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世界中の妊婦さんの安全な出産のために メロディ・インターナショナル株式会社 代表取締役社長 尾形優子氏インタビュー<後編>
「世界中のお母さんに、安心・安全な出産を!」を理念に掲げ、妊婦の遠隔診療事業を提供するメロディ・インターナショナル株式会社(本社:香川県高松市 )。今回は代表取締役社長・尾形優子氏にお話を伺いました。
後編では創業の経緯や起業家としての尾形社長の想い、そして今後の展望についてお話いただきました。
前編は<こちら>
産婦人科医療の課題を知り、創業へ
――医療には様々な課題がありますが、その中でも周産期医療(※1)で事業を始めようと思った理由を教えてください。
私はメロディ・インターナショナルを創業する前、2006年頃に産婦人科の電子カルテの会社も経営しておりました。その頃日本の産婦人科医さんの数がどんどん少なくなっていたんですね。
だけど、日本の周産期医療は世界でもトップクラスで、お腹の赤ちゃんの亡くなる数はすごく少ないんです(※2)。
でも、新興国ではたくさんの妊婦さんと赤ちゃんが亡くなっていますし、私たち一人ひとりや家族にしてみれば、自分の赤ちゃんが亡くなるのはすごく悲しいことですよね。
だから、そのようなことが起きないようにしたいんです。妊婦さんになったら、願いはただ赤ちゃんが元気で生まれてくれることってなると思います。その願いを実現したいと思って、事業を始めました。
――産科カルテの事業を始める前から、産婦人科領域に対しての課題意識はあったのですか?
始める前はなかったですね。
当時、日本で電子カルテを普及させる事業があったんです。日本ではまだカルテは電子化していなくて、ネットカルテも手書きのものが多かったんですね。手書きカルテだと検査結果が他の病院に伝達されていなかったり、お薬が重複して投薬されていたり、そういった問題があったので、電子化したほうがいいね、という流れがありました。そのとき、産婦人科のデータはお母さんも赤ちゃんも刻一刻と状態が変化していて、それを見なければいけないからカルテの電子化が必要だと産婦人科の先生方から伺い、産婦人科のカルテを電子化しました。産婦人科領域については、事業をしながら勉強していきました。
起業家としての尾形社長
――尾形社長は二度の起業を経験されていますが、ご自身の中で事業を成功させるための鉄則や成功の秘訣はありますか。
それは私も手探りで、なんていうのかな、コツコツやってきたっていうか。
私たちは「そんなの絶対儲からない」と言われても、絶対に人助けになることがビジネスに結びつくはずだと思ってきました。
例えば私たちは奄美大島などの離島で活動していたのですが、島の人口は少ないので、そこにニーズがあっても「そのニーズがあるのは僻地だけだからお金にならないんじゃないか?」と言われてなかなか認められなかったんです。でもそうではなくて、そのニーズを満たすものはきっと他の地域でも使われるはずだと思っていました。結果的に島々だけではなくて、色々なところに装置を必要としている方々がいて、サービスが受け入れられて今の事業があるんですね。だから、ビジネスになると信じていないと難しいのかなって思います。
――現在御社は、周産期遠隔医療においてトップランナーとしての地位を築いており、着実に実績を積み上げています。創業から現在までで「この事業はうまくいく!」とピンときたタイミングは有るのでしょうか?
医療機器にするか、健康器具にするかって、皆さん機器を作ったときに悩まれると思うんですけど、医療機器にするってなるとすごいハードルを越えなくちゃいけないんですね。医療機器の認可が取れたときは、私たちにとって変化点だった気がしますね。
認可を取るまでは大変でしたが、お医者さんとか看護師さんとか、医療に関わる人が使ってくれて初めて妊婦さんに安心・安全を提供することができるので、認可を取ってよかったなと思いますし、医療機器の認可を取っていると安心して使っていただけるというのがあるのでよかったなと思います。
――創業から現在までの間に、「女性起業家であること」によって苦労したことはありますか?
