見つけられる。
——UIの最適解はあるけれども、仕上がったものをみると「その人らしいデザインだな」と感じることはありますか?
人は出ると思います。僕も、「佐藤さんっぽいデザインですね」と言われたりするので。
手を動かし続けていたい。いまの仕事をずっと続けられたら
——プロジェクトでは、佐藤さんはどんな役割で動くことが多いですか?
ポジションとしては「リードデザイナー」のような扱いのことが多いですが、僕個人としては「ほかのデザイナーと一緒にやる」という意識ですね。メンバーを意識的に動かしたり、そういうことはしていないかもしれない。自分自身がプロジェクトに対して積極的に関わっていくようにはしています。僕は個人での仕事が長かったこともあって、「短い時間でマネジメントをするだけ」というふるまいが苦手なタイプなので、プレイングマネージャーのような形で入れてもらえるようにしています。
——意識としては「デザイナー」であることからぶらさない、と
うん、そうですね。そう思います。
——複数人でデザイン作業をするときには、どう分業していくんですか? たとえば、最初にデザインシステムをつくるのか、エリアごとに分けて作業をするのか
デザインシステムのようなものは、いきなり最初にはつくれないなと思っています。ある程度実際の画面をつくっていくなかで、「こことここは共通だよね」とか「ここはこれぐらいのサイズだよね」ということが見えてくる。それを吸い上げてシステムに落とし込んでいく。
で、一度そのベースになるものができたら、それを見ながら各々のメンバーが作業をしていき、最後にまた調整をかけます。みんながそういう意識を持ちながらデザインしてるのが面白いなと思います。「いま自分で作業をしているけど、後でこれを合わせていく」って思いながら手を動かしている。
個人の仕事の場合は、自分でつくって、自分がいいと思える状態でお客さんに渡すので、Anywhereでやっている作業とは全然違いますね。
——今後チャレンジしたい領域は?
いまの仕事をずっと続けられたらなって思っています。手を動かすことが好きなので。それから、インフラっぽいデザイン、というのが、自分が一番やりたいことなのかなと思っています。仲間と一緒に学ぶことも好きなので、OOUIやデザインシステムに関する資料を、興味のあるメンバーで集まって輪読する機会をつくったりしています。一人だとなかなか進められないことも、みんなを巻き込んでいけるのがAnywhereのいいところですね。
この記事は Goodpatch Anywhere Advent Calendar 2024 3日目の記事です。