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【勝手な詩】 沈黙の果実

透明なインクで書かれた言葉は、
誰の瞳にも映らない。
石の舌が囁く音が、
風に巻かれて雲に溶ける。

ページは本の中で迷子になり、
章と章の間に巣を作る蜘蛛。
詩行は紙の裏へ逃げ込み、
消しゴムの欠片に生きる夢を見る。

音節のないメロディーが響く中、
夜明けは詩の死骸を拾い集める。
ひび割れた時間の皮膚に
沈黙という名の扉が開く。

誰も触れない言葉たちは、
静けさの中で自らを育てる。
読まれることのない喜びは、
燃えない炎のように深く静かだ。

忘却の砂漠に埋められた声が、
形のない風景を描いていく。
詩はどこへ行くのか?
読み手のいない宇宙の果てへと漂う。

読まれないからこそ、詩は永遠だ。
言葉の裏側で、物語は新たに生まれ続ける。

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