ないことはないですね。やっぱり起業って結構体育会系というか、私は女性でもあり体育会系でもないので、そういったところは頑張りが必要だったという感じがあります。
あと、やっぱり女性だと結果を出さないと遊び半分だと見られることが多いのかな?という気がしました。私が女性だからなのかは分かりませんが、ピッチ大会のときの投資家の方や周りの起業家の方からの意地悪質問も多かったなぁと思います。あなた絶対それ分からないでしょうとか、言われましたね。
あるときは子育てしながらのときもありましたし。今は女性の起業家の方でも子育てしながら頑張っている方々もいらっしゃいますが、大変なときも多いと思います。
ただ周りの方々が助けてくださることもあるので、どっこいどっこいかもしれませんね。自然体でいるようにしています。
――御社の経営陣は、尾形社長の前職から帯同している経験豊富なメンバーが多いですが、そのメンバーはどんな想いを持った人たちでしょうか?
私の想いに賛同してくれて、起業当初から一緒に歩んでくれている方々が多いですね。
男性のメンバーで、家族で北海道に住んでいた方がいるのですが、その方のお子さんが生まれた病院って今はもうなくなっているんですね。だから、そういった経験から男性でも同じような課題意識を共有しているので、事業についてもすごく理解してくれています。
メンバーの皆さんはメロディの事業をすごく理解して、同じ方向に向かっていってくださる方が多いです。
――過去にメンバーの方々との方向性が違ってしまうことはあったのでしょうか。
方向性が大きくそれることはないですが、やっぱりビジネスをするのが初めてで、私たちも分からないことだらけです。そういったところを率いてくださる方もいらっしゃるんですけど、自分たちにも身の丈みたいのがあって、そこまでは難しいからちょっと待ってって、なることはありますね。
それでも同じ課題意識があるから同じ方向でやっていけるって思っていますので、全然困ってないですね。
メロディ・インターナショナルの今後
――遠隔医療で格差を縮める
――今後メロディ・インターナショナルの事業として取り組みたいことはありますか?
やっぱり妊婦さんに関しては総合的に取り組みたいですね。例えば妊娠してから出産、そして出産してからもまだまだ女性の体って色々変化しているんですね。なので、そういったところのトータルケアができればいいなと考えています。
そして、こうやってデータを扱うということになっていくと、自動診断なども取り入れつつ、周産期医療で得た知見を、大人の医療などにも使えるものは使っていきたいと思っています。
――メロディ・インターナショナル様の事業を通じて実現させたい理想の社会はどのような社会ですか?
妊婦さんやその家族が安心して出産を迎えて、その後もハッピーな生活を送るということが理想かなと思っています。
――現時点では日本の医療は充実してはいるものの、まだ完璧な所には達していない、という状況なのでしょうか?
日本の医療技術自体は完璧に達していると思います。ただそれを提供するってことになると、まだまだ離島とか、地域での格差があります。なので距離的な格差や生活圏による格差などを縮めていきたいです。遠隔医療ならそれらを縮められると思っています。医療は平等に受けられるべきものなので、ぜひ遠隔医療を取り入れて欲しいなと思いますし、私たちが提供しているのはデータに基づく遠隔医療なので、データを見ながら何でもできる、というところがより安心に繋がるのではないかと思っています。
<注釈>
※1 周産期医療:妊娠22週から出生後満7日未満までの期間を指す「周産期」は母体・胎児や新生児の生命に関わる事態が発生する可能性が有る。この期間は、突発的な緊急事態に備え、産科・小児科双方の医療体制が必要であり、特に「周産期医療」と呼ばれている。
※2 厚生労働省「平成30年 我が国の人口動態」によると、平成28年の日本の周産期死亡率(妊娠満22週以後の死産と早期新生児死亡を加えたもの。出産千対の率。) は3.6であり、これは諸外国と比較しても低く、世界トップクラスの水準である。
インタビュー:栖峰投資ワークスアシスタント 山田
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