高齢者の思いがけない骨折が人生100年を短くする

高齢者の場合、骨折が原因で健康が急速に悪化し、最終的に死亡に至るケースは珍しくありません。特に**大腿骨近位部骨折(股関節周辺の骨折)**は、高齢者の健康に大きな影響を与えます。

骨折が死に至る主な要因
1. 活動量の低下 → 筋力低下 → 廃用症候群
• 骨折後の安静により筋力が衰え、歩行や日常動作が困難になり、寝たきりになるリスクが高まります。
2. 肺炎や感染症のリスク増加
• 寝たきりや活動低下により誤嚥性肺炎や褥瘡(床ずれ)感染が起こりやすくなり、重症化することがあります。
3. 血栓(エコノミークラス症候群)
• 長期間の寝たきりで血流が悪くなり、深部静脈血栓症や肺塞栓を引き起こす可能性があります。
4. 認知機能の低下
• 骨折後の入院や生活の変化が、認知症の進行を加速させることがあります。
5. 持病の悪化
• 糖尿病や心疾患などの基礎疾患がある場合、骨折によるストレスで悪化することがあります。

実際のデータ
大腿骨近位部骨折を起こした高齢者の**1年後の死亡率は約20~30%**とされており、非常に高い割合です。また、骨折をきっかけに寝たきりになると、平均余命が短くなる傾向があります。

予防策
• 骨粗鬆症の予防・治療(カルシウム・ビタミンD・運動)
• 転倒予防(手すりの設置、滑りにくい床材の使用)
• 適度な運動で筋力維持(スクワットや散歩)

一般的に、高齢者の骨折後の早期死亡リスクが顕著に高まるのは75歳以上とされています。

年齢別の骨折後の死亡率の違い
• 65~74歳:死亡リスクは若年層よりやや高まるが、適切な治療とリハビリで回復可能なことが多い。
• 75~84歳:骨折後の1年以内の死亡率が顕著に増加し、廃用症候群や肺炎のリスクも高まる。
• 85歳以上:死亡率がさらに高まり、特に大腿骨近位部骨折(股関節周辺の骨折)の後は約30%が1年以内に死亡するというデータもある。

75歳を境にリスクが高まる理由
1. 筋力や骨密度の低下
• 加齢により骨がもろくなり、骨折後の回復が遅れる。
2. 持病の影響
• 心疾患や糖尿病などの持病を持つ人が多く、骨折が引き金となって全身状態が悪化しやすい。
3. リハビリの難しさ
• 高齢になるほどリハビリの効果が出にくく、寝たきりになりやすい。
4. 認知症の進行
• 入院や手術のストレスで認知症が悪化し、生活機能の低下につながることがある。

高齢者の骨折の主な原因は 転倒 です。骨粗鬆症が進行していると、軽い転倒でも骨折しやすく なります。

主な骨折の原因
1. 転倒(約80~90%)
• 室内での転倒(カーペットの段差、床の滑りやすさ)
• 段差でつまずく(玄関、階段、浴室など)
• 立ちくらみ(起立性低血圧や加齢によるふらつき)
• バランス能力の低下(加齢、神経系の衰え)
2. 骨粗鬆症による脆弱性骨折
• くしゃみや軽い衝撃でも骨が折れることがある(脊椎圧迫骨折など)。
3. 交通事故や転落
• 外出時の転倒、自転車事故など。
4. 骨の腫瘍や病的骨折
• 癌の骨転移などが原因で骨がもろくなり、軽い衝撃で折れることがある。

骨折しやすい部位
• 大腿骨近位部(股関節周辺) → 転倒時に最も危険、寝たきりの原因になりやすい。
• 脊椎(圧迫骨折) → 背中を丸めるだけで折れることも。
• 手首(橈骨遠位端骨折) → 手をついて転倒すると折れやすい。
• 上腕骨(肩周り) → 転倒時の衝撃で骨折しやすい。

