GOWお仕事図鑑 加工部門編
今では養殖から販売まで一貫して手がけるグローバル・オーシャン・ワークス。その歴史は「加工部門」から始まりました。水揚げした魚を2時間ほどで出荷。鮮度を保つためには同業他社があっと驚くような技法も! GOWの“原点”とも言える加工部門のこだわりを現場リーダーの下假直人(したかり・なおと)さんに語ってもらいました。
加工部門も品質最優先
――まずは自己紹介をお願いします。
鹿児島県鹿屋市の出身です。電気関係の仕事をしていましたが、12年前にGOWに入社しました。ただ魚が好きだという、それだけの軽い気持ちで入ったんです(笑)。
――12年前と言えば創業間もない頃ですね。当時と比べれば工場の規模や生産能力はかなり大きくなったことと思います。
そうですね。私が入社した時は20人程度のスタッフで1日につき1500~2000尾のぶりを加工していました。現在は北米向けのグローバルと国内向けのアクアブルーを合わせると約60人が働いています。加工数は1日4000尾程です。
入社当初と比べて一番変わったのは個々人のスキルだと思います。一人一人が仕事に慣れていくことで全体の作業スピードが大幅に向上しました。もちろんレイアウト変更や作業手順の見直しにも日々取り組んでいます。
作業台や機械の配置を変えて、人の動きの無駄を極力なくしていきました。大事なのは現場のみんなで意見を言い合うことです。その日の作業後、「ここがよくなかったよね」とか「どうすればいいかね?」とか。日々の話し合いを基に少しずつ改善します。工場が現在のレイアウトになるまでには少なくとも7年かかっています。クオリティーを下げないのは大前提ですが、その上で無駄な作業をいかに省くかが重要です。
――加工部門でもやっぱり「品質最優先」なのですね。
たとえ作業効率が上がっても、品質が落ちてしまえば、それは駄目です。品質を第一に考えて、その上で作業員の方たちの労働を少しでも改善できればいいなと思っています。
同業他社が驚く「水をかけない」加工
――加工部門はどんなかたちで「品質向上」に貢献しているのでしょうか?
加工の段階で粗末な扱いをしてしまえば、魚の品質はどんどん下がってしまいます。うちの強みは何よりもスピードです。工場の目の前に海があり、魚を水揚げしてから2時間ほどで最終形態まで持っていきます。他社は水揚げから加工までの時間に開きができてしまうこともありますが、うちは必ず最短でいけるところが最大の強みですね。
もう一つは温度管理の徹底です。魚は常に10度以下の状態で最終段階まで加工します。なおかつ、三枚おろしにした段階から水を一切使わないことで、品質の劣化を最小限に抑えています。臭みもなく、水分も少なく、美味しく仕上げることができていると思います。
うちの魚は生で加工した場合の賞味期限がD+7(製造日+7日)です。他社とくらべてかなり長く品質を維持できています。色変わりも遅いですし、魚臭さもありません。
――賞味期限の長さ、色変わりの遅さ、身の食感の持続性。その三つは先ほどの温度管理や、魚にかける水の量を減らすことで生み出せているんですね。
手作業で加工しているのがポイントです。他社は機械を使って加工することも多いでしょう。機械の場合、加工する間ずっと水をかけ続けることになります。また、魚の形や大きさは一尾一尾ちがうものですが、機械は個体に合わせて調節することができないので、結果的に身が割れたり、品質劣化に繋がります。
――他の加工会社さんが工場を見学した時、なるべく水を使わないという点に仰天していました(笑)。
確かに見学に来られて驚かれる方は多いですね。水をかけると旨味が逃げますし、水についている時間が長ければどうしても菌の数が増えてしまいます。だからうちの加工場では、6尾ほど三枚おろしにしたら、一回必ずまな板の上の水分を切ります。また、おろした後の魚は衛生拭でふき、表面についた水分を徹底的に落としてから真空包装します。
極力触わらないことももちろん大事です。作業工程の無駄をはぶき、人間が触わる回数を最小限に抑えています。そのような作業手順を全員が徹底することで、毎日同じクオリティーの高い商品を製造しています。
たとえばぶりのお腹を割く時に刃を深く入れてしまうと胆汁が出てしまいます。そうすると水を多くかける必要が生じるので、なるべく水をかけなくても済むように、さばき方、作業手順を工夫しています。
グループ全体を一つのチームに
――品質向上の努力が報われたと感じるのはどんな時ですか?
