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斜里橋まで散歩
海も森も好きだけれど、どちらも自宅の目の前にあるというわけではない。
どちらかというと海の方が近くて、たとえば仕事の前後でちょっと回り道をして散歩しながら出勤(帰宅)しようと思ったときに歩いて行こうと思えば行ける距離だけど、散歩というには少し億劫な距離かなあ、と思ったりする。でもなんだか少し寄り道したい。そんなわがままな気分のときによく向かうのが、斜里橋である。
何の変哲もない、ただの橋。下には斜里川が流れている。北側は河口でオホーツク海が見える。南側は電車が走る橋があって、そのずっと向こうには藻琴山や斜里岳が見える。水面はいつもとても穏やかで、鳥の姿をよく見る。
この日は流氷の先発隊が来たばかりの頃で、毎日海のことばかり考えていたのだけど、何となく少し寄り道して帰りたい気分だなあと思って、斜里橋まで向かった。
感嘆のため息が出た。
何度も見ている景色のはずが、なんだか少し違って見える。寒さのせいか、流氷が近付いて波がさらに穏やかになったせいか。水面がこれまで以上に穏やかで、とにかく静かで、ときおり鳥の鳴き声が響き渡る。ぴんと張りつめたような一瞬一瞬が、とても心地よい。
これから流氷が接岸して冬はまだまだ深まるはずなのに、陽が着々と長くなっていることに気付き、体がほぐれてほっとするような、でも、まだいかないで、と寂しいような。何となく、の寄り道で、こんな複雑な気持ちになるとは。この町は、わたしをどこまで揺さぶってくるのだろう。なんて考えてしまった。
次はここで、どんな感情に出会うだろう。
2021/1/23 16:51
流氷がやってきた海に注目しがちな1月下旬の夕暮れどきの斜里川。