転倒・骨折予防策
• 骨粗鬆症の治療・予防(カルシウム・ビタミンD・運動)
• 家のバリアフリー化(手すり設置、床の段差解消、滑りにくいマット)
• 筋力トレーニング(スクワット、片足立ちなど)
• バランス感覚を鍛える(ヨガ、太極拳、ウォーキング)

高齢者が骨折した場合、最も重要なのはできるだけ早く動き始めることです。長期間の安静は筋力低下、廃用症候群、肺炎、認知症の悪化につながるため、適切なリハビリが必要になります。

骨折後のリハビリの基本原則
1. 早期離床(ベッド上でも動かす)
• 手術後や固定中でも、座る・足を動かす・手を握るなどの軽い動作から始める。
• 寝たきりを防ぎ、血栓(エコノミークラス症候群)や肺炎のリスクを減らす。
2. 痛みのコントロール
• 痛みを我慢すると動かなくなり、回復が遅れるため、適切な痛み止めを使用。
3. 全身の筋力維持
• 非負傷側の手足も積極的に動かす(例:片足立ち、腕の運動)。
• 体幹や腹筋を鍛えることでバランス改善し、再転倒を防ぐ。
4. 歩行訓練(可能なら杖・歩行器を使用)
• 骨折部位に負荷をかけすぎない範囲で歩く練習をする。
• 転倒しないようにバランス感覚を鍛える。
5. 日常動作(ADL)の回復
• ベッドからの起き上がり、椅子への座り方、トイレ動作、入浴などの練習。
• できるだけ自分でできることを増やすことが重要。
6. 栄養管理(骨や筋肉の回復を促す)
• **タンパク質(肉・魚・大豆)**をしっかり摂取し、筋肉の回復をサポート。
• **カルシウム・ビタミンD(牛乳・小魚・キノコ・日光浴)**で骨の再生を促す。

骨折部位別のリハビリ例
• 大腿骨近位部骨折(股関節周辺)
• 手術後すぐに座る・足を動かす訓練開始(寝たきり予防)。
• 松葉杖や歩行器を使って早期歩行を目指す。
• 脊椎圧迫骨折
• コルセットを装着しながら体を支える訓練。
• 寝たまま腹筋や背筋を軽く動かす。
• 手首・上腕骨骨折
• 指・肩・肘を動かし、関節が固まらないようにする。
• 反対側の手で補助しながら日常動作を回復。

リハビリで避けるべきこと
• 過度な安静(筋力低下、寝たきりのリスク増大)
• 急激な負荷のかけすぎ(再骨折の危険)
• 痛みを我慢しすぎる(動かなくなる原因)

高齢者の骨折治療とリハビリに強い日本の病院をいくつか紹介します。特に整形外科、リハビリテーション科、骨粗鬆症治療に優れた病院が中心です。

骨折治療で有名な病院

1. 東京大学医学部附属病院(東京都)
• 整形外科のトップレベルの技術を持ち、大腿骨骨折や脊椎骨折の手術実績が豊富。
• 高齢者の骨粗鬆症治療にも力を入れている。

2. 聖路加国際病院(東京都)
• 高度な人工関節手術や骨折治療が可能。
• 早期リハビリを重視し、できるだけ早く歩けるようにする治療方針。

3. 慶應義塾大学病院(東京都)
• 高齢者の骨折・人工関節手術の実績が多い。
• 転倒予防や骨密度管理のプログラムも充実。

4. 大阪大学医学部附属病院(大阪府)
• 整形外科・リハビリ科ともに全国トップレベル。
• 骨粗鬆症センターがあり、骨折予防の治療にも強い。

5. 国立病院機構 名古屋医療センター(愛知県)
• 大腿骨骨折・脊椎骨折の手術件数が多い。
• 術後の回復プログラムが充実しており、早期退院を目指す。

リハビリが優れている病院

6. 国立病院機構 東京医療センター(東京都)
• 整形外科+リハビリテーションの連携が強い。
• 高齢者向けの運動機能回復プログラムが充実。

7. 兵庫医科大学病院(兵庫県)
• リハビリテーション科が強く、特に股関節・脊椎骨折後の回復が得意。
• 退院後のリハビリ計画も充実している。

8. 東京慈恵会医科大学附属病院(東京都)
• 手術後の早期リハビリを重視し、患者ごとに最適なプログラムを提供。
• 理学療法士や作業療法士の数も多く、手厚いサポートが可能。

