2020年11月2日 早朝から決戦の場所「瀬戸町ライスセンター」に向かって車を走らせる。 最高級の雄町米を目指すプロジェク2年目の挑戦。その結果(等級検査)が決まるとあって、眠れぬ夜を過ごした。数日前から何だか落ち着かないし、前夜は夜中から強まった雨音のせいもあるとはいえ、うたた寝を繰り返すうちに朝になってしまった。 瀬戸町ライスセンターは600キロのフレコンを受け入れて検査する場所で、雄町の比較的規模の大きな農家さんの米が並んでいる。 100以上並んだ黒い皿のひと
「2.1mmの篩にかけたら皆落ちてしもうた。」 「今年は実が細い」 10月中旬から雄町米の農家の方からそんな声が届き始めた。 10月28日、今年初めて雄町米の検査に出向き、初めて玄米を目にした。 予想はしていたが、予想以上に出来は良くなさそう。 意気消沈しながら#特上雄町プロジェクト 生産者の岡本さんのライスセンターに向かった。 ちょうどその米を2.2mmの篩で調整しているところだった。 2.1mmでも難しいのに、2.2mmは無謀ともいえる。 しかし、岡本さんの米はちゃん
2020年10月20日 #特上雄町プロジェクトの圃場の稲刈りをすると、生産者の岡本さんからLINEが。その日は朝から酒の仕込み、さば寿司の仕込みと作業が立て込んでおり一瞬、逡巡した。蔵人の「杜氏さん、そりゃぁ行かにゃぁいけん。」との声に背中を押されて車を走らせた。 場所は岡山市東区瀬戸町塩納地区。赤磐雄町の里だ。いつもなら、たわわに実った雄町の稲穂はその重みでお互いもたれあうように、しな垂れているが、今年はしゃんと立っている。 長梅雨の影響で背丈が低く、穂長も短い。それで
構想から一年半、#特上雄町プロジェクト の初年度の挑戦の酒がやっと形になりました。 雄町を育てる農家 雄町の酒を造る蔵元 その酒を納める木筒 携わった人の想いの込められた酒は、必ず飲み手の心に届く。 スペックではない、雄町の里の風土を感じて下さい。 届け~!
岡山県立興陽高校は高校生が雄町を栽培しているのをご存じだろうか。おそらく全国でもここだけではないか。杜氏になってから2年に1回社会人講師として生徒に雄町とお酒の話をしているのだが、今日がその日だった。 高校までは車で約2時間ほど。せっかくなので高校に行く前に地元真庭市の雄町の圃場を見学。講義のあとは気になる#特上雄町プロジェクトの圃場と3か所をはしごしてみた。 まずは地元真庭市鹿田の田んぼ。 手前が雄町で奥が一般米。その差は歴然。雄町は8月末に出穂し、ようやく実り始めた
台風シーズンである9月はいつも雄町の様子が気になって仕方がない。 幸い「晴れの国おかやま」と呼ばれるくらいで、台風が直撃することはあまりないが、被害はゼロではない。 今回の台風10号が過ぎ去った今日も、真っ先に農家さんに電話して雄町の無事を確認したところだ。亡くなった先代の父がそうしていたように。 背丈が150㎝にもなる雄町は倒れていないだろうか? それにも増して心配なのが受粉のタイミングに重なっていないだろうか? 晩生品種である雄町は8月下旬から9月上旬に出穂し、その後
蔵元のある真庭市は古くから「木材のまち」として知られています。大小さまざまな製材所が点在し、現在はCLTなどバイオマスのまちとしても有名になってきた。 御前酒最高峰の酒「特等雄町2.2」を入れる木箱は、何としても地元の木材で、ふさわしい箱をゼロから作り上げたい。 そんな想いから、真庭市役所林業・バイオマス産業課の力をお借りして1年以上かけてオリジナルの什器を制作した。その名も 「総檜八角酒筒(そうひのきはっかくささづつ)」 手掛けるのは同じ真庭市の「木工房もものたね」
2000年に蔵に戻って、最初に感じたこと。 「え~?こんなことも機械じゃないの?手でやるの?(心の声)」 その中で最たるものが麹の種切り作業。 当時のおやっつぁん(先代の杜氏さん)に言われたのは 「米がひとつぶひとつぶになるようにほぐして、薄く広げて」 「はいっ!」 黙々と広げる作業に集中して、ふと向かいで作業するおやっつぁんの方を見る。 「やばい。私の半分の薄さだ。やり無し~」 真冬でも30℃以上ある麹室での作業は1時間以上。キツイ。 汗だくで外に出るとそこは室温5℃。
