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日々を綴る(8)

一昨日、昨日に続いて4年前の今日のことを振り返ってみようと思います。

2019年1月9日。
この日も斜里で過ごしました。前日は朝早くから行動したくさん歩いて疲れたのか、この日はのんびりとした朝を過ごしたような記憶があります。シャンボールへパンを買いに行って、ホテルの部屋で食べました。…というか今更ですがこのとき斜里で過ごしたのって2泊3日じゃなく3泊4日だったみたいです。最終日は移動だけなのですが。本当に、覚えていないことが多いです。今ほど写真を撮って記録するという習慣が身についておらず、手元に残っている写真はあまり多くありません。「写真があればそのときのことを思い出せる」という言葉を好きな写真家さんが言っていたのですが、本当にそのとおりだなあって今になって実感しています。

それで4年前のこの日ですが、この日も斜里の町の中をぐるぐる歩きました。お昼ごろに行動を開始して、知床博物館へ行きました。たぶん館内も見たはずなのですが、またまた記憶がすっぽり抜け落ちています。写真に残っているのは、博物館の裏の方で見た空とオジロワシ(たぶん)が写っているものだけでした。この日も本当によく晴れていました。
そのあとは、斜里に来る前から存在を知っていた数少ない場所のひとつ・しれとこくらぶ(喫茶年輪)に向かいました。なぜ知っていたかというと、こちらも石川直樹さんつながりで、写真集「知床半島」に載っていたからです。この写真集も、ずっと前から持っていたというわけではなく、前月に訪れた根室の本屋で買ったんじゃなかったっけなあ、確か。
それでしれとこくらぶのことは知っていて、足を運んだのでした。そしてここでも大きな出会いがありました。パスタを注文して本棚を眺めているときに、ふと目に留まった1冊の小さな冊子。「シリエトクノート」というタイトルのそれを手に取り、ぱらぱらと眺めたときに、とても感動したのです。

もうバックナンバーはなかったのですが、夫が古書店のネットショップで見つけて注文してくれており、旅から戻ったらちょうど届くというサプライズが。


わたしはその当時狩猟というものに関心があり、そういった本をいろいろ読んでいたことも大きかったかもしれませんが、冊子そのものの装丁の美しさ、この地に暮らす人が作っていること、地元住民の顔が見える内容であること、丁寧に文章が綴られていること。とてもわくわくしながらページをめくったような記憶があります。
それからまた少し歩いて図書館に寄ったり、斜里中学校の校庭のスケートリンクを眺めたりしました。スケートリンクそのものが珍しかったわけではないですが、わたしの出身は旭川なので、校庭にあったものといえば雪山。そうか、こちらのエリアはスキーよりスケートなのか、とまたしても地域性を感じたのでした。

さて、ここで、当時の日記を引っ張り出してきたので、少し書き写してみようと思います。

1月9日(水)
朝風呂に行って、ホテル前のパン屋でパンを買って、部屋でゆっくり過ごす朝。11時半くらいに外へ出て、知床博物館へ行き、お昼は宿・しれとこくらぶの1階にある喫茶年輪でパスタ。雰囲気がとてもよい。地元の方々も普通に来ているお店、という感じ。一度の利用だとどうしてもただのツーリストになってしまうから、sprout(倶知安町で半年間生活していたときによく利用したカフェ)に何度も行っていたように、時間をかけて何度も通って、もっと町のことを知れたらいいなあと感じた。2日前にも町を歩いたけれど、1本隣、1本奥の道を歩くだけで違った景色があって、わくわくする。きれいな並木道、中学校の校庭の、ぴかぴかのスケートリンク。夕陽に染まった知床連山が見える図書館。好きだなあ、この雰囲気。冬の道東、さらに好きになっている。離れるのが寂しい、悲しい。もっと過ごしたいなあ。

そんなわけで、わたしの斜里町に対する第一印象はこの3日間で体感した物事で形成されました。もちろんこの瞬間に「住みたい」と確信したわけではなく、このあとの日々の中で斜里にまつわる情報を得ていくたびにその存在が気になって仕方なくなり、6月、9月、翌年の1月…と何度か斜里だけを目的に訪れたりしました。こんなにどこかひとつの場所に執着したのはたぶん初めてです。執着心に従って行動してみる、という体験をしてみたかったのかもしれません。

現在もやっぱりここの町並みや風景、町のサイズ感、歩いて楽しめるところが好きです。流氷との距離の近さや、周りの町との距離感も悪くないと思っています。でも正直なところ、一生住むのかと聞かれると、それはわからないなあとも思います。わたしはこの町に恋をした、と言っています。我ながら的を得ている表現だなと自画自賛したくなるほどです。それで、今は恋が実ってお付き合いを始めて、2年と少しが経ちました。この先も長いお付き合いが続くのか、結婚するのか、はたまた、あっさりとそのお付き合いが終わってしまうのか、結婚はするけれどうまく続かないのか。
それはもう、想像も、予想もできない未知の世界です。

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