台風と雄町
台風シーズンである9月はいつも雄町の様子が気になって仕方がない。
幸い「晴れの国おかやま」と呼ばれるくらいで、台風が直撃することはあまりないが、被害はゼロではない。
今回の台風10号が過ぎ去った今日も、真っ先に農家さんに電話して雄町の無事を確認したところだ。亡くなった先代の父がそうしていたように。
背丈が150㎝にもなる雄町は倒れていないだろうか?
それにも増して心配なのが受粉のタイミングに重なっていないだろうか?
晩生品種である雄町は8月下旬から9月上旬に出穂し、その後稲の花が咲き、受粉する。
一度だけ、そのタイミングに雄町の生産地を台風が襲ったことがある。
平成17年(2005年)のことだ。当時はまだ先代の原田巧杜氏、6代目の父の時代だった。
ちょうど雄町の花が咲く時期に台風が襲い、うまく受粉せずに実らない田んぼが続出した。結果、大量の規格外の雄町米ができてしまった。
特定名称酒には使えないが、何とか酒造りに使えないだろうか、という産地からの声が届き、ほぼ二つ返事で引き取りを決めた。
当時はまだまだ生産量も多かった普通酒の使用米を、平成17BYは全て規格外雄町に変更した。
当時は自家精米と言って、自社内に大型の精米機があり、それで精米していたのだが、その規格外の米で相当傷んでしまった。倒れた稲を刈り取るため、除去しがたいほどの石を巻き込んでおり、その石が精米機の米を削る「金剛ロール」にたくさんの傷をつけてしまった。
また、草ねむと呼ばれる夾雑物も多く、蒸米から手作業で取り除くしかなかった。苦労は多かったが、生産者と共に生きる先代たちの姿勢に多くを学んだ年だった。