2007年に杜氏になった時に、自分たちの新しい形の「御前酒」を追い求めた。お酒というのは太古の昔からある神聖な飲み物。長い歴史の中で発展しながら現在の製法が確立されてきたが、日本酒の世界はまだまだ未知の部分も多い。 現在の日本酒の製法は、安全に、かつ大量に造ることができるように改良されている。醸造用の乳酸を添加したり、純粋培養された酵母菌を添加したりするのが教科書通りの製法だ。 しかし、そんな製法は長い歴史の中で現代のごくわずかな期間のことだ。それ以前も日本人は様々な菌を
瀬戸町雄町部会の雄町米の等級検査は早朝から行われ、すべての米の検査が終わると、生産者の方や検査員の先生一緒に目の前にある喫茶店「桃園」でモーニングセットを食べるのが通例だ。 狙っていた「特上」を逃した悔しさをぐっとこらえながら、来年こそはとの思いでどうやったら「特上雄町」ができるか、色んな人に聞いてみた。 要素は様々ある。天候、日照時間、積算温度、施肥・・・その中でみんなが口をそろえて言っていたのが「地力(ちりょく)」だ。 私もおぼろげにしか理解していないが、どうも稲を
雄町米への熱い思いがたぎっているので つい米の話になってしまいがちなので、お酒の話も少し。 岡本さんの特等雄町は新中野工業さんで40%まで精米したのちに 特別な密閉式の袋に入って入荷されてきました。 空気や湿気を吸わないので、米の割れを防ぐことができます。 ぴかぴかで、ビーズのようです。 初めての米洗いは超緊張です。洗って水につけるとみるみるうちに米が水を吸っていきます。ここぞ!というタイミングで水から引き上げるのですが雄町の場合は10秒狂うと吸い方が全く変わって
お酒に使用するお米には醸造用玄米の検査規格というのがあり、その一番上位の規格が「特上」です。特上、特等、1等、2等、3等までがあり、この規格に入らないものが規格外となります。 瀬戸の検査員の額田先生は大ベテラン。私が生産地に通い始めた2000年頃からずっと瀬戸の雄町を見つめ続けてきた方です。 2019年11月吉日、この日は岡本さんの米が検査に出るとの情報をゲットし、早朝から車を走らせました。そこには大勢の農家さんと額田検査員の姿が。その日の米はすべて特等と1等というす
昨年BY1の造りでは雄町米の使用比率は玄米ベースで74%、さらに次の造りでは普通酒などにも規格外雄町を使用し、その比率は9割に届く予定です。 ここに至るまでは、数えきれないほどの先人たちの力がありました。 先代の杜氏と父である六代目が雄町にほれ込み、地元岡山の蔵が大量に、継続的に雄町を使い続けなければ雄町の品質や生産量は向上しない、と考えていた1995年、御前酒はひとつの大きな決断をします。 それは、御前酒の大定番の「純米 美作」の使用米を日本晴から雄町に変更することで
誰が見ても困難な#特上雄町プロジェクト に賛同し、手を挙げてくれたのが岡本岩男さん。(写真右) キリンビール岡山工場にほど近い、岡山市東区瀬戸町塩納地区は雄町が穂を出す9月には朝もやが立ち込め、朝晩の寒暖差がある雄町栽培に適した場所。ここで親子二代にわたり雄町を栽培している岡本さんは口癖のように 「米作りは趣味じゃけぇ。ただ良い米を作りたいだけなんよ。」 とおっしゃる。趣味という言葉の裏には、金を稼ぐためではない、良い品質の雄町のためなら寝食を忘れて打ち込むことができる
2019年6月吉日、雄町のベテラン生産者の集まる#瀬戸雄町部会 で雄町の生産者の方に直談判しました。 「最高品質の『特上』を付けた雄町が欲しいんです。難しいのは重々承知しています。何年かかっても良いんです。20年以上おつきあいのあるみなさんと一緒に、岡山の雄町で岡山の蔵が最高の雄町の酒を造りたいんです!」 「特上やこぉ、できるわけねえがな。(特上なんかできるわけない)」そんな声が飛び交いました。ベテランだからこそ、それがとうてい達成できる目標でないことが分かります。肩を落と