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知床の夏の隙間を探す

春先に斜里町の新しいキャッチコピーを考えてくださいと言われて、「ふたつの町がある町」と回答した。

斜里町には「斜里」と「ウトロ」という、まるっきり異なる特徴をもったふたつの町があるように思えてならない。ふたつの町の距離は約40km。斜里から網走、斜里から川湯温泉、斜里から女満別空港まで行くのと変わらない。

本当は途中に朱円、峰浜、日の出などの魅力的なエリアがあって、ふたつと言い切るのにはちょっと抵抗もある。でもそれを言ったら斜里側にも来運とか富士とか以久科とか越川とか…と挙げるときりがないのでいったんここは保留。

「わたしの好きな斜里」と言っているけど、わたしの中でこれは、いわゆる「斜里」のことではなく「斜里町」全体のことを指している。

「斜里」が好きなんでしょう、と言われるけれど、そうじゃない。

確かに、正直に言うとウトロの観光客で溢れかえった光景は好きじゃない。
でも、日々訪れる中で、お気に入りの場所や好きな景色を探したり、ぼんやり海を眺めたり川沿いを歩いてみたり、わたしなりにウトロも楽しんでいる。

住みたいのは、生活に不便のない斜里だ。
"程よく快適に生活できる斜里に住みながら、ときおり町内観光気分でウトロへ行く"というのがいいのだ。斜里町というひとつの町に暮らしながら、ふたつの町を楽しめる。この二面性がこの町の面白さのひとつだと思っている。

屋外で楽しむものが多い「知床」という観光地の宿命なのか、どうしても曇りや雨の日は山が雲に隠れて見えなかったり、観光船が出航できなかったり、森の散策時の足元が悪かったり…と残念がられてしまうことが多いと聞く。

でもそこでふと考える。
天気が「良い」「悪い」なんて、誰が決めたのか?

暑さがとにかく苦手なわたしにとって、特に夏の日差しが弱まる日や霧の深い日は、ほっと一息つける「良い天気の日」だ。

そう思えるのは、わたしがこの地に暮らし、晴れの日の様子もたくさん見ることができているから…なのかもしれないけれど、こんな天気の日だからこそ見えるもの、気付けること、感じるものがたくさんあるはずで、それらを見逃してしまうのはとてももったいないように思う。

わたしは山に登ろうとはあまり思わないし、海を泳ぎたいとも、深い森の中を歩きたいとも、野生動物に出会いたいとも思わない(植物は好きだからいろいろ知れたらいいなとは思う)けれど、
これからもこうやって人の往来の隙間に滑り込んで、わたしはわたしの好きな知床、わたしの好きな斜里を集めていきたい。


2021/7/20  15:38

太陽が隠れてほっとする霧の深い日、ウトロのプユニ岬にて

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