祖母の庭
ここ数日思い出すのは
祖母宅の庭で摘んだ花を生けたことで
庭を歩いて集めた草花を
叔母がどこからか持ってきた花瓶に生けた
103で亡くなった祖母は
普段はベッドにいた為
庭の花を余り見る事がなかったと
庭を歩く自分の後ろで
叔母が話していた
なんとなく
生ける花の種類は
少しでも多い方が良い気がした
花を生けた
その途中
普段会うことのない親戚の叔父さんが
側に座ったので
手を止めて少し話をしたり
祖母の遺品が並んだ机の上を
父や叔母と一緒に
端から順に眺めてみたりした
布団に横になっている祖母の顔は
皺が伸びて
若返って見えた
後日父から
あの花
親戚の間で好評だったよと聞き
それがきっかけで
あの日の事をまた思い出していた
あの時
取ってつけた感情は
作為のようなものも含め
思い出す限り無く
ただその時に身を任せて
身体の動くままに
庭を歩き
花を生けていた
空気が冷たく澄んでいた
視線を落とすと
大小の丸いツワブキが
あちこちから顔を出している
そういえば
以前来た時に辺りをうろついていた野良猫は
どこへ行ったのか
昨晩からの雨で
山紫陽花や紫蘭の葉に溜まっていた水滴が
服の裾を濡らした
庭を奥まで進むと勝手口が見えて
隣の家堺の塀の前に
洋蘭の鉢が律儀にびっしりと
同じ高さで重ねられて
並べて置かれていた
祖母は花や植物が好きだった
思い出す祖母の庭に
祖母の影は確実に残っている
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