9. 名古屋第二赤十字病院(愛知県)
• 脊椎骨折・大腿骨骨折のリハビリ専門病棟があり、充実したプログラム。
• 退院後の在宅リハビリにも対応。

まとめ
• 手術の技術が高い病院:東京大学病院、慶應義塾大学病院、大阪大学病院
• リハビリが充実している病院:東京医療センター、兵庫医科大学病院、名古屋第二赤十字病院
• 総合的にバランスが良い病院:聖路加国際病院、名古屋医療センター

どの病院も、骨折治療やリハビリの実績が豊富なので、地域や病状に合わせて選ぶと良いでしょう。

骨を強く保つための食事と運動

高齢者の骨折予防には、骨密度を維持し、筋力をつけることが重要です。

① 骨を強くする食事

1. カルシウム(骨の主成分)
• 多く含む食品:牛乳、チーズ、ヨーグルト、小魚(しらす・ししゃも)、豆腐、小松菜、チンゲンサイ
• 1日の目安量(65歳以上):800~1000mg
→ 牛乳1杯(200ml)で約220mg、木綿豆腐1/2丁で約180mg

2. ビタミンD(カルシウムの吸収を助ける)
• 多く含む食品:鮭、さんま、サバ、きくらげ、しいたけ
• 1日の目安量:10~20μg
→ 鮭1切れ(100g)で約25μg

3. ビタミンK(骨形成を促進)
• 多く含む食品:納豆、ほうれん草、ブロッコリー、海藻
• 特に納豆は最強(1パックに約200μg)

4. タンパク質(筋肉・骨の強化)
• 多く含む食品:肉、魚、大豆、卵
• 筋力低下を防ぐために1日50~70gは摂取

5. マグネシウム(カルシウムの働きをサポート)
• 多く含む食品:ナッツ類(アーモンド、カシューナッツ)、玄米、大豆

+α:日光浴(ビタミンDを体内で生成)
• 1日15~30分、屋外で散歩すると◎

② 骨を強くする運動(骨密度UP+転倒予防)

1. 負荷がかかる運動(骨密度UP)
• ウォーキング(1日30分)
• 軽い衝撃が骨を刺激し、カルシウムの定着を促進。
• スクワット(ゆっくり10回×2セット)
• 大腿骨を強化し、転倒しにくい体づくり。
• かかと落とし(10回×2セット)
• つま先立ちからストンとかかとを落とすことで骨を刺激。

2. バランス力を鍛える運動(転倒予防)
• 片足立ち(左右30秒×2セット)
• 転倒防止に効果的。
• ヨガ・太極拳
• 柔軟性+バランス力UPでケガを防ぐ。

3. 体幹・下半身を鍛える運動
• 椅子スクワット(立ち座り10回)
• 筋力が弱い人でも無理なくできる。
• ゴムチューブを使った足上げ運動
• 座った状態で足を伸ばす→筋力UP+関節の柔軟性向上。

③ まとめ
• 食事 → カルシウム・ビタミンD・ビタミンK・タンパク質をバランスよく摂取。
• 運動 → ウォーキング・スクワット・かかと落とし・片足立ちで骨と筋肉を強化。
• 日光浴 → ビタミンDを作り、カルシウム吸収を促進。

食事+運動の習慣で、骨折しにくい体をつくることが大切!

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