大人のための主体的な学び舎@北海道に参加してきました。
1. はじめに
デンマーク発祥の「フォルケホイスコーレ」は、大人が主体的に学ぶ場として世界的に注目されています。その自由で柔軟な教育スタイルをモデルにした学び舎が、北海道にあることを知り、仕事の休みを利用して参加してみることにしました。
きっかけは、転職の合間に少し立ち止まり、自分自身をゆっくり振り返りたかったからです。都会で予定を詰めがちなので、自分との時間をたっぷりとり、自然豊かな場所で、余白のあるプログラムを通じて内省を深められるのではないかと期待して参加しました。
2. プログラムの概要
学び舎は、北海道の広大な自然に囲まれたロケーションにあり、その環境自体が学びの一部となっていました。提供されるプログラムは、ワークショップ、アクティビティなど、リトリート要素も含まれていました。
コースは大きく3つあり、①1週間ほどのショートコース、②1か月ほどのミドルコース、③2か月半のロングコース。その中で私はショートコースに参加してきました。
参加者は15名ほどで、保護者と一緒に参加した中学生、高校生から定年退職後の60代まで幅広いメンバーが居ましたが、女性が多めだなという印象でした。
雪山を上り野点を頂いたり、早起きして朝日を見たり、日々のワークショップや体験、共同生活を通じて初対面の仲間たちと心を開いて話す機会が得られた一方で、余白が多い点は魅力的だったものの、プログラム設計に若干の甘さも感じました。
その点については、運営側との対話がスムーズに進まないこともありました。例えば、「こういうこともしてみたら良さそう」と提案をした際、運営側にスムーズに意見を受け取ってもらえませんでした。提案はあくまで対話のきっかけとして伝えたのですが、なんだか苦情かのように受け取られてしまい、オープンに本音で話そうというスタンスの場だと信じ提案をしてみたので、嫌なことを言う人かのように扱われちょっと哀しかったです。
対話の場づくりを目指している運営として、もう少しオープンな姿勢を期待していただけに、この点は少し残念でした。こんな感じだと、言いにくいことが言いにくいことのままになり、伸びしろがそのままになってしまい場の改善がなされないままになってしまいそうな気がします。(余計なお世話なのかもしれませんが)
3. 体験して感じたこと
それでも、この学び舎で得た時間には大きな価値がありました。職業や年齢のことはあまり話さずに仲良くなった共通言語のある素敵な仲間たちと出会えたことは、何よりの収穫です。参加後も彼らと旅行に出かけたり、頻繁に連絡を取り合ったりしており、出会ってまだ1年も経たないとは思えないほどの深い関係性を築けています。
また、北海道の壮大な自然の中で過ごした日々は、心身をリフレッシュさせてくれる素晴らしいものでした。日常から離れ、風景や空気に癒されながら、自分自身と向き合う時間を持てたことに満足しています。
運営との会話に残念さを感じつつも、2つの気づき・学びもありました。
1つは、素敵だなと思うサービスやプロダクトがあると、ついつい惜しいポイントと改善案を伝えたくなる自分の勝手にプロデューサー性質です(笑)
今回初めてではなく、思い返すとこれまでも参加した組織に物申し勝ちな気がしますが、これまでは「そんなことまで気づいてくれてありがとう!」と感謝されることがとても多かった気がします。ユーザー視点でサービスを体験した後で、その気づきをサービサー側に立ってどう改善できるか?という思考にすぐなってしまいます。
もう一つが、そういう提案をする際に、各論否定(改善提案)から入らずに、もっと総論への愛(「このサービスのこんなところが好き!だからこそ言わせてもらうけど...」)を語りすぎなくらい語った方が、受取りやすい人も多くいるだろうことです。これは運営との対話に一緒にトライしてくれたメンバーから指摘をもらいました。自分では総論への愛を伝えているつもりでしたが、枕詞的にサラッと流しすぎだから、今が「総論への愛」:「各論惜しいポイント」=1:9なのを逆転させてもいいくらい。喋る比重としては逆転させた方が本当に伝えたいポイントがスッと伝わるタイプの人もいるよと教えてもらいました。
総論への愛を省略し各論談義に入ることで、素敵だから惜しいポイントの議論をしているのに、ネガティブな部分だけが伝わってしまう、これまでも他者へ不本意な伝え方をしてきてはいないだろうか?とも反省する機会になりました。
4. フォルケホイスコーレの意義
この学び舎は、地域活性化と個人の内省を両立させる可能性を秘めているなと思います。この取り組みがもっと洗練され、参加者との対話や運営の透明性が向上すれば、日本社会における新しい教育の形としてさらに発展するなと思います。
また、組織開発の観点から見ると、この学び舎のような場は、異なるバックグラウンドを持つ人々が集まり、互いに刺激を与え合いながら新たなアイデアや価値観を共有できる貴重な機会を提供しています。特に、参加者同士がフラットな関係で意見を交換できる環境は、組織内のサイロ化を防ぎ、多様な視点を取り入れる上で非常に有効です。さらに、リトリートという形で一時的に日常を離れることで、普段は見えない課題や可能性を認識しやすくなる効果も期待できます。
キャリアライフの長期化やジョブ型雇用が進む日本において、こうした場の重要性はますます高まると考えられます。一生涯を通じて学び続ける姿勢が求められる中で、この学び舎は新たなキャリアを模索する人々にとってリフレクションとリフレッシュの両方を提供する貴重なリソースとなるでしょう。多様な背景を持つ参加者との交流は、新しい働き方や生き方のヒントを得る機会にもなります。
このような場が全国各地に広がれば、より柔軟で創造的な組織文化の醸成に寄与するのではないかなと組織開発に興味のある立場では、思いました。
5. おわりに
この学び舎での体験を通じて、私は改めて新しい視点での自分を見つけられました。小さな不満点もありましたが、それを補って余りあるほどの収穫がありました。この場所を訪れることで得られた気づきと人との出会いを大切にしたいなと思います。
もし、自然の中で自分を見つめ直し、新たな一歩を踏み出したいと考えている方がいれば、ぜひ東川町の学び舎を訪れてみてください。