営業の方がお客様の声を伝えてくれることがあります。あれが一番励みになりますね。つい先日も、スーパーで試食販売をしてきた営業の方がLINEでお客さんの声を送ってくれました。「うちの子はぶりが嫌いなんだけど、おたくのぶりだけは食べるの」と。このメッセージをいただいた時はとてもうれしかったですね。やってきたことは間違ってなかったと感じました。
生産量も大事ですけど、お客様に満足していただける製品を作るのがやっぱり一番大事だと思っています。そのために、品質はもっと上を目指せるんじゃないかとも思います。
――まだ完璧ではないんですか?
そうです。変色をもっと遅らせる方法もあると思います。毎日さばいた後に身の弾力を確かめていますが、もっと張りのある身質にしたいです。答えは出ていないですけど、もっと上を目指せると思っています。
うちの生産現場では出荷の2か月前からオリジナルの餌を与えて、いい状態に仕上がるようにしていますよね。私たち加工の側からも意見を出して、どんな餌がいいのか、与え方なども含めて改善すべき点を見つけていきたいです。
――品質向上のためにGOW全体が一つのチームになるイメージですね。
そうなりたいと思っています。
風通しのいい職場を作りたい
――他社の話を聞いていると、加工部門は効率を重視している印象があります。生産部門と連携して品質を向上させていこうというモチベーションを持っているのがすごいなと思いました。
全体のモチベーション維持が大事ですよね。高品質で安心安全な製品作りをモットーにしていますので、1人でも手を抜く人がいたら困ります。おかげさまで今、工場内の雰囲気はすごくいいと思っています。
工場では今、海外からの特定技能実習生の方たちがすごく活躍しています。ベトナム、インドネシア、ミャンマー、フィリピンの4カ国から約30人、20代から30代前半の方が多く、男性と女性は同じくらいの割合です。
――下假さんはどんな役割を?
北米向けのグローバルと国内向けのアクアブルーという2つの工場があります。工場の中は汚染区、準衛生区、衛生区という3つの区画にゾーニングされていて、それぞれに責任者がいるのですが、私はその両方の工場について、全体的な管理監督を行っています。
できるだけ風通しのいい職場にすることを心がけています。スタッフたちが意見や不満を言いやすい環境を作りたいです。私のほうからは常に、「おれたちで品質を上げよう。もっと上を目指していこうぜ」というメッセージを伝えています。そうすると、「ここはこうしたほうがいいんじゃないか」と意見を出してくれる人がいます。嬉しいですね。あいつも一緒になって考えてくれているんだなと。
――下假さんのような現場リーダーがいると、働く人たちも成長しそうです。魚をさばく仕事はセンスも必要だと聞いたことがありますが、いかがですか?
そうですね。みんなが全部の作業をできるように練習してもらっていますが、正直言って三枚おろしなどの作業は個人のセンスが影響するところも大きいです。そういう点で言えば、今は北方蓮さんがエースですね。1尾おろすのに20秒かからないですから(笑)。
――それはすごい。最後に、下假さんが考えるGOWグループ全体の課題を教えてください。
全体の課題はまだまだ多々あると思いますが、まず私自身今まで以上にお客様を第一に考え、お客様の要望に柔軟に対応できるだけの引き出しを増やしていきたいです。
――気がつけば、入社してからもう10年以上ですね(笑)。
自分自身、こんなに続くと思いませんでした(笑)。GOWの人が好きだ、というのが一番大きいかもしれないです。みんな仲いいんですよ。嫌いな人はいませんね。私自身きつい時期もありましたが、仲間が支えてくれました。
――この人の、こんな言葉に支えられた、というのはありますか?
ありますけど、恥ずかしくて言えないですね(笑)。