8/5の暴落で2000万円をなくした話
ダイヤルQ2って覚えていますか?
0990から始まる電話番号にかけると、ハアハアエロい声が聞こえるサービスです。1990年代に流行って、当時の青少年の心を鷲掴みにしました。
料金は、10秒で30円とか、そういった従量課金制。
大学に入って、上京して、一人暮らしを始めて、僕は0990を始めました。
暫くすると、NTTから電話がかかってきました。
「ダイヤルQ2の料金が10万円を超えますが、大丈夫ですか?」
女性ではなく、年配男性の声でした。
多分彼も、止められない衝動で0990をかけ続けた夜があったのでしょう。涙が止まらない夜も、シコシコが止まらない夜も、そういった、幾つもの夜を乗り越えて、それでも僕らは生きていく。だから安心して平気だよ。なんだか、そんな優しい声でした。
「大丈夫ではないです」
即答です。
うん、大丈夫ですよ。
そうしたら、今後Q2にかけられないように手続きが出来るので、来所して下さい。と
それで僕は、NTTに行って、Q2への発信を止める手続きをしました。
欲望は、自分の意思では止められないから、簡単に再開できないように物理的にスイッチの電源を切れば良い。大学生の僕は学びました。
早くお金を増やしたい、高いパフォーマンスを出したい、5年で億りたい。株でお金を増やして、勉強会を主催して凄いと思われたい。この現状から抜け出すために、株で億って、FIREするんだ。ジャンプの裏表紙に載っていた、札束風呂に入るんだ。
証券会社には、信用取引という名のダイヤルQ2サービスがあります。
早く儲けたいんだろ、これはタイムマシーンだ、3倍の速さで進む事が出来る。
人々の欲望を喚起し、それを利用し、個人の破産リスクの対価として証券会社に超過収益をもたらすサービスです。
ネット証券黎明期の2000年頃、マネックスの松本社長が語っていました。
マネックスでは信用取引サービスはやりません。と。
個人に信用取引をさせて儲けることは、彼の理念に反していたのでしょう。
高潔で素敵な社長だなと思いました。
ダイヤルQ2を自分の力で止められなかった私にとって、信用取引は禁断のサービスでした。
株式取引を始めて、10年以上は現物取引だけでしたが、気が付くと信用取引をしていました。
男性だったらわかると思いますが、気がついたら右手が息子を握っている。そんな感じです。あれ、いつから握ってたんだろう。っていう、あれです。どれですか??
目標としていた額を達成した後は、信用取引から足を洗ったこともあります。
もうタイムマシーンは必要ない、鈍行でゆっくり行こう。とね。
でも、気がつくと維持率が30%になっているのです。
だから、信用取引を止めることを止めました。
欲望に逆らえないありのままの自分を受け入れて、口座を4つに分けました。
A口座は信用口座開設、B,C,Dは信用口座を開設しない。
8/5朝、A口座の維持率は20%で、場中には5%になっていました。
今までにも何度か似たような経験はあって、追加入金して逆に買って、結果助かる。みたいなパターンを繰り返してました。
でもなんだか、8/5の日は、もうそういうのは辞めよう。と思って、底の底で半分ほどのポジションを切りました。
1日での損失は2000万を超えていました。
「維持率が低いけれど、大丈夫ですか?」
優しい声の電話は、もうかかってこないのです。