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世界中の妊婦さんの安全な出産のために メロディ・インターナショナル株式会社 代表取締役社長 尾形優子氏インタビュー<前編>

「世界中のお母さんに、安心・安全な出産を!」を理念に掲げ、妊婦の遠隔診療事業を提供するメロディ・インターナショナル株式会社(本社:香川県高松市)。東洋経済の2021年版「すごいベンチャー100」(※1)にも選ばれた、今大注目の企業です。今回は代表取締役社長・尾形優子氏にお話を伺いました。
前編では、当社が提供する医療機器「iCTG」や妊婦さんと赤ちゃんの健康管理プラットフォーム「Melody i」、そしてコロナ禍での事業拡大についてお話いただきました。

遠隔での妊婦さんの診療を可能に

――御社が提供するiCTGおよびMelody iについて教えてください。

iCTGは妊婦さんのお腹の中にいる赤ちゃんの心拍を測る装置です。手のひらサイズの2つの装置は、重さは1個150gくらいなので、ケータイよりも軽いです。これを妊婦さんのお腹に当ててもらうと、妊婦さんのお腹の中にいる赤ちゃんの心拍を測ることができます。測ったデータはグラフに出てきて、そのグラフをお医者さんが見て診断をします。この二つの装置は医療機器として承認を受けています。
Melody iは妊婦さんとお医者さんを繋ぐ、例えば遠隔での診断ができるコミュニケーションプラットフォームです。

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(メロディ・インターナショナルHPより引用)

――拍動が分かることで、何に対してどう対処できるのでしょうか?

妊娠中期には切迫早産という、本当は生まれるときじゃないけれどもお腹が張ってきて、赤ちゃんが外に出てしまうことがあるんです。最近は高齢出産とか、リスクのある出産が増えて切迫早産になる方が増えています。そういったときに、ブルーの機器がお母さんのお腹の張りを測っていて、陣痛の大きさも測ることができるので、切迫早産になっているかどうかが分かります。その後、お腹の赤ちゃんが大きくなって、もうじき生まれますとなったときに、赤ちゃんが酸素不足になっていないか、赤ちゃんが元気に動いているのかも測れる装置になっています。
これによって生まれる時期も分かるし、元気に生まれるか、酸素不足などの異常があったら早めに病院に来てもらって帝王切開しなくちゃいけないか、などが分かるようになっています。


――妊婦さんも安心できるし、お医者さんもすぐに対応できるようになるのですね。

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▲尾形社長が手に持っているのがiCTG。医療機器であるこの装置を使って、赤ちゃんの拍動や子宮の収縮を測定することができる。


データに基づいた遠隔医療を国内外に届ける

――御社のサービスは、JICA様の「草の根技術協力事業(※2)」によるタイでの事業展開をはじめ、多くの新興国で利用されています。国内外の多くの地域で受け入れられている御社のサービスの強みは何でしょうか?

今までこの医療機器は病院にあるものと考えられていました。弊社のiCTGは、病院以外でも使える、どこにでも持ち運べるという便利さがあります。東南アジアなどの医療過疎地、山岳部とか島々とか、そういったところには産婦人科医さんがあまりいません。しかしこの装置はお医者さんが測らなくても、助産師さんや看護師さんに測ってもらったり、妊婦さんも自分で測ったりできるんですね。測るところと診断するところが離れていても使えるという強みがあります。


――装置の操作は誰でも簡単にできるのですか?

そうですね。この装置自体はボタンを押すだけでスイッチが入ります。その後はタブレットやスマホから操作できるようになっています。


――インターネットさえあれば、どこでも・誰でも使うことができるのですね。
海外進出は創業当時から視野に入れていたのでしょうか?

そうです。そもそも妊婦さんのために遠隔医療をしたいっていうのが創業の大きなミッションでした。そのミッションを叶えるために、世界中の困っている妊婦の方々にサービスを提供したいと創業当時から考えていました。

――2015年の創業から現在まで、御社はどのような成長を遂げてきたのでしょうか?困難だったこと、そしてそれをどのように乗り越えてきたのかを教えてください。

一番困難だったのは、日本では「もうすぐ遠隔医療ができるんじゃないか?」という風潮はあったんですけれども、実際に遠隔医療を行おうということになってきたのはつい最近、ということですね。なかなか世の中が変わっていくのに時間がかかったなぁと思います。


――それは日本の制度が原因だったのでしょうか?

それもそうだし、まだ遠隔医療はどこでもやったことがないから、やるとなるとリスクを感じる先生が多いと思うんですね。けれども、対面で診療できなくなったときのリスクとの差を考えて、遠隔医療がいい、って気が付いた方から遠隔医療をやっていくという状況なのかな、と思います。


――遠隔医療のリスクとはどんなことですか?

