森へ入る
水は低い場所へ流れるという
力学的な当たり前もある訳で
虚栄心なんかが戯言だという意味もよく分かる
夜に仕事へ出る前に
3歳の息子に行ってくるよ〜と声をかけると
「はるきは森に入りたいんだ」と言う
え?森?
「森はうるさいから静かに歩かないといけない」
村上春樹の登場人物のようなことを言うので
思わず吹いたけど
でもそんな、シュールな絵本の一節みたいなセリフは嫌いじゃないよ
仕事は終わると
新宿から原宿、渋谷、池尻、三茶、駒沢を抜けて、新二子橋を渡るルートで帰途に就く
橋の上から見えるマンション群を見た時
学生時代に観たシュールリアリスト達の絵画作品が幾つか思い浮かんで
サルバドール・ダリの作品、題名まで知らなくてググる
球体のガラテア、
聖アントワーヌの誘惑、
燃えるキリン、、これは最近知った作品
いつだったか
夜中12時に仕事が終わった時
皇居の辺りを車で帰宅して
ふいに未来のこととか考え出したら
思考が圏外へ飛んで
車のほとんど通らない皇居の周りだけ
遠い惑星の気配を切り取ってきたような錯覚が1000年後のことを思わせた
ただ1000年後のこの辺りの景色を想像しても
古い映画で観たことのある
月面のような砂漠が広がっているだけだった
あら、私の想像力は、そんなものでした
どうして森はうるさくて
僕達は静かに歩かなければいけないの?
息子にそんな質問は野暮だよな
息子はもう寝てるだろうな
恐竜柄のパジャマで
口をポカンと開けて
今日も一日が終わろうとしている
水が低い場所へ流れていくような一日
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