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【勝手な詩】 どこへ
どこへでも行ける、どこへも行かなくていい
旅の切符が手のひらで溶けて、
行き先のない列車が時計の針を追い越してゆく
窓から覗く風景は、折り紙の街、逆さまの木々
あてもなく回る観覧車の夢
靴は玄関で居眠りし、行かないことに慣れた足は踊り出す
目的地のない地図に、赤い点がひとつ、またひとつ
ここでもない、そこでもない、けれどどこか
空白の旅路が蜘蛛の糸に吊るされて揺れている
遠くへ行ける、どこへも行かなくていい
歩くたびに、影が置いていかれ
踏み出すごとに、歩道が消える
言葉のない看板が通り過ぎて、手招きするでもなく
たとえ道がなくとも、草が生い茂りすぎて見えなくても
行かない自由が、行く自由を抱きしめて眠る夜
時が真珠のように転がり落ちて
その音が、眠っている空耳を揺さぶる
どこへでも行ける、どこへも行かなくていい
夜明けは夜の背中で輪郭を失くし、
朝焼けが曖昧に滲む
行きたい場所を知らなくても、
夢だけが道しるべのない迷子を導いている
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