「データを見ながら、正確に遠隔医療ができるかどうか」だと思います。データを見ながら遠隔医療する、というのは長い間できなかったことだと思うんですね。でも私たちのサービスは、データを見ながら遠隔医療ができるようになっているので、かなり正確な診断ができると思います。遠隔医療でも本当に正確なデータが出るのか?という点も見極められた上で使われるんだな、と今は感じています。
現在では論文を書いてくださる先生や、データが正確に出るというエビデンスを出してくださる先生方もたくさんいらっしゃって、だんだん認知されていっている、という感じです。

――遠隔医療の普及にはコロナも追い風になったのでしょうか?

そうですね。本来ならば、こういった感染症や環境の変化に普段から備えるのは大事なことだと思うんですけど、なかなか日常の中で備えるって難しいですよね。予測して備えるっていうのは費用もかかります。だから今回は実際にその状況になって、皆さん考えてくださるようになったと思うのですが、「遠隔でやればお医者さんのためにも妊婦さんのためにもなるんだ」って、使ってみて気が付くというのは大きいことだと思います。

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現地へ足を運ぶポリシーとコロナ禍での葛藤

――御社のコロナによる影響について教えてください。

最初はコロナの感染が広がって海外にも行けなくなり、私たちは課題がある場所があったらすぐ現地に行くというのがポリシーだったので、どうしたらいいかな?とすごく悩みました。
そのうち北海道で一緒に事業をしていた先生が大学で装置を使ってみたいとおっしゃって、まずは装置を数台お貸ししたら、妊婦さんが病院に来なくても全て宅配便で回るような運用をしてくださったんですね。
それがすごく良くて、私たちも先生のアドバイスやご要望を聞きつつ一緒になって取り組みました。北海道でたくさんの方々がコロナに感染されたとき、産婦人科の医療をこの事業で助けることができると言われて、もうすごく嬉しかったですね。
海外のほうも、コロナが始まったのがちょうどブータン出張から帰ってきたばかりのときだったんですね。私たちが預けてきた機器をブータンの王妃様に使っていただくという取り組みがあって、コロナだから遠隔で対応させてもらったのですが、一生懸命使ってくださって、王室として採用という所まで持っていってくださいました。


――実際に課題のある場所に足を運んで、課題のリアルを知ることをポリシーとしているのはなぜですか?

例えばある病院や地域でこんな良い事例がありました、というのは皆さんに伝えたいのですが、それを伝えるだけですべての地域の課題解決にそのまま活かせるかは分からないんですね。似た課題はあるけれど、もう一工夫するともっと良くなるとか、やっぱり地域ごとにちょっとした違いがあって。特に海外だと医療のレベルの違いによって課題の質が違ったりするんだなと思っています。そうすると現地の方に喜んでもらえないじゃないですか。なので、そのちょっとした違いを見つけて、そこを解決できるようにしていきたいです。


――グローバル展開だと余計に地域差が激しいので、お客さんの満足度を上げるには実際に足を運んでより現地の課題を知ることが重要なのですね。
コロナが収束したら、また海外に出てご自身で製品やその使い方を伝えていくのですか?

そうですね、また現地に行きたいです。最近タイにも拠点を作ったので、そこにも行きたいです。今はウェブでやりとりをしているのですが、やっぱりface-to-faceだとだいぶ違うだろうなと思いますし。
海外の展示会も徐々に開催されるところが出てきているので、まずはそこへの出展から始めたいなと思っています。コロナなどで自分たちがすぐに現地に行けなくても世界中に事業を広げられるように、私たちの事業に賛同してくれる海外の方々を増やしていくのが必要かなと思います。


――コロナ禍でも世界に製品を広める努力をされているんですね。
コロナを受けて、周産期医療は今後どのように変化していくと考えますか?

今回のように感染症が流行ったときは病院に行かなくて済むメリットがあると思うので、そういうときは遠隔医療を取り入れていただきたいと思います。
また、対面医療と同じように遠隔医療でも診療報酬が取れるということが大事かなと思っています。遠隔で診療したのにタダ、みたいになっちゃうとなかなか広がらないと思うんですね。やっぱりどこでも遠隔診療と普通の対面診療を比べると対面診療の方が診療報酬は高いので、そこが同じになるといいですね。むしろ遠隔の方が高くてもいいのかなと思ったりもします。
でももう皆さんが動いてくださっているので、遠隔医療はこれからどんどん進んでいくと思います。

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後編では創業の経緯や起業家としての尾形社長の想い、そして今後の展望について伺います。お楽しみに!

<注釈>
※1 すごいベンチャー100:週刊東洋経済が毎年発表する、これから成長が期待されるベンチャー企業のリスト。
※2 草の根技術協力事業:国際協力の意志のある日本の大学、民間企業等の団体が、蓄積した知見や経験に基づき提案する国際協力活動を、JICAが提案団体に業務委託し、共同で実施する事業。

インタビュー:栖峰投資ワークスアシスタント 山田

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